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アニマルコロシケーション  作者: そらからり
Take2 生存法則
76/129

Take2―17 回転

あ、Take2―12の続きっす

「な、なんでなんで!? なんで僕の金属貝殻が削られてるの!?」


 ルビーと相対した敵チームの最後の1人、両手にドリルを生やした小男はルビーの金属貝殻を前にしても何の苦もなく掘削を始めた。

 分厚い金属はたとえ強靭なドリルであったとして表面を削るだけ、そう高を括っていたのだが、小男は土を掘るのと同じ様に掘り進めていく。



 ドリルとは螺旋円錐状の回転式装置である。

 穴を穿つことだけに追及した形状。

 大抵は地面を掘ることに用いられ、工事現場などで目撃されることも多い。


 自然界ではなく人間界で、より文明的な社会でドリルは発達してきた。

 主に文明を発達させるために。


 だが更に言えば、ドリルは殺傷性も同時に高い。

 穴を穿つ道具。

 人体に穴が開けば、当然そこから出血はし、その穴の大きさによっては致命傷となる。

 頭部に穴が開けば脳を損傷させ、胴に穴が開けば内臓は破壊され、手足であれば筋肉がぐちゃぐちゃになる。


 剣や銃よりも下手をすれば人間をいとも容易く殺しかねない性能を秘めたものこそがドリルである。


 そして、地面に穴を掘ること、ドリルを使う。

 この2つのイメージを持ち合わせているのがモグラという生き物である。

 実際にモグラがドリルを持っているわけでは無い。

 彼らにあるのは5本の爪だ。

 前肢と爪が地面を掘るのに適しているから地中で生活が出来ている。

 実際にはそこまで速くない速度で地中を移動し、時に害獣として扱われながら彼らは生きるのであった。


「な、何者なんだよ! 僕の能力を上回る能力を持っているっていうの!?」


 ルビーの叫びが聞こえたのか、小男はピタリと手を止めると、


「そういえばまだ自己紹介をしていなかったな。俺はボトルズ。どこにでもいる、あり触れまくった……モグラだ」


「モグラ……?」


 海中に棲む生き物であるからか、それとも1週目開始直後に死んだからか、ルビーはモグラと聞いてもピンと来なかった。


「さあお前の名前も聞かせろよ。俺は名乗ったぜ。あり触れていない可能性を秘めているのであれば、お前の名は何だっていうんだ」


「僕は……ルビーだ」


「ルビー……そりゃ残念だ。あり触れている」


 幾重にも作られた金属貝殻がまた一つ剥がされた。





「ったくよぉ? 俺らモグラは害獣として思われているみたいだがよ、その理由が人間どもの育てる農作物を荒らすからだとよ」


 小男――ボトムズは手を止めることなく金属貝殻に穴を空け続ける。


「俺らは肉食獣だっての。植物なんて食べられるかって。どうせネズミとかが食べたのを俺らのせいにされているんだろうけどさ」


 モグラの主な餌はミミズや昆虫の幼虫といった昆虫類。そして……貝である。


 地中のみでしか生きることの出来ないイメージではあるが、太陽の下にも出られるし、泳ぐことの出来る種も存在する。


「く……くそっ! あっち行けよ。僕なんかに構っていないでさ!」


「そうはいかないよなぁ。こんなに旨そうな匂いをプンプンさせているんだ。たとえ金属臭くたって剥ぎとれば中身は上手いはずさ。……なんせ貝なんだもんな」


 視力は退化してしまっているが、それ以上に発達した嗅覚によって餌を探す。

 ボトルズにとって森の中からルビーを探しだすことなど日常的に行っている餌探しと一緒であった。


「もっと鈍間だった俺の穴掘りも、今じゃこんなにあっという間だ。あっという間だぜ? あって言ってみろよ。その間に終わるんだからよ」


 会話の内容は少しばかりふざけながらもボトルズは手を止めない。

 とは言え、ボトルズの手は少しばかり普通では無く、生き物の持つソレでは無かった。


「いいだろう、これ。って、そんなに隙間もなく埋めちまったら見えねえか。ていうか、それ、呼吸ってどうしているんだ? 酸素とかどこから入っているんだよ」


 そんなまともな質問をルビーに振るが、当然ながらルビーからの返答は無い。

 実際は目に見えない程小さな呼吸間隙をいくつも金属鎧に空けているのだが、そこを軸として、経路として内部に入られるわけにはいかないため答えられないのだ。


 それよりも、ルビーには見えないのだがボトルズの両腕は生き物ではないモノに変質していた。


「『土竜(モール’ズ)(ハート)』。爪の代わりの新たな俺の掘削機さ」


 回転していた。

 螺旋状に捻じれていた。

 それが2つもあった。


「回転力っていうのはつまりは貫通力の強化だ。俺の能力はどんなものにでも穴を空ける貫通性能を持つドリル。いくらお前の能力が守りに長けていようと、それが物質での防御である限りは俺のドリルで貫いちまうぜ」


