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アニマルコロシケーション  作者: そらからり
Take2 生存法則
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Take2―12 貝殻

「うひゃぁっ!? い、今揺れたよね? 怖い怖い怖い怖い……」


 ウッホ達の闘う地点に近くはなく、そしてさほど遠すぎもしない位置にてその動物は体を震わせていた。

 地に移る影は巨大。隣にそびえ立つ巨木に勝るとも劣らない影を生み出すその主もまた、見かけ上は巨大であった。

 それは金属を纏っていた。鎧。そう形容するのが果たして正解なのかどうか、それはよく近づいてみれば分かることであった。


 鎧ではなく体から滲みだした液体がそのまま金属に変化しているかのように、身にまとった鎧のような何かはその中身との境界線を無くしていた。


「み、みんな大丈夫なのかなぁ……ううん、僕は自分の心配だけしていなきゃ! だって仲間なんていくらでも代わりが利くけど、僕は僕だけなんだもの」


 そう自分に言い聞かせてその動物は更に液体を滲みださせて纏う金属を分厚くしていく。


 この動物こそがウッホ達のチームの5匹目。

 開幕の直後に逃走したと思われていた最後の1匹。

 名をルビー。生き物としての総称はウロコフネタマガイである。そう、貝であった。


 生物にして骨格の構成成分に硫化鉄を含み、鉄の鱗を持つ貝である。

 能力は体の構成成分が鉄という特徴がそのまま採用され、金属の操作という能力になった。

 しかしながらこの動物、ルビーについて特筆されるべきは生前ではなく死後。この世界における死後ではなく、現在も2週目、3週目が行われている世界でのルビーの経歴である。

 死体にしてこのルビーには紆余曲折あり多種多様な道筋を辿ってきた。



 まずは最初にルビーの死因であるが、これはウッホによる撲殺であった。

 ウッホは手始めに能力の練習としてヒツジのドリーを選んだ。そしてドリーの下へとドラミングを行いながら向かった。そして結果的にドリーに返り討ちにされた。

 どこでルビーがウッホに殺されたのか。それはドリーの下へと向かう途中である。

 ウッホはドラミングを行う最中ですでにまともな思考は出来ず、ただ弱者であるドリーを殺すということしか本能下で無意識の行動へと変換させることしか出来なかった。

 そしてそこまでへの障害は全て、ドリーの入れられていた檻と等しく捻じ曲げて、粉砕して、四散させて進んでいた。

 ルビーは別にウッホに立ち向かったわけでも立ち塞がったわけでもない。ただ、そこに居ただけであった。

 

 運が悪かった。そう、言い表すこともできる。

 だが、こう言い表すこともできる。

 性格が悪かった、と。

 性格の良し悪しではない。この場合は、ウッホが接近してきたことに対してルビーの性格は余りに相性が悪かった。


 金属を操るということをより正確に表すのであれば、体から滲み出る体液を自在に金属として固める能力が正解である。発生源は自分の体であるため、どうしても身の周囲にしか金属を固めることしか出来ないが、それでも守るという点に関してこの能力はルビーの望んだものであった。

 そもそもで貝とは貝殻で身を守る生物である。攻撃に積極的になどなりはしない。

 何時まででも身を隠し、貝殻に閉じこもっていれば良い。居場所は分かっておれどその中身には辿り着かず。堅牢で強固な金属貝殻という門番は決して誰をも通さないのだから。


 だから、傲慢にして臆病なルビーは餌となりそうな湖の傍にでん、と構えると静かにそのまま金属貝殻を展開し続けた。誰が来ようともそこから動くことをせず、どうせ破れやしないと高を括って防御の姿勢を取り続る一ヶ月を思い描いていた。


 そんな未来予想図を序盤から考えていたせいであろう。

 ウッホという怪物の進行方向がその湖にあったのは。ウッホの檻とドリーの檻。その中間地点にある湖にルビーは拠点を構えてしまったのだ。


 一撃だ。堅牢で強固な番人ごとその中身は潰された。

 ウッホにしてみればそこらに生えている木と同じく道を塞ぐ障害物に過ぎず、ただ腕を振るって払いのけただけのつもりである。意識的に行ったのか無意識的に行ったのか。蚊が近くに飛んでいたら、そんな理由と同じかもしれない。


