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かくて聖者は《奇蹟》に抗う  作者: RYO太郎
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第一章  ジェラード邸事件 その②





 気体化した水晶が音もなく地上に降りそそいでいる。


 大地に茂る草木は青と緑の生気みなぎる色をたたえ、着実に夏への階段をのぼりはじめようとする。


 透きとおるような碧さをたたえる空には純白の雲が湧きおこり、その形を変えながら太陽の光と風とたわむれる。


 初夏の気配が漂いはじめる六月の教圏南方帯の風景は、本来そういうものであった。


 だが、大小あわせて十三の国々が国境を接する南方帯にあって、その一国たるバスク王国だけはどういうわけか、国土全域が連日、薄い鉛色をした冷雨のカーテンと、吐く息を白くさせるほどの寒気の中に閉じこめられていた。


 周辺の国々から旅行や行商のためにやってきた旅人や隊商(キヤラバン)の一団が、思いがけない気候に直面して驚いたものである。


 近隣の国々はすでに本格的な夏季が到来したような温暖な気候下にあるのだが、バスク王国に入ったとたんにその状況は一変。


 空は黒灰色の雲におおわれ、視界は鉛色の雨にさえぎられ、街中を歩く人々は皆、季節はずれの冷気の前に厚手のコートなどを着用しているほどだ。


 まるでバスク一国だけが冬に逆戻りしたかのようなその光景に、異国から訪れた人々は不可解さをとおりこして、なにやら不吉めいたものを感じずにはいられなかった……。

 

     

     †

     


薄暗い部屋の中で、一人の若者が静かに椅子に座していた。

 

 その若者はまだ十代であろうか。

 

 黒い革造りの上着にズボン。さらには黒革造りのブーツという黒革づくめの装いで、その胸もとには、首からさげられた銀造りの十字架(ロザリオ)が鈍い光をたたえている。

 

 意志の強さのようなものを感じさせる黒い瞳に、形よくととのった眉。壁に掛けられたランプの灯火に照らされたその容貌は、わずかに幼さが残るもののまず端整といっていい顔だちをしているが、それ以上に印象的なのはその頭である。

 

 ある種の宝石を溶かして染めあげたようなあざやかなその赤毛は、まるで頭の上で燃えているようで、明るさに欠ける室内でもはっきりとわかるほどだ。

 

 そこは質素な造りの部屋であった。

 

 樫の木造りの椅子がふたつと、やはり樫の木で造られた丸いテーブルがひとつあるだけで、ほかに装飾品や調度品の類はない。壁のランプも長年使いこまれた、錆びまみれの代物である。

 

 壁には数枚のタペストリーが掛けられてはいるが、そのタペストリーにしても教皇庁の紋章を織りこんだもので、装飾性よりもむしろ信仰性のほうが色濃く出ているものだ。

 

 赤毛の若者が座っている椅子にしても緩衝材(クツシヨン)もついていない粗末な代物であるが、若者はまったく気にしていないようである。

 

 バスク第一教会。その中にある談話室の一部屋が、今、若者がいる部屋だった。

 

 教皇庁によって教圏諸国の各都市、各町村に設けられた教会の群は、たんにその一帯に住む人々のための礼拝や儀式をおこなう宗教施設というだけの存在ではない。

 

 いわばそれは、教皇庁の大使館であり領事館であり、ダーマ教皇の意志と勅命を担当教区の人々に伝達し、または逆に教区内の情報を集めて教皇庁に伝達するという、相互連絡網としての重要な役割を担っている。

 

 それだけに、地方の町や村にある教会ならともかく一国を管轄する第一教会ともなると、その代表司教は教皇庁の幹部司教に匹敵する要人で、必然的に多忙をきわめる身であり、約束をとりつけていない急な面会などできるはずもなかった。

 

 当初、教会に足を運んだ赤毛の若者がルシオン大司教との面会の取り次ぎを頼んだとき、教会の衛兵ににべもなく断られたのは当然のことであろう。

 

 その当然のことがくつがえったのは、教皇庁の紋章が刻まれた銀造りのペンダントを披露し、自分がシトレー大司教の使いであることを若者が伝えたときである。

 

 シトレー大司教は教皇庁を代表する高位司教の一人であるから、教会の人間であれば知らぬ者はいない。まして若者が披露した銀のペンダントには、その言葉を証明するようにシトレー大司教の名前が刻まれてある。

 

 身分を証明するものとして、シトレー大司教が若者に持たせたものだった。

 

 事情を察した衛兵はあわてて教会の中に消えていき、しばらくしてふたたび若者の前に姿を見せたとき、衛兵は一人ではなかった。

 

 ともにあらわれたリンツ司祭がうやうやしい挨拶のあとに、若者を教会の中に招き入れたのである。

 

