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アニマルコロシケーション  作者: そらからり
2章 渇望の3週目
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57話 探し物は何ですか?

夢の世界編やってたからこの話数で57話ってまだまだ短く感じるな

「うーむ」


 二週目を終えて、錺は悩んでいた。

 翌日には三週目が始まろうとしている……にも関わらず、その内容を決めきれずにいるのだ。


「四週目……最後の演目は決まっていますし。そこに向けてとなると……というか少し残っている動物多すぎません?」

「えっ!? いや、まあ……そうなんですかね……? 結構減ったような気がしますが」


 隣にいた黒服に尋ねると、何とも言えない顔で答えられた。


 すでに両手両足の指で数えきれるくらいには減ってきているだろうか。

 一週目の動物たちを思い出せば、多いとは決して言えない。


「俺たちも四週目の内容知らされていないんすけど……何するんすか?」

「それはお楽しみですよ……と勿体ぶることでもありませんね。なに、他の場所でも同様の生き残り合戦が行われている。最後は全て合わせての頂上決戦です」

「うわぁ……どんだけ予算使いこんでるんすか。準備も始動中も、最後の最後まで金かかるでしょそれ」

「そこはほら、やんごとなき方々から慈善寄付がありましたので」


 その寄付金がいくらなのか、予想も出来ない。

 下手をすれば国家予算並みにまで膨れ上がっているのではないかと黒服は身震いする。


「あー、なら三週目はその四週目でそれぞれの力を拮抗させりゃいいんじゃないすかね」

「というと?」

「ほら、この動物園内ならライオンとかトラが突出しているじゃないですか。正直、キツネとかタヌキは残ると思っていたんですけどね。ま、要はゲームバランスって言うんですかね。頂上決戦がどうするのか分かりませんが、始まる前から勝敗が分かるような戦いにならないように調整した方がいいと思うんですよ」

「三週目で調整……なるほど」


 錺はメモ帳にペンを走らせる。

 

「これを恩無君へ」

「はい」


 もはや慣れたとばかりに黒服は走る。

 そのメモ帳の中身はろくでもないことを知りながら。





 三週目に突入した初日。

 生き残っていた動物達は目覚めると、また一堂に会されるのかとうんざりしていた。

 互いに殺し合う間柄の相手と会い、何もせずに帰されると思うと、馬鹿馬鹿しくなり、人間の掌の上で戦いを強いらされていることを再確認してしまう。

 いくら自由や孤高を謳おうとも、人間に従わされている場面を見られてしまうのはバツが悪いし格好がつかない。

 それすら気にせずに欠伸混じりに集まる動物こそある意味で強いのだろうが。


 いくら待てど黒服がやってくる気配はない。

 二週目が終わったということはペアも解消されており、久方ぶりの独りを満喫する者もいる。あるいは殺意や友情を感じた者もいる。

 情報もないま檻の中で一日が過ぎようとした頃であった。


『あーあーテステス……皆様聞こえていますかね』


 あの人を食ったような声が園内中に響いた。

 動物らは得た知識から設置されたマイクを通じて聞こえてくることを察すると、ひとまず殺意を抑える。

 黒服らが園内中に配置されていく。

 どの動物も黒服の一人は視界に納まるような配置である。


『もう日も落ちそうです。ということは行き渡った頃かと思います』


 要領の得ない話とて聞き逃すことは出来ない。

 この二週間で錺という人間はこちらを馬鹿にしつつも試す風なことを時折言ってきた。


『二週間お疲れさまでした。皆様はよく戦い、逃げ、生き残って来ましたね。私が当初思い描いていた以上の戦果を発揮してくれたかと思います』


 褒めるようなことを言おうともはや動物たちは一匹として素直に受け取らない。

 錺の褒め言葉が褒めていると受け取る動物らはすでに死んでいる。


『想像以上に生き残ってしまったので、数を一気に減らそうかと思います』


 黒服らが懐から何かを取り出した。


『よく聞いてください。この三週目を終えて残るのは10匹までです。決してそれより多くは残らないと私は宣言します。たとえ毒に耐えようと、電流に耐えようと、条件を満たさなければ銃殺なりで殺します』


