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040 買い物(雑貨屋)

生クリームを付けたカカオパンとお茶をゆったりと楽しんだ後、雑貨屋へ行ってみた。


『雑貨』と云うだけあって、色々雑多に品ぞろえしている。

しかも薦められただけあって、アルタ雑貨店は中々大きい。

一フロアしかないものの、日本のスーパーマーケット並みのサイズはありそうだ。


色々いいモノが揃っていると言われて、一体雑貨店とは何があるのだろうかと密かに楽しみにしていたのだが、本当に色々揃っている。

とは言え、日本だったら定番(と勝手に私が思っている)のトイレットペーパーとティッシュの箱は積んでなかったが。

ある意味寂しい発見だった。


まず目に入ったのは、バケツ。

というか、桶だ。

この世界は当然プラスチックなんてモノが存在しないから、木なんだよね。

木の桶で、それなりに重さがある。

もう少し奥を見ると、錫とか真鍮のバケツもあった。

思わず手が伸びかかったが、止めた。

部屋に既に一つ置いてあるし、お風呂場にもあったし。

必要ない。

いくら『大草原の少女ローラ』ばりに素朴な見た目に心が動いたとしても!


じょうろは植木屋さんで一つ小さいのを買ったのでスルー。


釘やらハンマーやら鋸といった金具系の物や、フォークやナイフなどもある。

お。

マグ発見。

これとティーポットは欲しいな。


「考えてみたらティーバッグってこの国では流通しています?」

カルダールに聞いてみた。

ティーバッグがあるなら普通に中にお湯を入れるだけのポットでいいけど、無いのだったら茶濾し付きの方が便利だろう。


「ティーバッグですか? 数年前から売りに出ていると思いますよ」

うっし。


「ただ、ちょっと異臭がする時がありますけどね」


え~??

「......異臭ですか?」


「タジャディンの方から輸入しているのですが、偶にカビが生えているようですね」

おいおい。


元々、紅茶って普通の茶葉が発酵してしまった時に出来た物だと言うけど、『異臭』と云うからには意図的な発酵ではなく単にカビが生えていて不健康な状況になっているっぽい。


「お茶が国内で採れないんですか?」


「いや、採れますよ」


「じゃあなんでティーバッグも国内で作らないです?

少しぐらい人件費が高くても、2つ向こうの国から輸入することを考えたら輸送料の方が高いでしょうに」


「少量を多数詰めることになりますからね。袋の費用と人件費を考えると送料を考えてもタジャディンで作る方が安いそうですよ。偶に粗悪品が混じるのが玉に傷ですが」


うわ~。

意外だわ。中世の世界でも、一昔前のメイド・イン・チャイナ的な商品が出回っているのか。

「高いのを買えば国内品で品質も大丈夫なんですか?」


「場合によっては値段だけ高くて、実は中身は粗悪品であることもあるんですよね~。

私が買っているのだって高くていい物のはずなんですが、それでも時々変なのが混じっているんです」


うげぇ。

袋の中に入っていたら、その中のお茶が変色していたり毛が生えていても飲んでみるまで分からないよなぁ。

でも、成分分析の術を使えば分かるか。

......自分で全部買出しに行かなきゃいけないって云うのは面倒だが。


とりあえず、一応茶濾し付きのポットにするか。それ程値段が違う訳でもないし。


マグを2つとティーポットを買い物かご(持っているのはカルダール君!)に入れ、更に店内を歩き回る。


「花が好きなら、花瓶は要りませんか?」

カルダールが声を掛けてくる方を振り返ると、色々な花瓶が置いてあるコーナーで足を止めていた。


「確かに。あった方がいいかも」

こちらも地球と同じように、花瓶はガラスと陶器のがメインだった。


こちらは生け花を長持ちさせるような薬なんて売っていないだろうから、水は毎日変えなければならない。あれって1滴程度の漂白剤とかで殺菌することで代用できると聞いたこともあるけど、微妙に使い方が分からないし、毎日水を変える方が無難だろう。

となったら水位が見える必要はない。

だとしたらやっぱり陶器だよなぁ。生け花の茎ってあまり見ていて美しいとは思えない。

無難に白か深緑かな~。


色々と陶器を手にとっていたら、カルダールが声を掛けてきた。

「やはり陶器の方がいいですかね?」


「う~ん、何も入っていない時はガラスの方が奇麗ですけど、生け花の茎の部分とかあまり見えない方がいいかなぁなんて思って」

カルダール君も何故か真剣に花瓶を見ている。


「カルダールさんも買うんですか?」


「もうすぐ婚約者の誕生日なんですよ。今年は花束と花瓶を贈ってみようかなんて思いまして」

照れくさそうに笑うカルダール君。


いいねぇ。

青春だ!


しかし。

若い婚約者の誕生日に花と花瓶だけじゃあ足りなくないかね?

日本だったら確実に形に残る物(アクセサリーとかバッグとか)を求める女性が多い気がするが。

まあ、何事も想いが大切だけどさ。


日ごろお世話になっているから、私が防御魔術を込めたネックレスでも作ってあげてもいいんだけど......やはり仕事関係とは言え、他の妙齢(一応)の女性が作った物を婚約者から貰いたくないだろう。


「アクセサリーとかはあげないんですか?」


「ああ、それは既にオーダーしてありますので」

おお!

流石副宰相どの。抜かりは無いね。

最後の仕上げとしてのプレゼントのおまけが花瓶と花束なのか。


「どんな花束を上げる予定なんですか?

