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異世界で自助努力に徹してます。  作者: 極楽とんぼ
日常生活へ

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帳簿の付け方(6)


 カルダール(副宰相)に複式簿記を見せて説明することになったら、それが伝わったらしく商業ギルドの人間もいつの間にか同席する事になっていた。

 まあ、割引とか減税を求めるなら国と商業ギルドの両方で一気に動いてくれる方が楽だから良いんだけどね。


 カルダールは一人で来たが、商業ギルドからはアティクと言う中年女性とケルベンと言う若い男性が来た。

 アティクが上司かと思ったが、態度的にはケルベンを上に立てているので、有力な豪商のお坊ちゃんで商業ギルドの幹部候補生ってやつなのかな?

 王宮ならまだしも、商業ギルドまで血縁で上が決まると言うのは嫌な感じだが。



「製造をしていない、売るだけの商人や、その日のうちに作り終わる食べ物を提供するところはこんな感じですね。

 製造業の場合は仕掛品の評価基準を大雑把にでも決めておいて、どの程度終わった物だと幾らの価値があるって基準にそって完成していない製品の価値も棚卸しの際に在庫管理する事で、過剰に仕掛品を持っている場合なんかは作業の流れを考え直すとかの一助になるかも?」


 シャルノの帳簿をサンプルとして会計処理と期末の減価償却や棚卸しの流れを説明した後に、原価計算系の話も付け加えて取り敢えず説明を終えた。


「なるほど。

 生産能力ではなく、実際の利益をきっちり把握できるのですね」

 カルダールがちょっと嬉しそうにコメントした。

 これで税金が増えたりしたら商店街の皆さんに恨まれそう。


「製造能力があっても体調が悪かったり競争相手が増えたりしたせいで売れなくて儲からなかったのもしっかり数字に出ますから、現状が分かりやすくはなりますね。

 あと、ツケでの販売が多い場合は売掛金の回収率を客層ごとに経験値的に評価して貸倒引当金を立てておくと無難でしょう」

 まあ、それでも大きな取引相手が突然破綻した時の巻き込まれ破綻は防げないだろうが。


 だが貸倒引当金ってコンセプトがあってそれを定期的に見直していたら、どの客が売掛金の支払いが遅れがちになっているかが明確になって、そっちに売り過ぎないように注意出来るかも?

 他が売り渋る様になったから高く買うと言われても、最終的に売掛金が全部貸し倒れたら莫大な損害になるのだから、そう言うヤバい客はこちらも売るのを極力減らして行く方が安全なんだよねぇ。


 何か画期的な試みをしているせいで一時的にキャッシュフローが悪いってだけなら良いけど。

 噂が噂を呼び、誰も売掛販売してくれなくなったせいで倒産なんて事が起きたら困るけどね。ネット社会じゃないから、そこら辺は取引相手に会ってしっかり説明すれば風評被害からの痛手は防げると期待しよう。

 第一、ヤバそうな取引先を切る動きは今までだって普通にあっただろうし。

 ある意味、そう言う噂や取引先の経営状態を気にしないうっかり屋さんが、引当金の金額を定期的に考える事でヤバい所への売り上げと売掛金を無防備に増やして巻き込まれる被害を減らせるかも?


「貸し倒れの損失を事前に利益から引くのですか?

 でも、踏み倒されると分かっている相手に売ったりしないですよね?」

 ケルベン(若いの)が怪訝そうに聞いてきた。

 アティクはありゃりゃ〜と言う顔をしているから、もっと現実がわかっている様だ。


「確かに確実に潰れると分かっている相手には売りませんが、徐々に経営が悪化している場合なんかには、普通に今まで通り、取引を続けますよね?

 例えば毎年20ヶ所の取引相手と取引をしていると、一つぐらいがどうしても商売が立ちいかなくなって夜逃げすると言うのが経験則な場合だとした場合。大体の平均値を使って売掛金の20分の1でも、もっと少ない金額でも良いですが最終的に回収できないであろう金額として将来的に想定される損失分を使わずに避けておくことで、後で誰かが夜逃げしてツケを回収し損ねても、こちらがそのせいで他の支払いが出来なくて連鎖倒産するような羽目にはならないで済む可能性が高くなります」

 ちょっと資金繰りが厳しくなったから、即座に取引はニコニコ現金で!なんて言っていたら商売は続かないし、周囲からも嫌われるだろう。


 そこら辺の兼ね合いも含めて、貸倒引当金でリスク管理をするのだ。


「でも、それだったら貸し倒れ率をぐっと高めに見積もっておけば、利益が少ない様に見せかけて税金を避けられるのでは?」

 カルダールが指摘した。


「まあ、そうですね。ですから貸倒引当金の割合が現実に即しているかは、定期的に見直す必要はあるでしょう」

 国税局がそこまで口を挟む暇があるかは知らないが。


「貸倒引当金が多過ぎたら戻して利益にする?

 だとしたら、貸倒引当金の増減で利益を操作出来ますね」

 アティクも指摘した。

 お、鋭いね〜。

 確か日本ではそこら辺は税法上と会計上で扱いが違って、税法上は大企業は損金参入が認められてないんだよねぇ。

 中小企業は業種別に法定の引き当て率が決まっていて、現実でそれよりも大きかったら実際に貸し倒れした時に損失を認識せよって流れな筈。

 仕事では税務会計はあまり細かいところまで見てなかったから、もうよく覚えてないが。


「国で典型的な業界ごとの引き当て率を算定してそれを暫定的に使わせるか、商会や店毎に過去の貸し倒れ実績から計算させてそれを抜き打ちチェックするかですかね」


 カルダールが喉払いした。

「まあ、税金を新しい会計方法に基づいて取る方法に変えるとしても、この貸倒引当金と言うのは事業主の参考用な金額というだけで、税額の計算に用いる利益の金額を未来の不確定な損失にそなえて減らすのはないでしょうね」


「う〜ん、だとしたら、せめて損失が後から確定したら売掛金が回収し損ねる想定で納めた税金の還付が可能な様にしないとですね」

 じゃなきゃヤバそうな取引先には即金取引を求めるところが激増して、破綻する店や事業は激増しかねない。


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