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アニマルコロシケーション  作者: そらからり
2章 絶望の2週目
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56話 2つの闘い――決着の時

 リオナが今まさに死闘を繰り広げた相手であるセプテムに止めを刺そうとした瞬間、何か人間大の大きさの物体が投げられセプテムを押し潰し殺した。


「……ないだい? アタシに喧嘩売ってんのかこのトラ」


 投げられた物体はともかくとして投げた相手は分かっていた。方向や匂いからではなく、単にその相手がこちらへと近づいていたから。


「いや悪いなリオナ。そいつが暴れるもんだから手が滑ってまってよ」


 リオナを邪魔した者、それは朱抹であった。そして投げられたのは……セプテムに激突して死んでいるのは朱抹と闘っていた宝斎であった。


「どう落とし前付けてくれんだ。せっかくアタシが殺そうと思っていたのによ」


 すでにセプテムの息は無く、宝斎も同じく死に絶えている。

 微妙に不完全燃焼を起こしたリオナは苛立ち混じりに朱抹に歩み寄る。


「アンタが命で償うってんなら別だけど?」


「いやいや、今は止めとこうぜ。なんせ互いに闘った後だ。疲れも傷もある。4週目にこそ俺達の闘いは相応しいだろ? 万全の状態で闘ってそれで決着だ」


 それでもなおリオナは朱抹を睨む。

 リオナの眼光を受けて朱抹は後ずさる。


「よし、なら大サービスだ。こいつら2匹ともお前にやるよ。俺も疲れちゃあいるが、別の獲物を見つけて喰らうことにするわ」


「ほ、本当かい!? ……そいつは悪いねぇ」


 2匹とも食べていい。それを聞いてリオナは嬉しそうに舌なめずりをする。

 闘いの後であり、腹が減っていた。それで苛ついていたのだろう。


「俺はしばらく別行動を取るわ。今日が終わるくらいまでには戻ってくるからそしたら合流しようぜ」


「ああ。どの道アタシにも、アンタにも共同戦線なんて向いていないからね。その方が案外上手くいく」


 どうせ別れたところで死ぬことはない。

 分かり切っているからこそ2匹は別れた。





 そして時間は経過する。何があろうとも、時間だけは否応なしに過ぎ去っていく。

 場所は錺と黒服達の資料作成部屋。そこで彼らは一週間分の闘いと使われた能力について纏め上げていた。


「錺さん、こっちのほう終わりました」


「分かりました。引き続き別の資料もお願いします」


「錺さん、ヒツジについての能力を纏め終わりました。次は性格について考察していきたいと思います」


「……まあいいですが、出来れば他の動物もお願いしたいものですね。深く掘り下げるその能力を出来ればヒツジ以外にも生かしてほしいのですが……」


「錺さん、こちらの能力なのですが……」


「ああ、でしたら使い道を用意しておきましょう。……ふう」


 黒服達も千差万別。仕事を任せるといっても内容によってはやる気も出来上がりも違う。出来ればその力を十全に発揮できるように割り振っていきたいところである。


 コーヒーを飲む一息つくと目の前のデスクトップに向き直る。


「さて、どうしましょうか……」


 思わぬ収穫物を得た。

 それは1つの闘いが終わったことを報告されたことによって得た情報であり能力であったが、まさか自分がそれを自由にとはいかずともそれなりに使えるとは思ってもみなかった。


「活かさない手はないですねぇ」


 考える。どうすれば今後に用途立てられるかを。

 考える。どうすれば目新しいものになるかを。


 1週目も2週目も3週目も4週目も、何をするかは、何を目的として闘わせるかは考えてあった。

 1週目はまずふるい落としを。闘いに慣れさせ恐怖を薄らせ弱い者を減らしていった。

 2週目は能力だけでない何かを。チームという能力だけの闘いだけでは見られない共闘を見るために、あるいはそういった動物達を1匹でどう抗うかを見るために。


 3週目も4週目もそれぞれで観客を飽きさせないようにはしているつもりだ。


「観客……あの方々はそういえばどれを応援しているんでしたっけ?」


 確かゴリラ推しであった者はすぐさまヒツジを推し始めていたはずだ。


「一番人気はやはりライオンでしたでしょうか。二番手でトラやゾウ……残念ながらネズミはランク外ですか」


 錺自ら手掛けた作品であるネズミのナイ。

 彼女は錺が勝手に言っている『見えない暗殺者』の一匹でもあった。


 『見せない』ことに特化したコウモリのバッター。

 『見えない』ことに特化したカメレオンのメオラ

 『見ようともしない』ことに特化したネズミのナイ。


 三匹いる暗殺者のうち一匹はすでに死に、もう一匹は満身創痍で何とか生きているといった状況だ。


「ヒツジに負けたゴリラにしろ、シーラカンスに負けたコウモリにしろ、光るものは合ったのですが……残念です」


 何しろ彼らは戦闘意欲があった。殺しにかかって、死んだ。そしてそれは純粋な戦闘能力ではなく相性に近いものによって負けた。


「どうにかして彼らの闘いをもう一度見たいというスポンサーの方々もいますが……どうすることもできませんしねぇ」


 何しろ彼らは死んだ。

 死んだら生きてはいない。生き返ることは出来ない。それがルールだ。


「ん? ……待てよ」


 錺はデスクトップを凝視する。

 それは今後どのように闘いに組み入れようかと悩んでいた手に入れた力。


「そうか、これを使えば……」


 こうして錺の悪だくみ……もとい思考は深く沈んでいく。

 そして、


「よし、組み上がった。君」


「はい、何でしょうか」


 錺が黒服の1人を呼ぶ。


「今すぐ恩無君を呼んできてください。彼に、彼の能力に用事があります」


 時間は無慈悲に過ぎていく。

 2週目が終われば次は3週目へと。


 しかしながら時間とは無縁な世界も存在する。新たな戦いの場は時間とは無縁にゆっくりと闘える、そんな世界で行われようとしていたのであった。


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