 自らの視界も埋めてしまった金属鎧の向こう側でルビーはドリルという言葉で何となくこのモグラらしき敵の姿がイメージ出来た。


「……そう。どいてくれる気にはならないってわけね」


「ああ。むしろお前もどかなくていいぞ。そのまま俺の前に立ちはだかって、そして貫かれちまってくれ。下手に逃げられるよりは手間が省ける」


攻撃と防御。

それぞれに特化した能力がこの2匹には備わっているというわけだ。


そして、ボトルズとルビーの対比的なところはもう1つあった。


「君の姿は見えないよ。位置は何となく分かる。この振動からね……そして、ドリルというのなら……君の手がドリルになっているというのなら打つ手くらいはある!」


 敵の全てを味方に引き受けさせようとしていた先ほどまでと打って変わって、この場にいる味方は自分一人だとようやく腹を括ったルビーは態度を改める。

 強気な態度へと変わる。


「『鉄巻貝(スケーリーフット’ズ)(ハート)』」


 自身の肉体から滲み出る液体金属の操作。

 それがルビーの能力だ。


 防御として使うのであればすぐさま自身の周囲で固めてしまうのだが、攻撃として使うのなら、あえて固めずに敵に浴びせかけることもできる。


「なんだこれは……金属くせえ……!?」


 視力が退化しているから避け損ねた。

 周囲がすでに金属だらけであり、尚且つ金属を削っているからその削られた破片や粉が自身に降りかかっていることも災いした。

 攻撃の臭いが感じ取れなかった。


「固めてしまえば関係ないもんね。結局はドリルだけの能力。それ以外が固まってしまえば動けない!」


 ルビーはすぐさま液体金属を固める。

 金属貝殻の鎧を形成するように、ボトルズに纏わせた液体金属を硬化して固化して身動きを封じる。

 そして、ルビーの液体金属とボトルズのドリルという組み合わせはルビーの想像以上の効果をもたらす。


「これは……!?」


 ボトルズのドリルの回転が止まる。

 液体金属の固化により身体が動かなくなったことに伴ったわけではない。

 ドリルはドリルで回転しなくなってきたのだ。


「そのドリルは君の武器であり弱点だ。回転音が聞こえているからドリルの貫通力っていうのが回転力に比していることは分かった。そして、回転して前へと進むなら……必ず僕の金属を掻き分けて、ドリルの全身に液体金属を浴びることになる」



 結局はドリルというものは回転によってその貫通性を高めているのだ。

 ならば回転そのものを止めてしまえばいい。

 だから、固める。

 根本から先まで。

 余すところなく。


「ドリルの回転を止める。体の動きも止める。安心していいよ、その金属は君のドリル以外で容易に壊れることは無い。……徐々に呼吸が出来ない苦しさを味わいながら誰に殺されることなく死ぬといい」


「――!? ――!?」


 声にならない悲鳴をあげて、暴れようとするもしかし動くことが叶わず命の残り時間を減らしていくボトルズ。


「……はぁ。なんで僕がこんなに面倒くさくて危険な目に合わなきゃいけないんだ。ただただ貝であった時のように安全な場所で引きこもっていたい……」


 顔を見せることなく、やる気を一瞬だけ出した後にルビーは自堕落に身を再び守るための金属貝殻の生成にとりかかろうとし――


「まだまだだぜ? そんなんじゃ俺のドリルは止まらねえ」


 ――遂に金属貝殻を突き破ってルビーの肉体に辿り着いたドリルに腕を引きちぎられた。


「!?!? な、なにが!?」


 慌てて出血箇所に液体金属を纏わせて固め、止血する。


「う、動けるはずがない……僕の金属が完全に止めたはずなのに!」


 液体金属とドリルの攻防はまだ終わらない。

 片腕を失った貝と全身を金属で固められながらもそれらを打ち破り動き出したモグラ。

 彼らの闘いは始まりを得て中盤へと差し掛かったあたりなのであった。


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