1話
唐突だがこんな世界はつまらない、と思う。
何事もなく過ぎていく日々、何の緊張感もない社会…
都内の高校に通う2年生の彼、雛深亮はそれらのことに嫌気がさしていた。
そんな社会に対する不満の中で一番不満に思うことが「日本の」平和主義だった。
「はぁ…。」
別に彼は戦争がしたくて堪らないとか、日本を軍事大国にしよう、などと考えている訳ではない。
寧ろ日本が平和主義で良かったとすら思っている。
しかし、平和主義とはただ黙っていることではないとも思っていた。
例えば。
現状の法律では自国の領土であっても日本側からの武力行使は出来ない。
…なぜ自国の領土に他国の軍が侵入しても何も出来ないのだろうか?
やり返すというのは当たり前ではないのか?
それでは他国につけあがらせることになって、むしろ平和から遠のくのではないか。
そんなことを考えていると鬱な気分になってしまう。
ふと彼は考える。
嘘か本当かは分からないが、アメリカではいじめられた子供が拳銃を持ち出して反撃したと聞いたことがある。
流石にそれはやり過ぎだと思うがいじめられて、やり返しただけで問題になる日本とは大違いだ。
もし日本人の根底にやられたらやり返すのが普通だという習慣が根付いていて、それを実行する力を持っていたらどうなるのだろうか。
犯罪に走る者が増加するだろうか?
それともより強い抑止力となって今より良い社会になるだろうか。
そんなことを考えていると段々と眠くなってきてしまう。
寝てしまおう。
どうせ授業なんて聞く必要はないのだ、と。
そして彼が此方の日本(‥‥)で再び目を覚ますことはなかった。
次に俺がハッと目を覚ました時、辺りはすっかり暗くなっていた。
授業を聞いていたつもりが何時の間にか寝てしまったのかと思ったがどうやらそーいう訳でもないらしい。
と言うのも、周りの景色が明らかにおかしいのだ。教室に居たはずなのにも関わらず、今の俺はどこかの都市の裏道のような場所に仰向けになっている状態だ。
友人のイタヅラにしては手がかかりすぎだし、ドッキリにしては性格が悪過ぎる。
一体何が起きたんだ?
「ん?」
起き上がって辺りを見回してみると日本語で書かれた看板などが目に入る。
ということはここは日本のどこかの都市なのだろうか。
まぁ最初にやるべきは情報収集だな。
何せ現状では情報が少な過ぎる。
いつまでもこんなとこ居ないで、大通りにでも行ってみるか。
…この時はまだ想像すらしていなかった。
今までの平凡な日常が“終わり”、新たに異常な日常が“始まる”ということを。
「…ここは本当に日本なのか?」
暫く歩いて感じた感想としてはこれに尽きた。
最も違和感を覚えたこととしては街の規模と活気があまりにも釣り合っていないことだ。
ゴーストタウン…とまでは言えないが、それに近いものがある。
少なくとも日本の都市とは思えない静けさだ。
次に気になったこととしては、…
これは単に俺の思い込みかもしれないが青い服を着た人達とスーツ着たいかつい人達、つまりは警察と明らかな極道の人が多い気がする。
まるで抗争が始まる直前のような物々しさだ。
…本当にここは日本なのか?
「ん?」
と、そんなことを考えながら歩いていると肩をつかまれた……警察のおっさんに。
…あんまり警察にはお世話になるようなことはしてないんだが。
補導?職質?
そんな言葉が頭の中に浮かんでくる。
だけど彼らの発した言葉は俺の想像を遥かに超えていた。
「兄ちゃん今1人?
ちょっと顔貸せや?」
「…は?」
「は?、じゃねーよ。
黙ってこっち来いや。」
…俺は遂に耳が壊れてしまったみたいだ。
警察が顔貸せだとか言うわけg
「お前、俺の言ってること分かんねーの?
ただ、顔貸せって言ってるだけだろうが。
え?」
マジか。
思いっきり言ってました。
こいつら本当に日本の警察か?
某C国のだってもう少し良い質だろうに。
…と、まぁそんな下らないことを考えてる間に俺の周りには彼のお仲間が5、6人やってきてしまった。
最早反抗することは愚か、逃げ出すことすらできなさそうだ。
覚えのない世界に送られた直後に警察に絡まれるとは、中々のハードモード…ってかある意味無理ゲーである。
どーすんのよ、これ。
そっから先は俺が危惧した通りだった。
殴りと蹴りの嵐。
いや、嵐というよりは暴風と言うべきか。
とにかく容赦なかった。
20~30分ほど続けてから奴らは俺の財布だけ勝手に取って去っていってしまった。
すぐにでも追いかけてやり返したいが、暴風の影響で胃の中が空っぽになるまでやられた直後だし、何よりも肋骨が何本かポッキリといっているようだ。
これでは臥しているので精一杯だった。
そしてあまりの激痛に意識が朦朧としてくる。
俺の記憶はそこで一度途切れた。
前作がいろいろと問題あったので新しいの作ってみました。
生暖かい目(!)で見守ってください。