 通された談話室で待つことしばし。赤毛の若者はふいに椅子から立ちあがった。

 

 蝶番(ちようつがい)の鈍い響きとともに部屋の扉が開き、そこから銀髪をもつ祭服姿の人物――ルシオン大司教があらわれたのだ。


「いや、待たせてすまなかった、聖キリコ。なにぶん、明日までに私自身が決裁しなければならない職務が山積していてな」


 あわてて駆けつけてきたのだろう。


 額に浮きでた汗をぬぐいつつ、ルシオン大司教は若者に椅子に座るようにすすめ、自らも腰をおろしてすぐに話を切りだした。


「それで聖キリコよ。私のもとを訪ねてきたのは、先の〈ヴラドの渇き〉に関する調査において、なにかしらの成果を得たということか?」


 そう問われた赤毛の若者――キリコは小さくうなずいた。


「はい。じつはその件で、猊下にお訊きしたいことがあるのです」


「ほう、それは?」


「猊下はカルマン・ベルドなる貴族のことをご存じですか?」


「……カルマン・ベルド?」


 ルシオン大司教が微妙な角度に眉を動かしたのは、キリコが口にした人名に記憶がないからではなく、逆に大司教自身、よく知った名であったからだ。


「うむ、もちろん知っておる。今、この国でかの御仁の名を知らぬ者は、生まれたての赤子くらいなものであろうからな」


「それでは、かの人物とは面識もおありで?」


「いや、私自身はカルマン卿とは直接の面識はない。父君のシャラモン・ベルド伯爵には何度か王宮で会うたことがあるがな。あまり信仰や敬虔という言葉とは縁のなさそうな御仁だったのを憶えておる。おそらく息子のほうも似たようなものであろう」


 そこで思考と表情が一変し、ルシオン大司教は目をみはった。


「まさか、そのカルマン卿が今度の一件に関わっているのか?」


「現時点では確たる証拠はありません。ですが、自分はそう見ています。すなわち〈ヴラドの渇き〉が確認されたあの日、カルマン・ベルドなる貴族が《御使い》として転生したのではないかと」


「なんと……!?」


 驚きのあまり、ルシオン大司教はつい発すべき声を失ってしまった。


 まさか《御使い》に転生した者が、自分の知己の範囲にいるとは予想すらしていなかったからだ。


 ひとつには、カルマン・ベルドなる貴族が、現在のバスク国内では知らない者がいないほどの「有名人」であったこともある。


 なにしろ彼の一族が引き起こしたある事件のおかげで、バスク王国は全土が混乱におちいり、一時は事態収拾のために教皇庁が「介入」する動きを見せたほどだった。


 ルシオン大司教はひとつの疑問にいたり、キリコに質した。


「それにしても聖キリコよ。カルマン卿が転生者かもしれないという、その推察の根拠はなんなのだ?」


「彼の人生とその末路が符合するのです、猊下」


「符合する?」


 キリコが小さくうなずくと、燃えるような赤毛がゆるやかに波をうった。


「そうです。それまで普通に生きていた普通の人間が、ある日突然、人外の魔人《御使い》として生まれ変わる謎はいまだ解明されていません。ですが、奇蹟調査局によるこれまでの研究の結果、《御使い》に転生した人間にはある種の共通項があることがわかっています」


「うむ。それなら以前、私もシトレー卿より伺ったことがある」


 ルシオン大司教はいったん言葉をきり、脳裏の奥深くにしまいこんであった記憶に思考をめぐらすと、噛みしめるように語をつないだ。


「現世への烈しい絶望、未練、そして怨恨(うらみ)。それら人としての負の念が〈あの男〉を、いや、亜空をさまよう〈あの男〉の幽魂を召還し、人間を邪悪なる魔人へと生まれ変わらせているのだろうと。憶測の域を超えたものではないとシトレー卿はおっしゃっていたが、あながち的のはずれた推測ではないと私も思う……」


 そこでルシオン大司教は、キリコの顔に視線を戻した。


 先の発言の意味するところを理解したのだ。


「なるほど、符合するとはそういうことか」


「はい。むろん、自己の人生に絶望し、不満や怨恨を抱えているのはなにもカルマン卿にかぎりません。しかし、彼と彼の一族にまつわる一連の話といい、この国で〈ヴラドの渇き〉が確認された時期といい、自分としては彼が転生者である可能性が高いと思うのです。かの事件以降の彼の末路を考えればなおさらかと……」


「うむ、たしかにな」

 

 ルシオン大司教は重々しく首肯した。


「ベルド家はバスク王国開闢以来の名門として、貴族社会に顕然たる力をもっていた一族だが、あの事件を機にまさかの断絶においやられた。次代の当主として周囲から期待と羨望を一身に浴びていたカルマン卿にしてみれば、無念以外の何者でもなかったであろう。事件を起こしたのは彼の父親であって、彼自身には非がないだけにな」 

