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005 下準備

さて。

これが日本だったらネットでちょっと検索するとか、図書館で新聞に目を通すとかするところなんだけど。


この何とはなしに中世風な世界では新聞が存在するのかすら怪しいところだわね。


だとしたら、情報源は生きた人間しかない。

だけどドアの外に立っている衛兵の人に質問してもろくな返事はくれないんだろうなぁ。

それに、疲れてお偉いさんと話をする気力すらありませんって言って皆を追い出したのに、元気一杯に質問をしまくったら怪しまれるだろうし。


となったらここでも便利な魔法に頼るしかない。

『読心』で検索。

色々出てきた。

『表層意識を読む術』......う~ん、こっちが質問することで表層に上がってくる意識をそれなりに操作できるならまだしも、こっそり調べるには向いてなさそう。

『心の中身を取り出して記憶媒体に移す術』......なんか、これって相手が廃人になりそうな気がするのは気のせい??

『意識の無い人間の記憶を読む術』

お!これがいいじゃない。


さて。

さっきお偉いさんたちが部屋を出て行った時に聞こえた指示によると、ドアの外で番をするように言われたのは2人。

だとすると突然一人が寝ちゃったらもう一人に起こされるだろうし、2人とも爆睡していたらちょっと怪しいだろうねぇ。


『意識をぼーっとさせる』

こんな言葉で大丈夫か分からないがとりあえず検索。

なにやら術が出てきた。


とりあえず、ドア越しに二人にかけようとするが......イマイチうまく焦点が合わせられない。

ふむ。見えないって言うのはハンディが大きいようだ。


レントゲンみたいな感じでドア越しに相手を感知できる術ってないんかしら?


流石に術に『レントゲン』というものがあるとは思えないから、今度は頭の中の検索機の見出しを使ってみることにした。


『医療』→『検査』

なになに。

『毒の探知』......物騒な。もっとも、しばらくは食べ物は口にする前に一応掛けておく方がいいかもしれないけど。

『病巣の発見』......なにこれ、便利そう。治療って何が原因か見つけるのが一番難しいらしいし。とは言え、病巣を発見したところで治療できなきゃ意味無いんだろうけど。魔法での治療って言うのがどの位強力なのか、今度調べてみないと。

『生体オーラの観測』

お!これでどうかしら?


生体オーラって多分生体エネルギーのことよね?

だとしたらドア越しに適当に術を掛け捲れば相手にかかるはず。


扉のそばに立ち、魔術を実行する。

......扉の向こうには何もかからなかった。

この術って自分にかける術だったのね。

とりあえず、ドア越しにも2人の人間のオーラらしき物が視えるようになったからこれでいいんでしょう。


では、再度『ぼーっとなる術』を実行だ!

おっと、その前に。

詳細条件で解除条件もつけとかないと。

『解除条件:半径2メートル以内での音声もしくは物の動き』

う~ん、この後眠ってもらうつもりだから目をつぶっている時に物が動いているのは見えなくてもこの条件って大丈夫なのかな?

ま、声をかけられるまでぼーっとしていましたっていうのは許されるでしょう、きっと。


ということで実行!


今度はちゃんと相手のオーラ見ながらやったお陰か、術が発動した。

2人の頭部のオーラがうっすらと輝きが鈍る。

ふむふむ。

では次に眠らせるか。


......でも、眠ったら倒れるでしょうね。

電車のつり革に捕まっていたって寝ちゃうと倒れることが多いんだから、どこにも寄りかからずに立っている2人はまず確実に倒れるだろう。


何か動きを止める魔術はあるんかしら?

『物体 静止』で検索。

色々出てくる。

『全ての動きを禁じる結界』....う~ん、全ての動きって下手したら血流とかも止まりそうで怖いな。

『目に見える物の動きを禁じる術』....いや、何にも見えてないし。

『状態の維持』....これも血流止めないかなぁ。詳細条件でサイズ指定出来るかな?


『状態の維持』の術の詳細条件に集中する。

解除条件:半径2メートル以内での音声もしくは術者の解除意志

その他:作用範囲大きさ20センチ以上の物

でどうだ?!


とりあえず実行。

これでオーラがヤバそうな感じになったら直ぐに解除しよう。


脈拍を測りながら3分ぐらい待つ。

......とりあえず、大丈夫そうかな?別にどこの生体エネルギーも変に色や明るさが変わっている感じじゃないし。

じゃ、次に睡眠の術。


......ちなみにこう言うのって重ね掛けしても大丈夫なのかなぁ?

