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アニマルコロシケーション  作者: そらからり
Take2 生存法則
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Take2―39 交渉

 比べるまでも無く、比べることがおこがましい程に、差が有り過ぎた。

 

「『鉄巻貝(スケーリーフット’ズ)(ハート)』! ありったけの壁を作れ!」


「笑止。それしきで我が槍は止められぬ。『(ライノセロス’ズ)(ハート)』……一の武装、葬槍」


 相手の槍の一突きで何重にも塗装し強化した金属の壁が破られる。

 モグラのボトムズとの闘いを経て思いついた、これまでとは作成方法が違う壁である。

 金属と金属の間に地面から巻き上げた土を挟む。

 もし再び、ボトムズの能力のように同じ物体であれば無制限に貫けるような敵が現れたとしても、金属と土という属性の違う物質で止まらせることが出来るはずであった。


 だがしかし、金属も土も、偶然に混在した岩や石すらも関係無くその槍は貫いた。

 貫いた先にルビーの体があっても勢いが止まる気配は無く、その奥に大樹があってもやはり貫き折ったであろう。


「くっ……」


 金属の壁を壊されて自身を貫かれる経験はあった。

 片腕を失う経験は何よりも痛く、鈍く、苦い思い出として脳裏をよぎった。

 咄嗟に避けることが出来たのは、だからボトムズのおかげだったのだろう。

 一つの意志を貫き通すボトムズのドリル。

 あれ以上に貫けるものは無いと知っていたからこそ、ルビーはそれと同等の貫通力を持った槍の存在を恐れ、見縊ることなく避けることが出来たのであった。


「『(ライノセロス’ズ)(ハート)』」


 壁に突き刺さった槍の矛先を腕力のみで強引に曲げ、避けた先のルビーを追跡する。

 当たれば必死。

 急所を庇うことは叶わず、それ以外の部位であっても部位欠損である時点で今より不利になることは分かり切っている。


「『鉄巻貝(スケーリーフット’ズ)(ハート)』」


 だから、地中から出現させた金属の支柱を槍の真下に当てて矛先をずらす。

 同時にこちらも槍状に尖らせた金属を敵――サイのアルミュールへとぶつけるも、


「二の武装、武鎧」


それら全てはアルミュールの鎧の前で止まってしまった。


「槍の前では等しく紙。鎧の前では等しく泥。メイメイ様に捧げしこの能力の名は『(ライノセロス’ズ)(ハート)』。お前如きでは歯が立たないことはもう分かっただろう。大人しく死に、メイメイ様の命の源となれ」


 貫けないものは無い槍と貫けるものは無い鎧。

 この二つがサイであるアルミュールの能力である。

 その性能故に重量を誇るが、サイ所以の体格が補って余るほどに、むしろ重量級の攻撃を可能とするまでとしていた。


「い、嫌だ! 僕は生きるんだ」


 数度の攻防で彼我の戦力差を知ってしまった。

 勝ち目がないと思い知らされてしまった。


 ルビーの目的は勝つことではない。

 生きることだ。

 勝つことが生きることに直結するのであれば、勝つための努力もしよう。

 だが、勝つだけが生きることではない。

 時には敗走してでも生きなければならない。


「『鉄巻貝(スケーリーフット’ズ)(ハート)』」


 逃げ回りながら金属操作にて罠をいくつも製作していく。

 足元にはトラバサミや括り罠、頭上にはピンと張られた薄い糸状の金属を設置していく。


「逃げるな弱者。その命を差し出せ」


 アルミュールはその体躯から見合わない速度を出しながらルビーを追う。


「ひ、ひいぃぃぃぃ」


 情けない声を出しながら、しかし罠製作は正確に行い、アルミュールの進路上に設置していく。


「そ、それでも食らって死んじゃえ!」


「……ッ!?」


 踏みつけたアルミュールの足に喰らい付き、絡まり、態勢が崩れた首元をワイヤーが切断しようと狙う。

 踏みとどまろうにもその両足ともに罠に喰らい付かれており、なまじ速度を出していたばかりに重量級の体重と相まってワイヤーの切断力を上げていく。


 だがそれでもアルミュールの鎧は健在である。

 関節部であるからといって防御が甘いわけではない。

 動きを妨げず、守りを重視する。

 1週目の反省を活かすかのように、鎧はより重厚なものとなっている。

 今の彼の鎧には文字通り一部の隙も無い。

 