 

 ルシオン大司教が口を閉じると沈黙がおりかけたが、キリコの問う声がそれを破った。


「そこで猊下にもうひとつお訊きしたいのですが、猊下はジェラード侯爵なる貴族とは親交がおありでしょうか?」


「ジェラード侯爵? うむ、それほど親しいわけではないが、ベルド伯爵同様、王宮での会合などで何度か会うたことがある。貴族の中では教会への寄進も多い。もっとも信仰心によるものというよりは、私の見たところ、周囲への見栄と体裁という色彩のほうが濃いようではあるが……」


 ルシオン大司教の声には、隠しきれない皮肉の響きがあった。

 

 大司教自身、教会の建物やこの部屋に見てとれるように質素を美とする性格のため、虚飾と浪費に興じる一部の特権階級の人々に対して、好意的になれないようである。

 

 ふいにルシオン大司教の表情が一変した。


「まさか、ジェラード侯爵までもが今回の一件に関わっているというのか?」


「いえ、猊下。侯爵自身は一連の怪事とは直接は無関係です。ただし……」


「ただし?」


「自分の推測が正しければ、おそらくかの貴族は、近日のうちにも人智を超えた災難に直面するものと思われます。その前に保護したいのです」


 キリコがそう言うと、ルシオン大司教の顔で戸惑いの波動がゆれた。


 キリコの言葉が意味することが理解できなかったのだ。


 むろんキリコとしては、さらに具体的に説明するつもりであった。


「つまり、カルマン卿を転生者と仮定した場合、烈しい憎悪を抱えこんだまま人外の魔人へと生まれ変わった彼が、転生によって手に入れた能力で真っ先になそうとすること。彼の立場となってそれを考えたとき、自分が見出した答えはひとつだけです」


 キリコがそこまで言ったとき、ルシオン大司教の表情に完全な理解の閃きが走った。


「そうか、復讐というわけだな、聖キリコ!」


「さようです。かの事件の背景にベルド伯爵とジェラード侯爵との、貴族社会における暗闘があったことは事実のようです。そうであるならば、カルマン卿が家門を断絶においやった者への復讐心に駆られてもおかしくはありません。この場合、父親の政敵であったジェラード侯爵はむろんですが、一族の討伐を命じたバスク国王も当然、その対象になるものかと……」


 キリコの語調はさりげないものであったが、ルシオン大司教の目をぎょっとむかせるには十分なものだった。


「ま、まさか、カルマン卿はバスク国王までも狙っているというのか!?」


 大司教の声が底知れない驚愕にひびわれた。 


 キリコの訪問をうけた今宵、否、あの〈ヴラドの渇き〉を目撃した夜以来、驚愕への耐性は十分にあったはずだが、それでもこれは最大級のものであった。


 小さくうなずいてからキリコは語を継いだ。


「先の事件において、ベルド家の討伐を命じたのはバスク国王とか。そうである以上、ジェラード侯爵同様、カルマン卿の復讐の対象にバスク王が含まれていることは考えられることです。たとえそれが理不尽な逆恨みであっても、カルマン卿にしてみれば十分な復讐の理由になるでしょうから」


「うむ、たしかにそなたの申すとおりだ」


 内なる動揺を抑えつつ、ルシオン大司教は首肯してみせた。


「人間であることを棄てたカルマン卿に、今さら君臣の理が通じるわけもない。まして一族の討伐を国軍に命じた国王を狙うに、なんの遠慮があろうか」


「そのとおりです。ただ、相手は一国の王。王宮の警備は厳重でしょうし、バスク全土に手配されている現在のカルマン卿では、国都に足を踏み入れるだけでも至難でしょう。ゆえに、いかに《御使い》に転生した身とはいえ、カルマン卿もそうそう手を出すことはかなわないはず。そちらのほうはそれほど懸念する必要はない……」


 キリコが口を閉じ、おもわず目をみはったのは、ルシオン大司教がいきなり椅子から立ちあがったからである。


「そ、そうだ。私としたことが……!?」


 椅子から立ちあがるなり、「すこし待っていてくれ」との一語を残してルシオン大司教は部屋を飛びだしていった。


 ほどなくして部屋に戻ってきたとき、その手には一通の封筒が握られていた。


「これはジェラード侯爵から私宛てに送られてきたものだ。中には舞踏会への招待状が入っている。私は華やかな場は苦手なので多忙を理由に断ったのだが……」


「舞踏会?」


「そうだ。それも普通の舞踏会ではなく、国王夫妻が隣席するものだ。聞けば、国中の貴族や名士が招待された壮大なものらしい。ようするにジェラード侯爵が自身の権勢を見せつけるために開催(ひら)くものなのだが、それはともかく聖キリコよ。もしそなたの推測が正しければ、《御使い》に転生したカルマン卿にとって復讐を遂げる好機なのではないか。なにしろ国王とジェラード侯爵という、彼にとっての仇敵が顔をそろえるのだからな」


