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アニマルコロシケーション  作者: そらからり
Take2 生存法則
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Take2―21 合流

 木々の葉から覗く木漏れ日が顔にかかり目が覚める。

 穏やかな目覚めと言ってもいいが、しかしここがどういった場かを思い出すとよくもそんな呑気なことを考えられたものだなと嫌気がさす。


「……そうか、俺はまた勝ったのだな」


 勝てた。あるいは勝ってしまった。

 能力を使用して勝てたということは自分の知能が下がっているということだが、しかしそんなことを気にすることが出来るということは能力が解除されていることを意味する。


 『大猩々(ゴリラ’ズ)(ハート)』。それがウッホの生命線であり、弱点でもある。ウッホが生きている限り永続的にウッホの知能は下がったままだ。代わりに筋力は強化されたままだが。

 

 ウッホが知っている限りではこの能力を解除できる動物は一人しかいない。

 完全に目が覚めるのと同時にやがてはっきりと思い出す。


 自分には仲間がいたことを。

 能力が解除されているということは、仲間が近くにいるということを。


 バッと起き出し周囲を見渡す。

 そこには、


「よう、ウッホの旦那。目が覚めたんだな、良かったぜ」

「随分と長く寝てたんだな……てかよ、獲物を何で残してくれなかったんだよ。俺が強くなれねえじゃねか」

「馬鹿言ってんじゃないの。だいたい、アンタだって塵屑にしちゃったんでしょう?」


 トリニコ、ミガテ、ホミーがいた。

 トリニコによる治療中なのか、ミガテとホミーは座り込んでいる。

 よく見ればトリニコすら怪我をしている。それだけ激しい戦闘があったのだろうと推測することは容易い。


「チッ……うっせえなぁ。俺はいいんだよ。なんたって、強敵を倒したんだからな。手加減出来ないくらいの強さだったぜ。なあ、トリニコ?」

「あ、ああ……そうだな……」


 どのような敵と戦い、どのような決着の仕方があったのか、それを知らないウッホはミガテの言葉を額面通りに受け取るしかない。

 トリニコも肯定しているのだ。ならば疑う余地も無いだろう。


「ほら、私の相手していた奴なら損傷しているけど体は残っているからそれを食べなさい」


 ミガテの不満気な言葉に対しホミーが一匹の動物を引きずってくる。

 一週目でホミーを殺し、そしてこの世界で復讐を果たすこととなったイグルーの死体であった。


「視力強化の能力を得られるはずよ。偵察役は多い方がいいわよ。ミガテ、それを食べたのならあなたも戦闘時以外にも働くのよ?」


「……食べる気無くすようなこと言うなよ」


 イグルーに齧りつこうとしたミガテがホミーの言葉で止まる。

 むしろイグルーの死体を遠ざけようとする仕草までする始末だ。


「いいじゃない。器用貧乏、目指してみなさいよ。倒した分だけ死体を食べれば何だって出来る能力でしょう」


「そら、死体さえ残してくれりゃあよ、俺は強くなれるが……分かったよ! やりゃいいんだろやりゃあ」


 ガツガツとミガテはイグルーの死体を食べ始める。


「……へえ。不意打ちや騙し討ち防げるのは便利な能力だな。常時発動させてなきゃ意味は無いが、それでも有るのと無いのとじゃ段違いだ。お前よく倒せたな」


「同系統の能力なのは言ったでしょ。なら対策も出来るのよ。それに一度殺されたからねこいつには。二度も殺される程安くはないのよ私の命は」


 やがてウッホ達4人の回復が終了する。

 激しい戦闘後であろうと、満身創痍であろうと、トリニコの能力にかかれば傷跡一つ残さず回復する。


「さて……で、アイツはどうするんだよホミー。俺が今気づけたんだ。お前ならとっくに知っていたんだろ?」

「アイツ……ああ、あの子のことね。そうね、どうも怖がっているみたいなのだけれど、ミガテが何かしたんじゃないの?」

「するわけねえだろうが。初対面で逃げられているんだぜ」


 ミガテが指す動物はこの場にいない5匹目の仲間であるルビーのことだ。

 とは言え、離れ過ぎないような付かず離れずの距離でルビーは4匹の後を追いかけているのだが。

 自身は4匹が戦闘になろうとも手出しはしないくせに、もしルビー自身が襲われた際にすぐ助けを求められるように。そんな甘い考えでルビーは未だ決定的な決別をしていないつもりでいた。


「どうするよ? そろそろ味方としてこっちに連れてくるってのは」


「俺は構わないが……むしろ戦力として早いところ合流したいのだがな」


 ルビーがこの場にいない元凶ともいえるウッホがそんなことを言う。

 本人に殺した自覚も、それどころか当時の記憶が怪しいのだから仕方の無いことといえばそれまでなのだが。


「オイラが連れて来るよ。この中じゃ一番人畜無害だろ?」


「そうね。一番戦力にならないものね……くふふ」


「き、厳しいこと言うなぁ……オイラはサポートタイプとしてちゃんと活躍してるじゃんか」


 ホミーが笑いながら言っていることから本気でトリニコを役立たずとは思っていないことは伝わっているのだろう。

 トリニコもまた苦笑しながらルビーが隠れる方角へと歩いて行く。


「俺も付いて行こうか?」


 ウッホがそう最悪の提案するも、


「いいよ。別に闘いに行くってわけじゃないし」


 トリニコが後ろ手で手を振って否定したため大人しく待機することになった。





「――だったのか!?」


「うん、そうだよ」


「そりゃ、顔を合わせづらいよなぁ……でも、安心してオイラに付いて来いよ」


「嫌だって言ってるでしょ」


 少しばかり言い争いが聞こえており、


「――じゃ、決まりだな! こっち来いよ。皆そんくらい許してくれるさ」


「……しょうがないなぁ。言っておくけど、これは僕の安全のためだからね」


 どうにかこうにか話し合いはトリニコが制したようで、一人の少年を連れて帰ってきた。

 