ぼーっとさせているのって一種の酩酊状態だと思うんだけど、酒と睡眠薬って混ぜたら不味いって読んだ気がする。


生体エネルギーを視ていれば具合が悪くなったら分かるだろうから直ぐに声を出して解除させることは出来るとして、もしもの時に治癒の術も掛けられないと。

とりあえず、どんなのを掛ければいいのか直ぐ分かるように先に検索だけ、しておこう。


『骨折の治療術』

『毒の後遺症の治療術』

『高熱の治療術』

『百日咳の治療術』

『肺炎の治療術』

『全ての体調異常を治療する術』

等々......。


治療で術を検索したら大量に出てきた。

これって本当に効く治療なのかね?

百日咳と肺炎とで治療用の術が違うって何とはなしに怪しげなんだけど。

そりゃあ、実際にウィルス(だよね、細菌ではなく?)を直接アタックする抗生物質のような術なら病気の種類によって術が変わるだろうが、そうじゃなかったら単に免疫力を上げて、炎症が起きていたらそれを抑えるとかいう程度じゃないの、治療って?

それとも魔法ってウィルスレベルまで視える程精度が高いんだろうか。


......とりあえず、病気に対する術は免疫力を上げるといった物以外はあまり使わないようにしよう。

それこそ、『実験です』と知らせた上で下町かどっかの貧困層が住んでいるあたりで生体実験してみるのも手かもしれない。

治療用の術として存在するんだから悪影響は無いだろう。多分。

よく見張っておいて悪化したら免疫力を上げる術を掛けて掛けて掛けまくれば命は助かるだろうし。


......下手したらアトピー性皮膚炎とか起こしそうだけど。

中世ちっくなこの世界だったらそんなにデリケートな現代人病にかかる素養のある人は少ないと思いたいところね。


う~ん。

とりあえず、ぼーっとする術と睡眠の術を掛けてヤバくなったとしたらちょっと生命力を上げるような術があればいいかな?なんか『全ての体調異常を直すっていのも眉唾な気がしてきた。

本当にどんなときでも効くのか、真剣にマジで生体実験してからじゃないと使うのが怖い。


ということで今度は『生命力向上』で検索。

『生命力を上げて怪我の治癒を早める術』

『生命力を上げて筋力を上げる術』......これってなんか生体兵器でも創るっぽい気がする。(汗)

『生命力を上げて寿命を長らえる術』......生命力を上げたら早く燃え尽きないんかしら?

『他者から生命力を受け取って生命力を上げる術』!!なにこれ!!!ヤバすぎ。


ううむ。

微妙に思っているのとは違う気がする。


『気つけ』で検索してみよう。

本当は気つけ薬みたいのとか、それこそ心臓停止した時に映画とかで注射しているニトログリセリンかなんかが欲しいところなんだけど。

『覚醒を促す術』

う~ん、これでいいか。

とりあえず意識がはっきりしたら体調が危なそうだったら医師のところに行ってくれるだろうし。


さて。

この術をいつでも実行出来るようにしておきたいんだが。

最近のエクスプローラーの様にタブを増やせないか集中してみる。

暫くジタバタしていた結果、頭の中の検索スクリーンが2つに分かれた。


タブをどんどん増やせる方が都合がいいんだけど、とりあえずスクリーンを割れる数だけ術をキープ出来ると言うことかな。


では!

次は睡眠の術。

これも解除条件を『半径2メートル以内での音声および術者の解除意志』と設定して、まずは右側の衛兵にかける。


うん、頭部のオーラが更に薄まった。


うっし。

では『意識の無い人間の記憶を読む術』を実行。


急に、声が聞こえ始めた。

いや、声というか心の声?

何だこの術って相手の記憶を読むって言うよりは聞くの?

まあいいんだけど。


ええっと。

『魔物や魔族の脅威は危険なレベルまで上がってきている?』

質問を相手の心に投げかける。

『魔物や魔族はいつでもいる。爺さんの時代からそうだし、これからもずっとそうだろう』

ふむ。あまり危機感は無いみたいね、この人。

『どのくらいの死傷者が出ているの?』

『そこそこ?』

『個人的に知っている人間に出ている被害は?』

『ハミールが死んだ。イシャータも怪我をして帰ってきた。従兄弟の妻の弟夫妻もキャラバンが襲われて死んだらしい』

う~ん、それなりに被害は出ているけど、軍人のこの人が知ってる死傷者がこれだけしか居ないってことは予想以上に状態はいいみたい?