「なるほど、たしかに」


 キリコは得心したようにうなずいてみせた。


 二人の仇敵、とくにバスク国王が警備の厳しい王宮から出るのであれば、復讐心をたぎらせるカルマンにとって行動に出るにこれ以上ない好機であろう。なにしろ、常に厳重な警備下にある王宮への侵入という危険を犯す必要がなくなるのだ。

 

 だが、逆に考えれば、キリコにとって行方のわからないカルマンを見つけだす機会とも言える。


 舞踏会場で見張っていれば、探し求める相手が向こうから姿を見せるのだ。

 

 あとはカルマンが本当に転生者かどうかを見極め、もしそうなら教皇庁の「勅命」をすみやかに実行するのみだ。


「それで猊下。その舞踏会が開かれるのは何時(いつ)なのですか?」


「それが……じつは今宵なのだ」


「今宵!?」


 おもわず声を詰まらせたキリコに、ルシオン大司教がどこか申し訳なさそうにうなずく。


「そうなのだ。この国都から北に向かうこと二百フォートメイルほどの地に、古くから王族の避暑地として使われてきた湖水地方がある。その地にあるジェラード侯爵の別荘が会場だ。この招待状には開始が巳の後刻(午後六時)とあるから、すでに舞踏会は始まっている頃であろう」


「わかりました、猊下」


 語尾に重なるようにキリコは椅子から立ちあがった。


 その双眸に輝く決意の光を見てとって、ルシオン大司教はキリコの意図を察した。


「侯爵の別荘に向かうつもりか、聖キリコ?」


「はい、自分はこれよりその湖水地方に向かいます。カルマン卿への推論も含め、自分の勘違いであれば幸いなのですが、とにかく万が一ということもあります」


 国都から湖水地方までは二百フォートメイル。超人的な身体能力を誇る聖武僧でも、到着するまで二刻はかかるであろう。


 ましてやすでに舞踏会は始まっている。《御使い》への転生の推論が正しく、ジェラード侯爵への復讐を狙っているという推察が正鵠を得たものであったとしても、現地に到着するまでの間に事態は最悪の結果を迎えている可能性もあり、すべては徒労に終わるかもしれない。


 だが、その徒労のために身命をかけるのが聖武僧の存在意義であることを、ルシオン大司教はむろん承知している。


「わかった。では、これを持っていくがいい。もしかしたら役に立つかもしれない」

 

 そう言ってルシオン大司教は舞踏会の招待状をキリコに手渡すと、さらに自身の名前が刻まれた十字架を首からはずした。


「今宵の舞踏会は国王が臨席するため、屋敷にとどまらず周辺一帯にも侯爵の私兵が厳重な警備をしいているだろう。もし彼らに足止めをされたときは、この十字架と招待状を見せて私の代理者であると説明すれば、兵士たちもむげな対応はとらぬであろう。《御使い》うんぬんの話をしたところで彼らに理解できまいからな」


 それどころか、真相を話したどころで妄想症の変人か凶人扱いされて、かえって無用な騒動を生じさせる恐れがある。

 

 それならば自分の名を利用し、ジェラード侯爵への祝言をあずかってきたとでも言えば、すくなくとも警備の兵士たちがキリコの行動を阻害することはないだろう。それがルシオン大司教の意図するところだった。


「お心づかい感謝いたします、猊下。それでは遠慮なく使わせていただきます」


「そうしてくれ。それにしても、すべては杞憂であってくれればよいのだが……」


 大司教がため息まじりの声を漏らすと沈黙が訪れかけたが、キリコの声がそれを破った。


「それでは猊下、時間がありませんので自分はこれで失礼させていただきます。いろいろと助力と助言、ありがとうございました」


 一礼するなり、キリコは赤毛を波うたせて部屋を飛びだしていった。


 ふたたび静けさを取り戻した談話室の中で、ルシオン大司教は一人、黙したままたたずんでいた。


 けっして胆力の劣る大司教ではないのだが、キリコによってもたらされたさまざまな想定外の情報に、思考と胸中を整理しきれずにいたのだ。


 ダーマ神教の聖職者として僧籍に入り、この年で三十年余り。


 神学校の教師などを歴任し、これまで学者肌の司教として教皇庁がもつ「裏の顔」とは無縁な人生を歩んできたが、それも齢五十を超えて、ついに過去形で語られる日が来たことを大司教は悟った。


 しばしの間、壁のタペストリーをなぜともなく見つめていたルシオン大司教は、いつまでも惚けている場合でないことに気づくと、王宮に向かうためリンツ司祭の名を呼んだのだった。

 

    

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