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運命は変えられない

お待たせしました、終わりが見えて参りました。

今日は短いけど、本日から連続更新の予定。

年内には完結させるぞ!

その日は、馬鹿みたいに晴れていた。庭の木々が枝を伸ばし、気の早いセミが鳴き始めていた。


二階の私室で書き物をしていた私は、いち早く異変に気付いた。

屋敷の外が鎧を身にまとった騎士たちに包囲されていた。


「レアード侯爵、あなたを逮捕します」


逮捕状を掲げた地獄への使者は正面の門から堂々と現れた。


「何を言っている? 罪状は?」


出迎えた父は信じられないというように逮捕状を眺めた。

内容が頭に入ってこないのか、琥珀色の視線が何度も何度も紙面を上下する。


「大逆罪。王太子の殺害未遂、魔鉱石取扱法違反と言ったところでしょうか」

「馬鹿な。これは冤罪だ! 私は陛下の忠実な臣下だ! だいたい何の証拠があって」


父は白々しくも事実を呑み込もうとしない。


「見苦しいですよ、お父様」


今日までかかっていた書類をようやく書き終えた私は、簡単な身支度をして玄関へ降りてきた。


「自分の罪をお認めになったらどうです?」

「お前か」


到底娘にむけるとは思えない、冷たさと憎しみの眼差しが私を射抜く。


「お前かーっ!」


感情のままに、いつもとは比べ物にならない程の紫雷が全身から弾ける。


音を立てて電撃が迫っても、私はその場から動かなかった。


受けてやろうと思った。


どうせ近い内に二人とも罰せられる。それならば散々親不孝した父の思う通りに死んでやろうと。

それくらいの情はあったのだと、自分の心を見渡して気づいた。


「護れ 氷壁!」


稲妻の前に分厚い氷の壁が立ち塞がる。


「なんなんすか、どういうことなんすか、何が起こってんすか!」


魔法で守ってくれたジェシーは、騎士に取り押さえられた父と私の顔を高速で見比べている。


「父が王太子の暗殺を目論んだの。外戚の地位を狙って殿下に王位を継がせようとして」


嫁入り道具と偽って魔鉱石を運んだ件、学校の子供たちを使ってテロをしようとしていた件を簡潔に説明する。


「そんなことが……」

「安心して。あなたは知らなかったと言えば罪には問われないはず」


ジェシーに歩み寄り、耳打ちする。


「私の部屋にみんなに充てた手紙があるわ。少ないけど金銭も用意したから、騎士団に財産を没収される前に、みんなに配ってくれる?」


使用人たちには紹介状を用意した。

彼らの再就職には元の雇い主の口利きがいる。

これから囚われる侯爵家の署名、どれだけ力があるか不明だが、家財や宝飾品を処分して僅かばかりの退職金も用意した。

お世話になったみんなに、やれるだけのことはやった。


「お嬢は?」


はっとした顔でジェシーは疑問を呈す。

私は騎士の方に足を踏み出す。


「私は知っていたの」


御同行願えますか、と告げられる声に頷く。


「私は知っていたのよ、ジェシー」


お嬢、と呼びかける声に立ち止まることなく、私は生まれ育った屋敷を後にした。

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