「紹介するぜ皆。こいつはルビーってやつだ。防御が得意らしいぜ。ルビー、この愉快な仲間達はミガテ、ホミーの姉御、ウッホの旦那だ」


「よろしくな」


 ウッホが紹介されるままルビーに語り掛ける。

 それを見てルビーは一歩引く。


「あー、悪いがウッホの旦那は少しばかり離れていてくれるかい? どうにも事情があってルビーはウッホの旦那が怖いらしい」


「……? そ、そうか……」


 事情は呑み込めないが、しかしそれでルビーが離れてしまっては敵わない。

 言われるがままにルビーから距離を置く。


「る、ルビー……です。よろしくというか僕を守ってね。それが僕がチームとしてここにいる条件だから」


「……へえ? よろしくなルビー! ほらほら、もっとこっちに来いよ」


 イグルーから手に入れた能力でミガテは大雑把にだがルビーの素性や特性を見抜く。

 それによって己がかつて喰らったウロコフネタマガイという生物であることに気が付く。


 その能力もまた自身が使っていたことから初対面にして馴染み深く思えるという奇妙な感覚がミガテにはあった。

 

「な、なんだよお前……ミガテだったっけ。お前は僕を守ってくれるのか?」


「ああ、バッチリ守ってやっからよ。任せとけ。俺は強いんだ」


 この時ミガテは決めた。

 ルビーから離れないようにしようと。

 ルビーが死ねばすぐさまその死体に喰らい付き、あの体の一部を武器化するという能力を手に入れようと。


「へっへっへ……俺のツキも回ってきたってもんだぜ。……あの爺さんはここにはいないよな?」


 大柄な老人を思い出しミガテは身を震わす。


「……どうしたの?」


「い、いや……別に何でもねえよ」


 ルビーもまたミガテに付いて行こうと決めていた。

 これだけ大きく出たのだ。さぞかし強いことは伝わってくる。

 それに、先ほどの戦闘でも生き残っている。

 闘う能力があるということだ。


「そういやさ、そろそろ敵も少なくなって来たんじゃねえのか? 俺達だけですでに10匹近くは殺している。他もこのペースなら残りはそう多くは無いんじゃねえの?」


「どうだろうか……」


「はえ? ウッホはそう考えてはいないのか?」


 100匹の動物を1チーム5匹として20チーム作られている。

 それぞれが他チームと出会ったのならば少なからず戦闘は起きているはずだ。

 全滅はしなくとも多少の損害は出ている。


 残り数匹とは言わずとも、10匹も残っていないのではないかとミガテは思っていたのだが、ウッホはそれを否定した。


「どこかで動物達を纏めている存在がいる……気がする」


「あ? そりゃチームの司令塔はいるだろう。バラバラじゃチームの意味が無いもんな」


「そういうことではない。チームという枠を超えて、5匹を超えた数の動物達を操る存在がいると俺は思っている」


「は? そんなわけねえだろ」


 ミガテがそう返すが


「いいえ……それについては私もウッホに同感よ」


 ホミーがウッホに同意した。


「私が倒したイグルー……あいつは言っていたわ。あの方がどうとかって。死にかけの戯言かと思っていたけど……どうにも違うって私の勘が告げていたのよ。あいつはそういう奴じゃないってことは知っていたし」


 生前に一時会話していたことからも、ホミーはイグルーのことを多少は知っていた。

 だから、死の直前に無意味なことを呟かないだろうと。


「そうかいそうかい。見抜かれちまっているってことか。あのお方もまだまだだな。まあ、そんなところも愛おしいのだけど」


 頭上から声がした。

 5匹が見上げると、そこには鳥類らしき羽根を生やした動物が木の上に立っていた。


「キョクアジサシのワーパーだ。ワーパーが名前だからなそこんとこよろしく。……だけどまあ、二度とお前達はこの名を呼ぶことはないだろうけどな」


「そうか? そんな寂しいこと言うなよ。オイラが呼んでやるよワ――」


「『|極鯵刺《アークティックターン’ズ》の(ハート)』」


 瞬間、5匹の体が光に包まれた。


「同固体につき一日に一回だけ。しかも能力自体が対象を移動させるっていう攻撃性の無いもの」


 5匹を包んでいた光が消えた時には、そこには誰もいなかった。

 ただワーパーが残されているだけ。


「こいつらで最後だったか? ったくよぉ、これで俺の仕事も終わりってやつか。そんじゃこれ以上生きている意味もねえよなぁ。ああ、もう死んでいるんだっけか。……最後にあのお方の役に立てたんならそれでいいか」


 そう誰にともなく呟くとワーパーは自身の首を鉤爪で掻っ切って自害した。


さて戦闘も終わったことだし次の戦闘に行くか

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