豪華なアクセサリーを上げるなら、この際一輪ざしのすっきりした花瓶に薔薇を一輪あげるとか言うのも良いと思いますし、そうじゃなければ大きな花束と、それを入れられるぐらい大きな花瓶もいいかもしれなせんね」


カルダールの婚約者とやらは、彼が王都に来て文官試験を受ける際に宰相の家に泊まれるよう頼んでくれた人の親戚らしい。元々知り合いだったらしいから幼馴染なのかな? もしかしたらお見合い結婚なのかもしれない。どの位前から知り合いなのか微妙に不明。

まあ、カルダール君も大切にしているようだし、幸せな結婚になると思いたい。


婚約者の方は何と武官になるつもりらしく、現在その試験に忙しいから無事合格し、見習い期間(1年間)を過ぎたら結婚するらしい。ちょっと遅い目の結婚だが相手は決まっているのでゆったり構えていられるんだろう。

物凄く草食系に見えるキリンのごときカルダール君が、武官になるような女性と結婚とは......合っているような合わないような、微妙なとこだ。

一度会ってみたいね~。

仲良くなれたら今までのお礼も含めて結婚祝いとかも心おきなく贈れるだろうし。


ま、それはともかく。

それなりに気張ったピアスを買ったとのことなので一輪ざしを色々見て回った結果、カルダール君はちょっと可愛らしいピンクのガラスの花瓶を買うことにした。


私は無難に白い陶器の花瓶と、小さなガラスのを一つずつ。

小さいのは金木犀とかジャスミンが咲いた時に一枝切って挿しておくのに使う予定。


「お。これも必需品じゃない」

ハンガーが置いてあるのを見て手に取る。

実は、昨日はフットライト兼防御装置を作るのに忙しくてまだ荷ほどきしていないんだよね。

全部異次元収納に放り込んだまま。


考えてみたらハンガーが必要だと言うことに気付いていなかった。


本当はプラスチックか針金のひと山100円のハンガーでいいんだけど、やはりそれ程安い物は無い。

針金の製作それ程簡単じゃあないんだろうね。しかも錆びないようにコーティングする必要があるだろうし。


とりあえず、コーティングがちゃんとできているか微妙だったし、変に色が付いたり錆びが付いても嫌だったので木のハンガーを大量に買うことにした。

......足りなかったら残りは魔術で創ってしまおう。これ以上買うのは面倒だ。


後はハンカチを買ったり小物入れを買ったり。

(正確には買い物かごに入れただけなんだけど)


最後に、大きな雑貨屋のフロアの一番奥に大量にアロマキャンドルを見つけた。

「素晴らしい」


「香りのいいモノが好きなんですね」

片っぱしから香りを嗅いで気に入った物をどんどん買い物かごに放り込んでいる私を見て、笑いながらカルダールが言った。


「香りがいいと、何となしに嬉しい気がするんですよね。香水とかもいいのがあれば好きなんだけど、あれって意外と匂いがきついから。アロマキャンドルぐらいの方が無難だと思うんで、とりあえず気にいるのが無いか試すつもりです」

日本で暮らした時はキャンドルのすすが天井については不味いと思っていつも台所の換気ファンの下に置いて火を付けていたのだが、今となれば何でも作れる。


ガラスの板みたいので上をカバーして煤を受けとめるキャンドルカバーみたいなモノを作ろう。


......と云うか、そう言う物ってこの世界では売っていないのかな?

魔具マジックアイテムの照明を使っているのでない限り蝋燭で明かりを採るとなると、どうしても煤が上に溜まると思うが。


「そういえば、蝋燭ろうそくを燃やすと煤が出ますよね。それをが壁や天井に付くのを防ぐ物って何かありますか?」


カルダール君はちょっと不思議そうに首を傾げただけだった。

「ちゃんと蝋燭の芯の長さを調節すれば、殆ど煤は出ませんよ?」


え??

そうだったの?!

日本で燃やしていたアロマキャンドルがそこそこ煤を出していたっぽいのって芯の長さをちゃんと調節していなかったのが諸悪の根源??


「......どの位の長さに調節すればいいのでしょうか」

涙をのみながら確認する。


「8ミリ程度がいいと思いますよ。風が当たると炎が揺らいでしまうので煤が出ますが、普通の状態でしたらちゃんと芯の長さを8ミリ程度にしておけば殆ど煤は出ません」


「成程。参考になりました」

そうか。

風も駄目なのね。

まあ、ジャスミンや金木犀が咲いていて窓を全開している時はアロマキャンドルなんぞ必要ないから関係ないけど。


「フジノ殿はあまり蝋燭を使ってこなかったのですか?」

カルダールが聞いてきた。


かなり不思議そうな顔をしている。

私の質問って日本で『電球が切れた電気はどうやれば再び使えるようになるんでしょう?』って聞くようなかなり間抜けなものだったのかもしれない。


「え~と、私の世界では照明は魔具マジックアイテムがメインだったので蝋燭は非常時以外はあまり使わなかったんです。

アロマキャンドルは香りを楽しむ為に使いましたが、嗜好品だったので大人になってから家でプライベートな時間に使い始めたのでちゃんとした芯の長さの調整とか、教わらなかったんですよ」

ネットで調べりゃあ分かったんだろうけど、煤が出ないなんて可能性その物を思いもつかなかったし。

前時代的なものなんだから、それなりに不便があるのが当然なのだろうと思っていた。


ある意味、馬鹿な思い込みだった。


ま、今となれば魔術で部屋の完全な掃除も可能なんだし、とりあえずは変なカバーを付けずに芯の長さに気を付けて普通に使ってみよっと。




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