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アニマルコロシケーション  作者: そらからり
2章 絶望の2週目
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47話 ステータス

たまには彼らを入れたくなったので

 2週目でチームを組むことを余儀なくされた動物達。

 それらを報告書と動物園内中に仕掛けられたカメラを通して錺は楽しんでいた。


「ライオンとトラのチームは恐らく最後まで生き残りそうですね。ペンギンは……残念ながら敗退ですか。まああの2匹と闘ったのですから、むしろ傷を負わせただけ善戦したほうでしょう」


「ヤギとアホウドリですね。名前はストマックとクラッチでしたか」


 錺の言葉に黒服の1人が答える。

 彼は以前、錺に『動物が人化する薬を人間に使ったらどうなるか』を問い、錺に気に入られていた黒服であった。

 その後はちょくちょく錺に呼びかけられては動物達の闘いにあーだこーだと論議を醸し出している。


「ペンギンらの能力は非常に使いどころも多く応用も効く。そしてそれを2匹が使えるという強み。ですが、同時にその強みは弱点でもあった。2匹いながらも能力は1つだけ。対してストマックとクラッチの能力はそれぞれが違う。1つの能力と2つの能力。これが勝敗を分けた。……でしょうか?」

 先ほどまで行われていた闘いを黒服が分析する。

 どちらも闘い慣れており、能力も使い慣れていた。


 身体能力に関しても、ストマックとクラッチは満身創痍であり、むしろペンギンらの方が有利であった。

 

 黒服の言葉に対して錺は


「ええ、大体はそんな感じでしょう。後はまあ誤差の範囲ですが、クラッチはともかくとしてストマックには油断が無かった。相手を侮ることも嘲ることも。ペンギンらには勝つと思った瞬間には遊んでいるようにも見えました」


 思えばペンギン――ライとレフには明らかに様子見をしている場面が多々見られた。

 作戦なのかもしれなかったが、あえてピンチに陥ろうとする場面やあえて能力を漏洩していることもあった。


 それに比べてストマックとクラッチは、能力が発動し、相手を追い詰めるまでは能力を決してライとレフに伝えなかった。

 だから、対策などされず、能力が発動された。


「まああなたの言う通り、能力の種別の多さが勝敗を分けたのかもしれません。油断して勝つこともあるでしょう。警戒し過ぎて負けることもあるのでしょう」


「あのライオンみたいに、ですか?」


 ライオン――リオナは常に自分を最強だと口語している。

 最強、つまり自分以外は弱いのだと。


「いいえ、それは違うでしょう。ほら、獅子搏兎と言うでしょう?」


 言うでしょうと言われても浅学な黒服にはその四字熟語の意味は分からなかった。

 伊達に高卒の、しかも偏差値40ギリギリの高校を卒業していない。

 黒服の役割は本来、武装し動物達の脱走、反逆を防ぐためなのだ。事務仕事自体向いている者が少ない。


「つまりは獅子は兎を追う時にも全力というやつですよ。ライオンは手を抜かない。本来、野生なら油断なんてものは起こらないはずなのですが、まああの双子は生まれたばかり、動物園でしか生きていなかったということでしょう」


「でも、動物園で生まれて今も生き続けている動物なんて、結構いますよね?」


「ええ、寿命がそこまで長い動物はそうでしょう。兎、鳥、狐、ハムスター、蛇……」


 錺が挙げる動物の大半がすでに戦死している。

 これが野生を生きた動物と動物園でぬくぬくと育てられた動物の違いとでも言うかのように。


「でも、蛇ってまだ生きてますよね? まあ蛇もそこそこの種類が人化してるから全部生きているわけではないにしろ」


「そうですね。スナックでしたか。カメレオンと組んだ蛇の名は。あのチームなら2週目は少なくとも生き延びるでしょう。逃げることも野生には必要なこと。動物園で生まれても本能に刻まれていたのでしょう」


「うーん……後は動物園で生まれたのは……ああ、この2匹ってどうなんでしたっけ? 確か初期に行われた闘いの1つに片方がいましたよね」


 そう言って黒服が示した動物に錺はああ、と頷いた。


「羊ですか。あのゴリラを倒した大穴中の大穴。組んでいるのは……ラッコですか」


「バランスは良さそうですよね。前衛の羊と後衛のラッコ。RPGなら盾で守るタンクと後ろから魔法を使う魔法使いでしょうかね」


「そうですかね……」


 得意げに2匹を分析する黒服であるが、錺の表情は渋い。

 パソコンのキーボードをしばらくカタカタ叩くと、

 