 殺すと、錺ははっきりと宣言した。

 これまでぼんやりと言葉を濁し、どうとでも受け取れる言葉を吐いてきた口が殺す、と。


『まあ皆様殺してきたあるいは逃げてきたのです。これからやることも同じですよ。安心してください』


 そう前置きをして


『そこの黒服さんらの持つものをよく見てください。視力が弱い方は申し出てください。匂いなりで感じ取れるようにしますので』


 黒服の持つもの……それは一本の鍵であった。

 とはいえ、歯にあたる部分は真っ平であるため、何かを開けるよりも鍵そのものが重要なのだろうと推測される。


『複製対策として、この鍵はただの飾りです。ああ、私のことではありませんよ?』


 誰も笑うことは無い。

 黒服すら無表情である。


『……おや? まあ、いいでしょう。この鍵にはチップが内蔵されています。三週目が終わればこの動物園からこの鍵を使って脱出してください。チップが脱出ゲートにて読み込まれて開く仕組みです』


 つまりは、一つの鍵につき一匹が脱出できるということだろう。

 複製対策と、言っていた。

 たとえ複製能力を持つ動物がいたとしても同じ鍵では二つ目は感知されないのか。


『三週目は言ってしまえば宝探しです。探し、奪い合ってください。この動物園内に隠してありますので』


 この時間まで集められなかった理由はそういうことだったか。

 園内の修復とは別に、鍵を隠す時間が必要であった。


 だが……とどの動物も思う。

 それでは不公平が過ぎるのではないかと。


 隠すところを檻の中から見ていた動物もいたはずだ。

 更には、探すことに特化した動物もいることだろう。


『殺すことが好きで得意なあなた方が不公平と声を上げるのは結構ですがね。私は公平な人間ですので、これまでスポットライトを浴びずに来た方々へのご配慮です』


 戦えず怯えてきた動物らに活躍のチャンスを与えようと、錺は勝手なことを言う。

 スポットライトなんていらない。

 目立たずに過ごしてきた動物らはこれまで通りに目立たずに生き延びたかった。


『10本です』


 錺は生き残れる動物の数を提示する。


『分かりやすく、分かりづらく、ばらけて、纏めて鍵を置いてみました。一匹で一度に2本の鍵を見つけることだって可能かもしれませんよ』


 その場合は最後に生き残る数が9匹になるのだろうか。

 四週目に何をさせられるかは分からないが、ろくなことではないし、敵を減らす手段としては良いのかもしれない。


『逃げることが得意な方は鍵を見つけたらすぐに隠れることをお勧めします。殺すことが得意な方は片っ端から殺していけば鍵を持つ動物を見つけられるかもしれません』


 鍵を見つけ、最終的に生き残るよりも先に動物らが減らし合わせる手段を錺は挙げていく。


『では黒服の方々は戦いに巻き込まれる前にさっさと避難を開始してください』


 情報を整理する。

 やることは単純。鍵を入手するということだ。

 探す、あるいは奪い三週目を鍵を持ったまま終える。

 それが生き残る条件である。

 鍵を持っていればこの動物園から出ることが……できる?


 出てどうするのだろう。

 どこへと向かうのだろう。

 聞き流していたが、四週目もあることは一か月の闘いという前提から確かだ。


 この動物園以外の場所で戦うのだろうか……?


 謎を抱えたまま動物らが檻から解き放たれる。


 時刻は夕暮れ17時。

 すでに日も落ちかけて薄暗くなってきている。

 探し物をするには向いているとは言い難い時間帯だ。

 逆に言えば、全ての動物は運次第で鍵を入手できるチャンスでもある。


 二週目を生き残った動物……そして、夢の世界で戦い抜き復活した猛者が新たな肉体を得て動物園内を徘徊し始めた。

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