2話
どこだ、ここ?
意識を取り戻した時、俺は既に手当てをされた状態でベッドで寝かされていた。
救急隊か何かが病院に搬送してくれたのだろうか?
…絶対ない、とは言えないが多分違うだろう。
治安を司っているはずの警察があんな状態(≒ヤクザ)だとすると、救急隊が来て病院へ運んでくれたとは到底思えない(主に治安的な面や汚職的な面で)。
むしろ救急隊が病院へ運ぶ→人体実験or解剖…みたいな流れになっても驚かない。
冗談だと笑い飛ばせないところが恐ろしいが、あながち間違えでもない気がしる。
一体誰が…?
「ん?」
考えているともう1つおかしなことに気がつく。
体を起こしても痛みが無いのだ。
痛みが引いたとかいうレベルではなく、完全に。
肋骨とかその他諸々折れてたはずなのに、だ。
ますます訳が分からない。
一体誰が?
というよりは、どーやって骨折を治したんだ?
…何か此方の世界に来てから理解出来ることが起きていない気がする。
はぁ…。
「何がどーなってるんだよ…」
「起きましたか?」
「――!」
俺の何気ない一言に反応したのはさっきまではこの部屋には居なかったはずの1人の少女だった。
すらっとしたスレンダーな体つきに髪は肩にかかる程の黒髪、さらには意志の強そうな目。
身長は160弱で、年齢は俺より少し下ぐらいに見える。
表情は全くなく、どこぞの無口天才狙撃手のよう。
これだけだったら普通の美少女だ。
いや、普通ではなくて絶世の、かもしれないが。
それはともかく、彼女には1つ気になることがある。それは彼女の2つの丘(多分Cぐらいのお手頃サイズ)の横にあった。
樹脂製のショルダーホルスターに収められ、黒光りする世界最強の威力を誇る自動拳銃、デザートイーグル。
…あれ彼女の、だよね?
撃てんのか、あれ?ってか何で日本国内で自動拳銃なんかもってるの?
銃刀法仕事しろや。
…これって気にしたら負けなのか?
若干顔をしかめながら俺は尋ねる。
「ここは?」
「私、平井佳奈の部屋です。
それとこれはあなたの食事です。食べ終わったらそこに置いてゆっくりしていてください。」
と平井さんは事務的な連絡だけして行ってしまった。
お礼とかもいろいろ言いたかったのだが…。
今見た感じだと、嫌われてる…というよりは心を開いてないって感じたった。
そんなに俺って信用なさそうに見えるのか?
食事を食べてから少し休み、起きたときには既に夕焼けが広がっていた。
夕焼けがきれいなのは此方の世界も同じらしい。
そんな柄にもないことを思っていると昼間の美少女、佳奈さんがやってきた。
「…体調の方は大丈夫ですか?」
「えぇ。おかげさまで今はどこも痛くありません。
ありがとうございました。」
骨折した数日後の会話とは思えないが全ては嘘でない、正真正銘の事実。
…俺の中の常識は既に息をしていないようだ。
「いえ、私としても助けずにはいられませんでしたから。
それよりも今は1つお伝えしなければならないことがあって来ました。」
「俺に?」
「はい。今日の夜の会合へ来て欲しい、とのことでした。」
今の話から察するに俺の傷が既に治っているのは平井さんの仲間にも知れ渡ってるらしい。
そうでもなければ骨折した重傷者にそんなことを言わないだろう。
ちょうどいい。俺も此方の世界について色々と知りたいと思っていたところだ。
人気のないゴーストタウンのような街、民間人を集団リンチする警察、明らかに未成年である民間人の少女が隠そうともせずに拳銃(しかも見た感じだと使い込まれてる)を持ち歩いている状況…。
平井さんたちも聞きたいことがあるだろうが、此方も聞きたいことは盛りだくさんだ。
断る訳が無かった。
「分かりました。
その場所まで案内してもらえますか?」
「分かりました。こちらへどうぞ。」
さて。
この先は地獄への入り口か、それとも栄光への入り口か。
それはまさしく神のみぞ知ることだった。
平井さんに連れられて歩くこと5、6分。俺たちは会合が開かれると言う建物の前に来ていた。
会合の場にしては何やら酒屋みたいな建物で、騒々しい気がするのは気のせいだろうか。
平井さんの、
「あいつらまたやってるよ…」
的な視線も気になる。
平井さんって意外と苦労人?
などと思いっきり他人ごとみたいな考えを抱きながら、平井さんの後に続いて会合の場に入った。