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062 異世界版遠距離通信(6)

実は初の戦闘シーン?

視点は主人公に戻ります。

牧草地にもなれそうな野原の上を、デニーシャが歩いていた。


バルルーシアからのフライトで分かったのだが、この世界は使われていない土地が多い。

街や村の外は畑や牧草地ではなく、森や野原が続いていた。


ある意味想像通りって云う奴だけど。

魔物の脅威がある為、どうしても対魔物保護結界の範囲内で生活しようとするから人間が固まってしまうのだろう。



まあ、生産性の低さも有るんだろうけど。

魔術院の方はもっと保護結界を張る余裕はありそうだから、人口が増えて村を増やしていくことは可能なはずだが、生活圏を広げることにコストがかかる為、低い目の人口密度と土地利用の状態で停滞している。


ここら辺も、荒野と云うよりは普通に牧草地と言われても信じそうな感じに青々としている。

......とは言え、それなりに土地が豊かだったら森になっているんだろうから、大きな木を育てられるほどは栄養素がないのかな?


ま、それはともかく。


朝食の後、村から北に向かって進んできたのだが、ここに到ってデニーシャが空飛ぶ絨毯から降りて地面を歩きはじめた。

『呼んだらすぐに私を拾って』と言いつけて。


直接地面に触れながら歩いている方が、魔物の巣を見つけやすいのかな?

何でも今回の魔物は地面に巣を作る群集タイプで、放置しておくと数が増えてやっかいらしい。

既に発見されてからそれなりに日数がたっており、村長が心配していた。


デニーシャは心配どころか嬉しそうだったけど。


で。

野原を歩く美女が一人。


斜め後ろからゆっくり着いて行く空飛ぶ絨毯。


......後、どれだけ歩くんだろ?なんて思っていたら突然、

『ピー!!』

という口笛のような音がした。


音源の方をみると、何やら、大きなリスみたいな生き物がいた。

柴犬サイズの。


一見可愛いのだが、柴犬サイズで大きな歯を見せつけながらこちらを睨んでいる姿はちょっと怖い。


どうなるのかと思っていつでもデニーシャを拾えるように構えて待っていたら、デニーシャが魔術を放ち、その生き物を吹っ飛ばした。


おお~。


飛ばされた生き物の尻尾は、リスみたいなふわふわ毛皮ではなくアルマジロの肌みたいな、ぶっとい上に頑丈そうな鎧タイプだった。

あれで叩かれたら、痛いかも。


『ピー!』

『ピピー!』

『ピー!』

どこから涌いてきたのか?!と聞きたくなるほど、突然地面のあちこちから先ほどの魔物(なんだろうね)の仲間が現れて警告音を出し始めた。


うわ~。

群集タイプと言っていたが、本当に群れてる。


物凄い勢いでこちらにワラワラと近づいて来るのを魔術でぶっ飛ばしながら、デニーシャが合図に私に左手を伸ばした。

物理的に勢いよく押しているだけなのか、飛ばされた魔物は直ぐに置き上がってデニーシャの方へ殺到してきている。


「よいしょ!」

勢いを付けて(ついでに魔術の補助も使い)デニーシャを空飛ぶ絨毯へ引き上げ、少し高度を上げた。


どん!

一瞬、空飛ぶ絨毯が揺れた。

どん!

どどん!


うぎゃ~~!


何事かと思って下を覗いたら、リスモドキが次から次へとジャンプしながら尻尾でこちらを攻撃してきてた。


「結界の上も閉めておいて!」

デニーシャの言葉に従い、結界を封じ、少し高度を上げる。

距離がありすぎると魔術の威力が落ちるのであまり上空へ行かず、3メートルぐらいの高度を維持してくれと言われたが、これで我々は安全なはず。


取り合えず、今見る限りでは空飛ぶ絨毯の上までジャンプしてくるほどの跳躍力は無さそうだけど、魔物だからね。


油断していて絨毯の上に飛びこまれたら......怖い。


バリバリバリ!

今度はデニーシャの反撃。

雷性の術なのか、小さな電撃が何本も宙に現れた魔法陣から地面へ向かって放たれて、魔物を直撃している。


どうやら保護結界の中から攻撃魔術を放つと云うのは最初から想定内だったのか、空飛ぶ絨毯の中からでも問題なく魔術を通せるようだ。


ま、そうだよね。

折角保護結界の中にいるのに、危険な外に行かないと攻撃できないんじゃあ馬鹿みたいだ。


何度か雷撃を下したあと、何やら手元のノートに書き込む。

「北へ10メートルぐらい進んで」


「了解」


さっきのところは既に下は魔物の死体だらけだったのだが、10メートル進んだらまた大量に魔物が出てきた。

一体どれだけの魔物が住んでいるんだ?