「こちら、私が参考までに作っていた動物達のパラメータなのですがね。ゲーム風に言いますとステータスですが、最高値を10にして、まずはこちらを」


 そう言って見せてきた画面にはライオンと書かれた画面が。


 名前:リオナ

 体力:10

 攻撃:10

 防御:10

 速度:10

 器用:10

 幸運:10


「まあざっとこんな感じでしょうかね」


 いやいや……、と黒服は思う。

 全部10とか規格外すぎるし、何の参考にもならない。


「意外と、器用も最高値なんですね……」


 こんなことしか言えない。


「ああ見えて、力の出力は上手いみたいなんですよ。なので10に。恐らくやってできないことはないでしょうあのライオンには」


 しかし、これでは参考にはならない。


「他の動物もありますか? 例えば先ほどのストマックやクラッチといった」


「ええ、勿論」


 自分の仕事を他人に見てもらえるというのは、気分が良いのだろう。

 上機嫌で錺は次の画面を示す。


 名前:ストマック

 体力:7

 攻撃:6

 防御:5

 速度:5

 器用:6

 幸運:7


 名前:クラッチ

 体力:5

 攻撃:4

 防御:5

 速度:6

 器用:4

 幸運:8



 こちらは打って変わって平均的であった。

 ストマックは平均よりやや上。

 クラッチはやや下であるが幸運が高い。

 なるほど、納得のできる値である。


 そして、何となくどの数字でどのあたりの能力なのかも掴めてきた。


「では、件の動物の……ヒツジとラッコのをお願いします」


「はい」


 名前:ドリー

 体力:4

 攻撃:1

 防御:3

 速度:2

 器用:5

 幸運:4


 名前:土左衛門

 体力:5

 攻撃:2

 防御:2

 速度:3

 器用:6

 幸運:5



 ……酷い。

 これは全体的に酷い。


「よく1週目を生き残れましたね」


 思わず黒服がそんな感想を述べてしまうほどには酷い数値であった。

 だが、やがて黒服が気づく。


「あれ? でも羊の能力でこの防御はおかしいんじゃ……。それにラッコだって攻撃はこの程度じゃないと思うんですが」


「ええ。その通り。羊の能力ならライオンの攻撃だって防ぎきるし、ラッコの能力ならライオンに致命傷を与えることだって不可能ではありません」


「なら……」


「これは能力無しの、素のステータスですから。ほら、兎の能力を思い出してください。あの能力を使われたら速度なんて関係ないでしょう? 10であるライオンなんて余裕で追い越せます。ですから、能力の表記は別なんですよ」


 だったらなぜ……いや、そうか。

 この2匹はこの低すぎるステータスを補って余り得るほどの能力を持っているということか。


「あの2匹の能力は多少は強くなったんでしょうか。1週目の闘いを見るに、ラッコはともかく羊は使いどころが難しいように思えましたが」


 今思えば、前衛の羊と後衛のラッコなんて、どんな無茶難題なのだろうと後悔する。

 後衛はまだしも、前衛が酷い。

 攻撃は出来ないし、防御も一瞬だけ。


 後衛も紙装備過ぎて、流れ弾で死にかねない。


「……おや?」


 ここで錺がモニターを見やる。


「ちょうど、始まるみたいですよ。その羊とラッコのチームの闘いが」


「おお、相手はどの動物達なんです?」


 こうなってはあの黒服を呼ぼうかと、錺の目の前の黒服は思う。

 初日から何かと羊のことを気にかけている性根の優しい黒服を。


 ……いや、気にかけているからこそ死んでほしくないと願っているはずだ。

 わざわざ死ぬかもしれない場面を見せることもないだろう。


「動物達、というよりは動物のようです。相手は1匹だけのようですよ」


 ならば勝てるかもしれない!

 などと、安易には思えなかった。


 1匹で行動しているからにはそれなりの理由があるはず。

 相方が死んだか……チームが瓦解したか……はぐれたか……1匹でも動けるほどの強さがあるのか……仲間を見捨てたか。


 そして闘うのは2匹合わせてようやく値が最高値に届きそうになるかもしれない、あるいは余裕で届いていないという底辺のチーム。

 最底辺は他にもいる――例えば蛇とカメレオンのチーム――としても、それでもこの2匹ならライオンクラスに当たれば瞬殺されてしまうだろう。


 闘わずに逃げることこそがこのチームの生きる道。

 そう言わざるを得ない程弱々しいチームであるが、黒服は気を引き締める。


 何とか、あの優しい黒服に良い報告ができるようにしたい、と。

 せめて善戦していたが相方が足を引っ張って運悪く死んでしまったと言ってやりたい。

 残酷なまでに力量の差があって嬲り殺しにされたなどとは口が裂けても言いたくはない。


 そんな思いとは裏腹に、


「ああそうだ。羊のことを気にしていた黒服がいましたね。良い機会ですから呼んでください。彼の解説も聞きたいですし」


 錺は何とも空気も心も読めないような発言をし、そんな上司の命令に黒服は微妙な顔をしながら携帯を取り出したのであった。


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