『何故勇者召喚が行われた?』

『ファディル殿は魔術師の地位向上を狙っていると部隊長殿は言っていた』

ふむ。もしかして魔術師ってこの魔物・魔族相手の戦いにあまり役に立っていなくって地位が社会的地位が下がっているのかな?

単なる政治的手法として勇者召喚をしているんだったらますます私が戦場に出る必要は無さそうね。


『ファディル氏の人柄は?』

『政治的手腕の方が魔術の腕よりもいいという噂』

おやおや。

『宰相は?』

『腹黒』

ははは。

でもまあ、腹黒のほうが善良で無能な政治家よりも国の為になる場合もある。

『エッサム氏が私腹を肥やしているっていう話は?』

『元々エッサム家は代々宰相の地位についてきた家系』

だから金持ちっていう話なのかな?でも金持ちで権力持っていても更に金と権力を求める人間も多いと思うよ。日本の政治家なんてウン億も資産を持っているのに更に私腹を肥やしているようだし。

『エッサム氏は国にとって有害それとも有益?』

『・・・有益?』

何故か疑問符付き。

まあ、兵士はあまり政府の人間が国にとってプラスかマイナスかなんて考えないのかな?下手に考えすぎるとクーデタとか起こしかねないし。


『軍のトップは?』

『カシブ上将軍、ラタフィス近衛将軍、マシュラン元帥』

何故にトップが3人もいるんだ??

『カシブ氏の役職と人柄は?』

『国軍の上将軍。戦場で戦うことの方が書類相手に格闘するより好きらしい』

おやま。筋肉バカですか?


『ラタフィス氏の職務と人柄は?』

『近衛の将軍。貴族の中の貴族』

うう~ん、貴族の中の貴族って人柄としてどういう物なんだろう?とりあえず庶民たる私とはあまり合わなそう。


『マシュラン氏の職務と人柄は?』

『元帥。タヌキ』


ううむ。

3人の関係が分からん。

『国軍と近衛と元帥の職務はどう関係するの?』


『近衛は王からの勅命があった場合は国軍に命令する権利がある。だけど勅命が無い場合は王宮の中でのみの存在。国軍は国の防衛を担う。元帥は戦争が起きたら二つの軍をまとめて指示する』

なるほど。


『今、この王国ってどこか他の国と戦争を起こしそう?』

『爺さんの時代から戦争は殆ど無い。戦争をやっていると魔族に攻め込まれる』

なるほどね。

もしかして、バリーナが言っていた、『魔王にも役割がある』って人間の国同士の戦争への抑止力っていう意味もあったりするのかな?


『国王って直接統治しているの?それとも宰相が主で国王は飾りもの?』

『国王は神に任じられた国の主だ!飾りのわけが無い!!!』

おや。

随分と強く信じているのね。

これって昔の日本人が天皇を生き神だと信じていたのと同じような、『子供の頃からの教育による洗脳効果』なのか、それとも本当にそれだけ国王が王として有能なのか、どっちなんだろ?


『国王って商人とか魔術師とかとも直接会って話を聞いたりするの?』

『する』


う~ん。微妙にどうやって質問したら国王がそれなりに話せる有能な人間なのか避けるべき人間なのか判断できるのか分からん。

まあ、有能じゃなくっても話せる、騙しやすいタイプというケースもありうるけど。


『国王って意思決定する際に人からアドバイスを求める?』

『それが宰相と大臣の役割だ』


駄目だこりゃ。

衛兵ってもう少しどのように国が機能しているのか中枢部分を見聞きしているかと思っていたんだけど。

まだ若いのかな、この人?


とりあえず諦めて術を解除した。

次にもう一人にもプロセスを繰り返す。


こっちの方がベテランなのか、もう少し情報があった。

『国王はまだ若くて新しいもの好きだが、そのうち落ち着くだろう』というのがこの人の王に対する評価だった。

別に若くて新しいもの好きが悪いことではないと思うけどな。

こっちのベテランさんは少し年が行き過ぎて頭が固くなってきてるのかも。


まあ、周囲への影響をちゃんと考慮せずに新しいことを試すのは軽率だけどね。


ちなみにベテランさんの宰相の評価は嫌ってはいたけど悪くは無かった。嫌いながらも評価が出来るなんて、意外とこの人しっかりしている人なのかも。大抵嫌いな人間って見下そうとするのが人間だからね。


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