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アニマルコロシケーション  作者: そらからり
2章 絶望の2週目
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36話 ねこかいぬか 前編

「何でお前と闘えないんだろうね」


「そりゃあ、最後の最後に俺らの決戦があるからに決まっているからじゃねえか」


 最弱のペアあれば最強のペアもある。

 ライオンであるリオナとトラの朱抹はおよそ考えうる限りで最強のペアであった。何せ自他共に最強と認められているライオンと、それに釣り合い劣ることのないトラのペアである。これに勝つためにはいくつもの策を用意し、正攻法以外の道を選ばなければならないだろう。



 リオナに挑んだパンダのメイメイ。彼女は愛情を操り、リオナから闘うという気持ちを消させた。そのまま一方的な蹂躙を受け続けるかと思いきや、メイメイの放ったある一言でリオナはあっさりと逆転。親の愛を持ったまま躾を行った。



 伸び続ける角を能力に持つシカのバゼール。彼の貫くことに特化した角は終止、朱抹を近づけさせることがなかったが、角を喰らうことで身体能力を強化した朱抹にも決定的な傷を負わせられずに、角の伸長に限界が訪れその後死を覚悟した特攻を演じて死亡。朱抹に文字通り骨までしゃぶられ飲み込まれた。


 いずれの闘いもリオナと朱抹、どちらも危うい闘いにはなりかけたが、自力が違った。

 正面から挑まずに能力での搦め手を使い追い詰めようとしたメイメイは最後には力で負け、正面から角を伸ばし続けたバゼールも角を喰われ続け最後にはその身も喰われた。

 正面からの闘いにおいては彼らの右に出る者は少なかったのである。

 ならば……搦め手を得意とする者とならば彼らは劣勢に陥るのだろうか。

 それとも搦め手すら王道に攻略し、優勢に持ち込むのだろうか。


 彼らの底は未だ知れず、知ろうとする者は浅い地点で命を落としていく。

 だから彼らは最高峰のペアであり、誰もが彼らを避けているのであった。


「しっかし、暇だなー」


「まあアタシらに挑むのは少なくなってしまったからね。獰猛な動物はやつらだけで殺し合ってたってことだし、そもそもでアタシらに挑むような連中は1週目で倒してしまったんじゃないか?」


「違いない」


 そう言って彼らは笑う。

 肉食動物ならではの残虐性と暴力性を身に纏い彼らは次なる獲物を探していた。

 彼らから逃れるためには弱者であり続け、勝負を放棄しなければならない。彼らは闘いの末に得られる勝利と食糧を渇望している。弱者など願い下げであった。


「聞いた話じゃゴリラも初日に殺されたらしいよ。しかも一撃で。それ以外の攻撃は互いになかったんだとさ」


「へえ。ならそいつは少なくともゴリラよりは強いってわけか。楽しみだ」


 朱抹は舌なめずりをしながらその未知なる敵を想像する。

 ものすごい力の持ち主なのか……しかもあのゴリラ以上の。

 それとも能力が一撃で決着を着けるものなのだろうか……ならば自分も危ういかもしれない。

 闘いに危険はつきものでそれすらが楽しい。

 スリルのない闘いは闘いにあらず。それはただの作業である。


「いいか? アタシが見つけた獲物はアタシのものだ。その代り、お前が見つけた獲物はお前に譲る」


 獲物は早い者勝ち。そうリオナは言う。互いに互いの強さを知っており、なおかつその力の全てを知らないためどちらが強いのかは未知数。それでも自分の方が強いと確信しており、しかし今無駄な手傷を負うわけにはいかない。いつかの決着を夢見て今は共闘しよう、そう二人の間には無言の協定が交わされていた。


