登場人物と最新部分までのあらすじ
【登場人物】
○キリコ
ファティマ教皇庁の極秘戦闘兵『聖武僧』の一人。十八歳。
○グレアム枢機卿
教皇庁奇跡調査局長官。次期ファティマ教皇の最有力候補。
○シトレー大司教
教皇庁奇跡調査局審議官。キリコの後見人的存在。
○フェレンツ大司教
教皇庁奇跡調査局審議官。
○バーハイデン大司教
教皇庁奇跡調査局審議官。
○ルシオン大司教
バスク国教会総長・兼・バスク第一教会代表司祭。
○カルマン・ベルド
バスク王国の名門ベルド伯爵家出身の青年貴族。
怪異現象《ヴラドの渇き》によって人外の魔人《御使い》に転生する。
○ジェラード侯爵
バスク王国最大の貴族。
○シャラモン・ベルド伯爵
カルマンの父。ベルド家当主。宮廷内の政敵たるジェラード侯爵によって謀死させられる。
○シェリル・ランフォード
バスク貴族フランツ・ランフォード男爵の娘。
○ヨヴ・ファティマ
預言者にしてダーマ神教の創始者。万物の創造神ダーマより救世の啓示を受ける。
○ヨシュア
ファティマ十二高弟の一人。初代ファティマ教皇。
○ヴラド・イスカミリオ
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【あらすじ】
聖武僧。それは不死の肉体をもつ人外の魔物《御使い》との戦いのため、ダーマ神教の総本山であるファティマ教皇庁が秘密裏に組織した僧兵の名である。ダーマ神教誕生以来、千年にも続く両者の知られざる陰の戦いはいまだ決着を見ていない。
一日、教皇庁に急報が届く。教圏南方の国バスク王国にて【ヴラドの渇き】が確認されたという。夜にもかかわらず空が朱色に染まるこの怪異現象は、新たな《御使い》がこの世に誕生したことを意味する。教皇庁奇蹟調査局長官のグレアム枢機卿は、聖武僧の一人である聖キリコを現地に派遣して対処を命じる。その地で調査をおこなった結果、キリコは同国の青年貴族カルマン・ベルドが《御使い》に転生した事実を掴む。
《御使い》に転生したカルマンの狙いが、宮廷社会においてベルド一族の政敵であったジェラード侯爵の殺害にあると看破したキリコは、救出とカルマン捕殺のために侯爵の別荘に向かう。しかし時すでに遅く、キリコが駆けつけたときジェラード侯爵は人外の【魔人】と化したカルマンによって惨殺されていた。捕殺すべくカルマンとの戦いに挑むキリコであったが、激しい死闘の末にカルマンに逃走を許してしまう。
一連の報告のためにファティマに帰還することにしたキリコは、その帰路の途中、教圏国の一国ジェノン王国に立ち寄る。そこは武力革命によって王権を簒奪した国王リンチ一世陣営と、それに叛旗を翻し、旧王家の再興をめざすリドウェル侯爵率いる【ジェノン革命軍】とが内戦を続ける争乱の国であった。旅船に乗るため王国最大の商都ライエンに向かうキリコであったが、そのライエンでは国王派と革命軍双方とが互いを殲滅すべく、それぞれ極秘の作戦を決行しようとしていた。
厚い黒雲に月星が完全に消えた一日の深夜、ついに革命軍が決起する。ライエン領主ギュスター伯爵の屋敷に滞在するリンチ王を討ち取るべく、リドウェル侯爵率いる革命軍が屋敷に襲撃をかける。邸内に潜伏している間者の手引きによって革命軍の兵士たちは国王の首を狙って邸内に突入したのだが、このときすでに革命軍の作戦はすでに屋敷側に筒抜けとなっていて、用意周到な待ち伏せの罠が革命軍の前に待っていた。すべては革命軍内部に潜在していた内通者の裏切りによるもので、その結果、伯爵邸内での戦いにおいて指導者たるリドウェル候爵が捕縛されるなど夜襲は失敗に終わり、革命軍は敗北したのであった。
襲撃に失敗し、リドウェル候爵以下革命軍の兵士たちは全員が虜囚の身となる。だが警備兵団屯所の地下獄舎に連行されようとしたとき、突然、伯爵邸の各所で原因不明の爆発が生じる。さらに混乱が広がる中、いずこより出現した武装集団によってリンチ王らは一転して窮地に陥る。身の危険を感じたリンチ王は爆発炎上を続ける伯爵邸からの避難を図るが、そんな王たちの前に覆面姿で正体を隠したキリコが立ちふさがった。そこに大将軍ガウエルも現れ、ついに両者の激突が始まった。