 兎に角として、理性の消えていたウッホは知らずして一匹の動物を殺した後にドリーを殺そうと後退もせずそのまま突き進んでいた。

 殺された方はウッホを確認していたがウッホはそれを知らない。ウッホが同じチームだと認識してすぐさまチームから離れたのはルビーの死因そのものがウッホであったからに他ならないのであった。



 ルビーの死後その一として語られるべきはハイエナのミガテである。

 ゾウのアヌーラとミガテが闘った際、ミガテは体毛を鎌に変える能力を使用していた。それはルビーを喰らったことにより得た能力であり、体液として流れ出た部分が金属化したためにミガテが喰らうことの出来なかったことで不完全な能力となってしまったのであるが、それは当人にも知り得ない。

 なぜなら当人ことルビーはその時点で死んでおり、まさか自分の死体が能力発動のために使われるなど思いもよらなかったからである。ともあれ、ミガテもそれ以降に一週間を生き残ることが出来ず、同じチームとなったのは運命なのか錺の采配なのかは分からないが。


 ルビーとミガテ、2者は互いの顔を知らない。ルビーは当然ながら死んでいたためミガテの顔など見ることが出来ないし、ミガテの方もルビーの顔というか表皮全ては金属と一体化していたために死体の顔を拝むことは出来ず、中身だけを喰らっていったのだから。

 もしウッホがいなければルビーとミガテは共闘出来たかもしれない。……その後にミガテがかつて喰らったウロコフネタマガイという動物がルビーだと気づいた時にどのような行動を取るかは別として。



 そしてルビーの死体は更に他の動物に使われる。

 中身はミガテに喰われた。残るは外殻となる金属貝殻である。

 それを最も活用できる動物がいた。貝殻を能力の発動条件とするラッコの土左衛門だ。以前より持っていたホタテの貝殻を紛失してしまった彼であるが間一髪、ルビーの死体を代用することで能力を発動することが出来た。

 その後もホタテよりも丈夫であることを買われ、重宝されている。


 こちらも両者は互いに互いの顔を知らない。ルビーは言わずもがな、死んでいるわけであるし、土左衛門も死体の一部を借りているというよりもたまたま手に取った金属らしき破片がルビーの金属貝殻であっただけだ。この関係は一番他のよりも安全であり、協力関係といくならば土左衛門とドリーのものよりも相応しいペアになり得た可能性もあった。





「い、いいんだよね? 僕に出来る事なんかない。僕には誰にも倒すことは出来ない。守って退けることが僕に出来る一番のことなんだもの」


 ウッホによる一撃はルビーから能力の信頼と自信を失わさせていた。

 堅牢で強固なはずの金属貝殻は容易く破れらる。ならばどうすればいいか。拳の届かないくらいに金属貝殻を分厚くすればいい。

 それがルビーの出した答えであった。

 つまりは一週目と同じく籠城である。

 1つだけ、変化した点といえばその籠城する金属貝殻が地面とは固定させていないということである。

 つまりは移動要塞。ただただ堅固な鎧を着てウッホ達に付いて行くことにした。

 完全に1人ではもしものことがあるかもしれない。何時でもウッホ達に助けを呼べるように付かず離れずの距離を保たなければ。

 自分はウッホ達を助けることなど考えないくせにルビーは何時でも助勢を乞う準備を整えていた。


「い、いやに揺れているなぁ……全く、敵がいるなら早く倒して欲しいものだよ」


 自分のことしか考えない。

 だからだろう。ルビーの前にも敵が現れたのは。


 ルビーの感じる揺れ。

 それは仲間達が闘うことによる振動ではない。

 振動源はゆっくりとだが、ルビーへと近づいていった。


「な、なんか……どんどん揺れ大きくなってきてない……? まさか……僕目掛けて何かが近づいているっていうのかい!?」

 

 仲間達が必死に敵との死闘を繰り広げる中で、相手チームにもまだ見ぬ一匹は存在していた。

 それはホミーの目を盗みルビーの眼前に地中から登場した。


「いよう、臆病者。そんな穴倉に隠れていられるのも今のうちだぜ。何せ穴を掘るのは俺の専売特許だからよ」


 両手に鋭く長い爪を生やした小さな男がルビーの金属貝殻に手をかけたのであった。


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