「それ!」

今度のデニーシャの攻撃魔術は、氷系のようだった。

氷柱の様なものがいくつも地面へ向かって(というか、魔物へ向かってだよね)放たれる。

上空から放たれていることもあり、それなりの勢いがあるから当たれば魔物は串刺しだ。

でも、追尾機能はないのか、外れているのも多い。


さっきの雷撃ではm地表の上に攻撃態勢で背伸びしているっぽかった魔物たちに雷が寄っていく感じだったが、今度の氷柱はまっすぐ進むだけなのでちょっと攻撃の成功率が低い目な気がする。


それでも、デニーシャが何度か術を放ったら下は死体累々だったけど。



何度か術を放っては移動、また放って移動......と云う感じに色々な術を試しながらデニーシャがバスケットコート2個分ぐらいの広さの範囲を掃討し終わったのは1時間後ぐらいだった。


途中で魔力補給の為に魔石を使っていたが、それでも大したスタミナだ。

1時間も術を使い続けるなんて、私だったら魔力がもっても精神力が尽きる。


「この魔物ってなんて呼ばれているの?」


「プレリーデモンと呼ばれているわね。地方によっては違う名前で呼んでいる所もあるようだけど」

地面に降りて死骸を調べ始めたデニーシャの後をついて歩きながら周りを見回す。


襲ってくる時は怖かったけど、動かぬ死骸になってしまうと、何とはなしに哀れになってくる。

まあ、近くから良く見てみると齧歯類と云うよりも明らかに肉食もするっぽい牙があり、見た目ふわふわな毛皮の下は尻尾と同じアルマジロもどきな鎧みたいな肌に覆われていて、可愛いなんて思って油断したらとんでもない事になりそうだけど。


「......消えて無くならないんだね」

ゲームだったら魔物を倒したらすーっと死骸が消えて無くなり、お金やドロップアイテムだけが残るのだが......流石にファンタジーな異世界でもそこまで都合よくはいかないらしい。


「何が?」


「え~っと、私の国には魔物って殆ど見かけないんだけど、そのせいか魔物を倒すと魔石だけ残って死骸は消えてなくなるって云う都市伝説みたいのがあったのよね」

うう、恥ずかしい。


声に出して呟くつもりは無かったのだが、大量の死骸と血に少し動揺していたようだ。


「変異タイプや発生タイプだとそう云う事もあるらしいわね。

逆に、魔力の密度が高いタイプの魔物だったら魔力を抜いておかないとまた直ぐに魔物が発生しちゃうし。

でも、プレリーデモンは繁殖タイプだから放置しておいても地に戻るだけよ」


ほおう。

自然の魔力が淀んだ場所だと魔物が発生しやすいと聞いたが、場合によってはゲームの魔物の様なの消え方をする事も無きにしも非ずなのか。


しかし。

「こいつ等が普通に繁殖して増えていくなら、普通に動物なんじゃないの? 魔物って定義はどう決められるの?」


何やらノートにメモを取っていたデニーシャが顔を上げて、少し頭を傾けた。

「そうねぇ。あまり考えた事は無かったんだけど、繁殖力とか凶暴性とか回復力が普通の動物から一線を画していると、魔物って呼ばれるわね。

例えば、このプレリーデモンももう二周りぐらい小さくなるけど、そっくりな動物がいるのよ。

プレリードッグって呼ばれていて、巣の形と何かがテリトリーに入ってきた時の警戒音はそっくり同じなんだけど、あっちは巣に逃げ込むだけなのに対して、こちらは襲ってきて侵入者は餌になってしまうのが違う。

繁殖も、プレリードッグだったらこのサイズの巣になるのに5年はかかるけど、このプレリーデモンは8ヶ月程度でここまで増えた。

なまじプレリードッグを知っているからこそ、プレリーデモンは魔物としか見えないのよね」


なるほど。

ある意味、核実験のせいでイグアナか何かから変異したと云う、初代ゴジラみたいな物なのね。


あのゴジラは子孫を残す前に殺された(と思う)が、もしも卵を産んでいたらその子孫も『イグアナ』では無く、『怪獣』として退治されただろう。


「いつもこんな感じなの?」


「魔物退治? そうね、今回は安全な上空から攻撃できたから楽だったわね~。ありがと」


どうやら、これだけ沢山魔物が繁殖しているのは特に珍しいことではないらしい。

「これって巣の中に残っている分はどうするの?」


シロアリ退治と同じで、家に出てきている害虫(害獣)だけでなく、卵や仔も殺しておかなければまた同じことになるんだろう。

8か月でこれだけの数に増えるとなれば、根絶させておかなければまた巣になる。

まあ、子供しか残っていなくて飢え死にするかもしれないけど。


プレリーデモンの仔を食べるような天敵っているんかな?


「そうねえ、普段は氷結魔術を地面一帯に施すんだけど、折角空を飛べるんだから後で調査が終わったら大規模地壊魔術を試してみようかしら」


「......巣まで潰せるようなそんな術があるなら最初からそれを使えばいいのに」


何を言うか、と言うかのようにデニーシャの目が丸くなる。

「研究成果を試す為に来ているのよ、私は。使い場所も魔術師も選ぶような潰しの効かない大規模地壊魔術なんて使っちゃったら勿体ないじゃない」


勿体ないですかぁ。


流石研究者。

魔術院の研究者の中では比較的常識的な人だと思っていたが......やっぱりどこか突き抜けてる。


ま、いいけど。


◆◆◆



その晩のカルダール君への私の連絡。

『攻撃魔術と云う物を始めて間近に使われているのを見ました。怖いですね』


『ある意味、魔族という存在が現れたのはこの世界にとっては幸いなことだったのかもしれませんね』

との返事がきた。


本当に。


ちなみに、遠距離で使っても遠距離掲示板は意外と魔力の消耗も激しくなく、文字もはっきり見える。

これなら商会に売りつけるのは上手く行きそうだが......自治体用のはどうするかなぁ。

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