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私は死んだ

作者: とうにゅー

 私は一度死にました。

 交通事故にあったわけでも病気でもないです。ただ、「自分」というものを死なせてしまいました。たくさんの重いものに押しつぶされて、死んじゃいました。

 それに気付いたのは確か、中一のときだったと思います。

 言い訳になるかも知れません。

 小六年のときに受けたいじめがすべての元凶だと思います。

 私は読書をしていただけなんです。友達が他の人と話している間自分の席で読書をしていただけなんです。ただそれがいじめを引き起こす原因となったようで。

 肉体的な暴力はなかったです。しかし、言葉が私を傷つけました。

 元々の担任は当時、職員のバレー大会で怪我をして長期入院をしていたので、色んな先生が私のクラスの担任をしていました。当然、いじめに気付くことはありません。

 親にも黙っていました。妹にも被害が及ばないように細心の注意をはらいました。

どうして親に黙っていたか。

それは、親に情けない子供だと思われたくない、いじめられていると知られたくない、そんな見栄でした。

学校に休まず登校できたのは、ひとつしたの親友のおかげだと思います。私は彼女に会うためだけに、話すためだけに、登校時間のわずか三十分ほどのためだけに、学校に行っていました。

 我ながら、すごいなと今でも思います。

 私は、彼女を恩人だと思っています。

 

 いじめをうけてどのくらい経ったか、夜になると、幻聴が聞こえてくるようになりました。耳をふさいでも布団を頭まで被っても、聞こえてきて、泣いていました。妹にばれないように声を殺して泣いていました。

 私のどこがわるかったの? 私は生きてちゃいけないの? どうしていじめるの? そういう疑問から、

 許さない、許さない許さない、死んでしまえ、あいつら全員死んでしまえと怒りと憎しみに変わり、また、自虐に戻って、眠りにつくことが普通になっていました。

 

学校では、自分というものを抑え込んでいました。笑わないようにして、なにかされても気にしないふりをして、無視をしていました。強がっていました。親友に学校であった時はとても嬉しかったです。その時だけ幸せだと思えました。

 それ以外はずっと本を読んでいました。伝記が教室の本棚にたくさんあったので全部読破しようと考えて読んでいました。

 私は仮面を被って過ごしていました。だから、壊れてしまったのだと思います。

 

入院していた先生が返ってきたのは冬休み明けでした。そして恐れていたことが起こってしまいます。

 ある日の昼休みでした。

 先生は自分の机で作業をしていて、私は窓の外をずっと見つめていました。先生にバレるなと、ヒヤヒヤしながら、ビオトープで遊んでいる子供を見下ろしていました。そしたら先生が、私に話しかけてきました。


「一人でどうしたの? いじめられてるの?」


 心臓が跳ね上がって、視線が泳ぎました。なんて答えようか。「はいそうです」という声は喉まででかかっていました。でも、ぐっとこらえて私は黙っていました。

 するとちょうど掃除を告げるチャイムが鳴って、私はその場から逃げ出しました。


 翌日、私は先生を呼び出しました。

 ああ、バレたと思いました。暗い教室に太陽の光が差し込んでいて、床に窓の形を作っていました。先生と二人きり、重い空気でした。

 先生は、率直に「いじめられているの?」と聞きました。黙って頷きました。

 そこから、誰に主にいじめられているのか、何をされているかを聞かれ、全て包み隠さず答えました。泣いていました。

「親にこのことを話すけどいい?」と言われて私は、一生懸命止めました。「言わないでください」と。先生は私の願いを聞いてくれて、黙ってくれていました。

 少し心が軽くなりました。


 先生はそれから私が少しでも学校で楽しく過ごせるように、助けてくれました。しかし、完全に甘やかしてはいけないと自分でなんとかするようにさせることもありました。

 一ヶ月ほど経った時でしょうか、朝学校に行くと先生の周りに他のクラスの子がいました。先生が私を呼び、なにかとおもうと、この子たちが毎週火曜日に放送室で一緒に過ごそうと言ってくれたのです。

 その子達は放送委員で、火曜日が担当だったのです。私は、ハイと答え、それからの火曜日は楽しみなものになりました。

 いじめは結局なくなることなく、中学に上がりました。

 中学に上がり、他の学校の人と一緒になったことでいじめはほぼほぼなくなりました。が、中学に上がってから時折休むようになり、「自分」というものがわからなくなっていました。

 幼い頃から作り上げてきた「自分」というものを十二歳で無くし、また新しい自分が生まれていました。

 その事に気づいたのはかなりあとになってからでした。

 自傷も自殺未遂も、病院に通ったこともあるし、二十歳まで生きれば十分だろうと思ってました。 


 紆余曲折経て、現在の私になります。このままではいけない、変わらなければいけないと思って、行動してきましたが、今の私は昔の私より少しましになっただけで、病むことも依存しやすいことも、心が弱いことも変わりありません。

 しかし、いつか、胸を張って生きられるようになりたいです。

 素敵な人間になりたいです。

 困っている人を助けられる人になりたいです。

 笑顔の似合う女性になりたいです。

 自分というものをしっかりもった人になりたいです。

 いいえ、なります。

 

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] >いいえ、なります。 頑張ってください。 疲れたら一休みして。 でも、ただ生きてるだけでも良いってのが理想ですね。 [一言] >親に情けない子供だと思われたくない、いじめられていると…
[一言] 私も1度死んでから長い時間かけて苦しみ、鬱になり、自分というものがまだ良くわかっていません。だからすごく気持ちはわかります。 こういう文をかけるのは素敵だと思います。
2018/07/02 12:52 退会済み
管理
[良い点] はじめまして、ロータスと申します。 心をえぐるようにして書いた大切なエッセイを、公開していただき、ありがとうございます。 前を向いたあなたに、幸多からん事を願っています。 [気になる点…
2018/07/02 09:25 退会済み
管理
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