「効かぬ」


「……それなら押し潰されちゃえ!」


 空中に体液を集めて固める。

 出来上がったのはアルミュールにも引けを取らない巨大な槌。

 重量級には重量級。

 刃物が効かぬなら、斬っても突いてもだめなら打撃だ。


「ぐ、おおおおおお」


 槌の下になりながらアルミュールは呻き声を出す。

 今までとは違う反応。

 もしや苦しんでいるのでは、と逃げ回っていたルビーは足を止める。


「……やった?」


 ルビーとて能力を連発すれば当然ながら消耗する。

 能力の大元が体液なのだ。

 元から武器を供えているアルミュールとは違う。

 応用が効く分だけ使いどころを考えなければならない。


「やってはいない。これは気合を込めた声だ」


 槌に亀裂が入る。

 見る間にそれは広がっていき、やがて槌を砕き切った。


「我が武装は鎧だけに非ず。この槍とてお前には過ぎたるものだろうが」


 時間はかかるがアルミュールの槍は全てを貫き通す。

 

「ね、ねえ! 僕と取引しようよ」


 足元の罠も足止め以上の効果は得られない。

 最大の攻撃である槌を生成したところで鎧を砕くには至らない。


「お前の守りたい人はあそこにいたお姉ちゃんでしょ? ウッホもすでにお前達の手の内だ。これ以上抗ったところで僕達に勝ち目はない。なら……お前の仲間になって一緒にあのお姉ちゃんを守った方が僕にとってもお前にとってもいいはずだよ」


 なにより、ルビーの能力は守ることに長けている。

 ボトルズのドリルも、アルミュールの槍も貫通力という能力があったから、ルビーの能力に余りにも相性が良すぎたから戦闘を有利に進められていただけだ。

 それ以外の能力であれば、ただ力が強い程度であればルビーの金属で生成した壁を砕ける者はそれこそウッホのような馬鹿力を持たない限りは存在しない。


「守る壁を増やす……」


「そう! それにただの壁じゃないよ。自在に操れる金属で作る壁だ。頑張れば難攻不落の城だって作り出してみせるよ」


 実際にやって出来ないことではないだろう。

 時間がかかるという点を除けばルビーにはやり遂げることが出来る。



――作り終えるまでにはこの闘いも終わっているだろうけどね



 そう内心で計算しながらルビーはアルミュールの見えない素顔を伺う。

 体液を金属化する能力であるため作り出せる金属とてそう多くはない。

 すでにほとんど出し尽くしている現状だ。


 互いに生き返るという目的の合致があったからこそ纏まっていたウッホ率いるチームとは違い、アルミュールの属するチームはパンダであるメイメイを絶対としたチームである。

 だからメイメイを引き合いに出せば、そこに付け入る隙はきっとあると確信していた。


「し、信用できないって言うんなら今すぐにメイメイの魅了にかかってくるよ。そうすればお前達には敵対出来ないでしょ。そしたらお前達の味方だ」


 生き残るためには敵の手に落ちても構わない。

 泥水を啜ってでも生き残る。

 そこにどれだけ恥を重ねようと、死ぬ以上の恥が無いのだから大したことではない。


「メイメイ様は殺せと言った。だが魅了にかかればそれは別……?」


「殺すなら別の動物にしようよ。僕の仲間の能力も弱点も教えてあげるよ。そうすればすぐにでも他のを殺しに行けるし、手間もかからないよ」


「すべてはメイメイ様のため……」


「メイメイ様も喜ぶよ! これで生き返る条件にまた一歩近づく。僕1匹を殺すよりも数匹を殺せるのだもの。やったね、お前はメイメイ様の役に立てるんだ」


 あくまでメイメイのため。

 そう繕うことでアルミュールはルビーを殺すのではなく利用することに目を向ける。

 あと一押しか……と次の言葉を口から出そうとした時であった。


「しかしメイメイ様はパンダ。我儘な一面もある。殺せと言うのであれば従う他あるまい。たとえそれが……メイメイ様に今後不利益となろうが」


 アルミュールが槍を振り上げる。

 

「……まずい! 『鉄巻貝(スケーリーフット’ズ)(ハート)』」


 足元に金属の液体をタイヤ状に集め、固める。

 車輪となった足は地面を蹴れば走る以上の速度を出す。


 間一髪、アルミュールの投擲した槍は先ほどまでルビーが立っていた場所に突き立つ。

 それを尻目にルビーは逃げ出したのであった。


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