「しかしよ、お前の旦那を殺したってのはどいつなんだ。俺はどっちかというとあいつの方と闘いたかったんだけどな」


「さあね。最強のアタシでもあの旦那には足が竦むよ。何せあの旦那は最恐だ。最強とは違ったモノを持っていた。……アタシが勝てるかどうか、今でも分からないね」


「ふうん。ならあいつを殺したやつはどういうやつなんだろうな。最恐を恐れぬやつってのは。感情の無い奴だったりしてな」


 そのように、かつて死んだリオナの旦那である雄ライオンを語る2人にはどこか復讐の炎を目に宿していた。

 いつか雌雄を決するはずのライバルであった。

最愛かどうかは分からないが身内であった。

 自分たちの中では強さを語る時の基準にいたはずの者が自分たちの知らないところで死んでいた。あっけなく、何となしに、この殺し合いに何の影響も与えずに。


「しかし、アタシはともかく、お前はどこで旦那に会ったんだ? 確か自分の檻に引きこもっていたんだろ?」


 朱抹は森林茂る檻の中で静かに獲物が迷い込むのを待ち受けていた。

 故意に、あるいは偶然迷い込む動物達を1匹残らず食い殺し己の糧にしてきた。


「……初日にな、訪ねて来たんだよ。最終日にはリオナ、お前を含んだ3人で派手に殺し合おうぜって。それまでに力を溜めておけよってさ。そう言った本人が死んじまってんじゃんよ。その日のうちにだろ? 俺のとこになんか来てないでそのまま大人しくしておけよって思ったぜ。……だから俺はあいつを殺したやつを殺す。リオナ、お前が何と言おうともな」


「そりゃあ、アタシの役目だが、これも早い者勝ちといこうか。だけど、殺したやつが誰だったか、後で教えてくれることを約束としてね」


 リオナと朱抹、この2匹はとある1匹によって繋がっている。

 その1匹は死んでなお多大なる影響を2匹に残し、選択肢を与え減らしていた。





「……なあ、さっき獲物は早い者勝ちって言ってたじゃないか」


「……そうだな。アタシは確かにそう言ったな」


「じゃあこの場合はどうするよ? 獲物が向こうからやってきた場合はよ!」


 悠々と歩くリオナと朱抹と反対側から2つの人影が現れた。

 こちらが向こうを見ているからにはあちらからも見えているはず。

 それなのに向こうは隠れる気配も、動揺する様子も見せない。


「そりゃあ決まってんだろ。アタシで1匹、お前で1匹だ!」


 言ってリオナは駆け出した。より強いほうを見極めるために。


「まあ、強い方は早い者勝ちだけどね!」


「あ、ずるいぞ!」


 朱抹も慌てて追いかけるが両者の力量はほぼ同格。先に駆け出したリオナには追い付けない。

 能力を使い速度を強化しようかと考えたが、ここで無駄に使うと後で強化するべき時に力が足りない事態になってしまうことを考えて自制する。

 どちらにせよ俺らの敵ではない。そう考えて朱抹はリオナを追いかけることにした。





「よっしゃあ、闘うぞ! アタシの敵はどーちーらーにー」


 リオナは2つの人影がようやくそれぞれの特徴を持ち始めた距離にまで到達するとより強そうな獲物を選び始めた。


「しーよーおーかー……ん?」


 その2つを見てリオナの指は止まる。

 どちらを選ぶまでもない。

 どちらも同じ形を取っていたのだから。


 それは袈裟を着た太った男であった。禿頭を光らせ、手には錫杖を持っている。

 見た目は完全なる坊主。闘うとなれば僧兵であろうか。

 それが2人、全く寸分違わずいるのである。

 リオナは輝んばかりに目を光らせた。


「……まず武器を持っているって時点でそれは能力に関係しているな。うーん……分からんぞ。分からないってことは楽しい闘いになるってことだ!」


 黒服達に与えられたのは衣服と餌のみ。武器を持つ動物たちは稀にいるが、ほとんどは爪や牙で闘う。そして武器を持つ動物達は能力で作り出すことが多い。中には能力で作られた武器を奪う動物もいるが。


「やっと追い付いた……何をぼけっとしているんだ? あ? 何で同じやつが2匹も……ああ、分身ってわけか?」


 息を全く切らさずに追い付いた朱抹がリオナへと問う。


「どうだろうかね……まあ、闘って見れば分かるさ。アタシは右のを、お前は左のをでいいかい?」


「ああ、それでいいぜ。どちらも遜色ない強さであることを……期待しようじゃねえか」


 そう言って彼ら最強最高のペアは互いの獲物目掛け走り出した。

 と、同時に敵も能力を発動する。


『――(’ズ)(ハート)』!」


 そうして2人いた同じ顔の敵は、数えるのが馬鹿らしくなるくらいに増殖した。もちろん、錫杖付きで。


タイトルでなんとなく動物が分かってしまう

まあどうせ次話にはちゃんと出すけどもね!

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