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異世界で自助努力に徹してます。  作者: 極楽とんぼ
日常生活へ

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帳簿の付け方(7)

「複式簿記と言うのは面白いですね。

 どんぶり勘定されるとどうしようもないので製造能力とか商品の在庫の動きと言う大雑把な指標で課税してきましたが、それに問題があると言うのは以前から言われていたんですよ」

 カルダールと商業ギルドの二人組に複式簿記の説明をした数日後、定例のお茶で雑談している時にカルダールが課税と会計記録に関して話し始めた。

 あれから色々と彼の方でも受け取ったサンプルを見直してきたらしい。


「ちなみに貴族とかの領地の収支報告はどうやっているんです?」

 税金的にはあっちの方が職人や商人よりも圧倒的に大きいだろう。


「あちらも大雑把に言うと例年の収穫に基づいた収穫見積もり量に割合を掛けた数字になりますね。

 嵐や旱魃で収穫が著しく悪かった場合は領主が国に申請して、派遣された役人が状況を確認してそれを許す事もあります。

 まあ、数年以内の収穫がマシになった年に補填する事を求められますが」


「こう、洪水で川にかけた橋が流されたとか、山賊が流れてきたか何かで居ついて退治にお金が掛かった場合は?」

 元々治安用の人員はいるだろうが、隠れた場所に住んで旅行者や商人を襲う族を探し出して討伐するとなると、通常の治安を任せるために外部の人か予備兵的な存在にお金を払う必要があるし、戦闘で怪我人や死者が出た場合も治療費や弔慰金を払う必要が出てくるだろう。


「ある程度はそういった治安用に資金を備えるのが領主の義務ですが、外的要因がある場合などは国から補助金が出る事もありますね。その場合は状況を調べるために領地に調査が入るので、補助金の申請を嫌がる領主も多いですが」

 カルダールが言った。


 確かに、領主が税金を搾り取り過ぎて住民が離散して山賊になった場合は国が補助金を出すのもどうかな〜って感じだよね。

 それで税金を過剰徴収しているのがバレたら領主にも制裁が課されるだろうから、ヤバい事をしている領地は何も言わずにひたすら領民を痛めつける方向に動いちゃいそう。


 まあ、それはさておき。

「領地運営にも複式簿記を導入すると面白いとは思いますが、取り敢えずは小規模に街中の商人や職人相手にテストケースとして補助金を出して広めさせてみたらどうです?

 商業ギルドにも協力させたら王都だけでなく他の街でも導入しやすくなるかもだし」

 まあ、商業ギルドはメンバーの情報をギルドが抜きやすくなるから、ギルドの幹部を占める豪商がより有利になる可能性もあるけどねぇ。


 複式簿記を義務化する流れになる場合は、情報をギルドの幹部が悪用出来ないようにする規制も作った方が良さそう。


「そうですね。

 領地持ちの貴族に関しては、複式簿記をやった際に集まる売掛金や買掛金と、固定資産及びそれらの将来的な修繕や買い替えに必要な見積り金額の情報などを収支報告に追加して提供するように通知を出してみましょう。

 それに暫く苦労させてから、複式簿記のやり方を見せたら喜んで自発的に導入すると思います」

 にっこりと微笑みながらカルダールが言った。


 意外と腹黒だね〜。

 でも確かに、複式簿記を導入しろって上から命じるよりは、領地の経営状況を正確に把握する為に掛け金状況と固定資産の将来的に出費に必要な積み立て金額を提出せよとだけまず命じる方が貴族達も大人しく従いそう。


 ◆◆◆◆


 と言う事で。

 領主持ち貴族への指示はまだしも、都市部での職人や商人に複式簿記を導入させる補助金制度設計について、商業ギルドと王宮の人間の話し合いに駆り出され、何度も研修モドキを行う羽目になった。


 元々日本では学生時代にダブルスクールで資格試験の勉強を頑張り、卒業後に資格を無事獲得して公認会計士として働いていたのだが、あれって人がやった会計処理にイチャモンを付ける職業だから、実務的な知識ってあまりないんだよねぇ。

 試験勉強での知識や、監査の仕事先で一緒だったマネージャーが顧客に業務改善の提案をしていた内容をなんとか思い出そうと頭を絞ったが、元々担当したのは金融機関系の監査が多かったのだ。

 マジで売掛金も買掛金も製造原価計算も仕掛品評価も、試験勉強でしか経験してない。


 こっちの世界の人よりは知識があるとは言え、かなり冷や汗をかきながら適当に質問に答え、『社会によって色々と規範が違うので私の世界の制度をそのまま導入するのが正解とは限らないでしょう。私も研究職だったので会計のことなんて学生時代に学んだ程度しか知らないですし』と言って誤魔化した。


 と言うか。

 こっちに来た時点で魔道具の研究者だったって言ってあったんだから、会計に関してあまりにも専門的な知識があったらおかしいよね??

 そう思い至ったので、試験勉強の時の参考書を調べるのは辞めて、皆で話し合いましょうと言う方向に話を持って行った。


 第一、制度設計も外部や上から押し付けられるよりは、自分たちで色々と問題点を話し合って対応策を考えて行く方が、やる気も起きるだろうし今後問題が起きた時に自力で解決できる。


 私にいつまでも相談されても困るんだよ。


 会社の財産の現状やお金の流れ、および損益が分かりやすいと喜ばれたが、税務署の調査員も損益が分かりやすくなるってそのうち気付いて、商業ギルド側の人間はやっぱ昔の制度に戻ろうと言い出すんじゃないかなぁ。

 まあ、五分五分ってところかな?

 正直者な商人がどのくらいいるかによるんだろうね。


 まあ、あまりにもどんぶり勘定だとイラッとするし、自分の出資先やお気に入りの店がそれだと心配だから、こっちの世界の人達が自発的に複式簿記の良さを認めて導入しようと考えてくれたのは有難いけどね。


 取り敢えず。

 会計処理に関するアレコレが終わったら、ちょっと農協(農業ギルド)の人と話をして、ジャガイモとか米とかの作物探しと、温室栽培を誰かやらないかの相談をしたいところだね。


 やっぱ食生活も日本から転移でかっぱらうよりもこっちで入手して満足できるレベルにしたい。

 味そのものは悪く無いんだけど、やっぱ時々米とか、フライドポテトとか、食べたくなるんだよね〜。

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