表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/65

015 魔具研究(2)

さて。

まずはランプから始めようか。

機能しているかどうか分かりやすいし。


光の魔術の場合、宙に光がふわふわと浮いているのだが、ランプを作るなら何かに固定した方がいいかな。

それともスイッチを入れた人間の後を追う形?

......考えてみたら、暗い廊下を歩いたりする時のことを考えると後をついてきてくれる方がいい。


まずは、元の魔法陣を作ろう。


光の魔術を脳裏で検索し、詳細条件に『実行者の頭上15センチ、右前15センチ上空に位置。天井の高さが足りない場合は前方へ移動。手で動かした場合はその移動させた位置関係を保持』と設定。

そういえば、時間はどうするかな。

どうせ切る時は自分の意志で切るんだから、有効時間は無制限、解除は術者の意志としておこう。


詳細設定した術を魔法陣作成の術に呼び出し、作成。

作成先はまたもやノートの紙にしてみた。


魔力が流れ出し魔法陣が紙の上に形成され、光が頭上に現れた。

うん、まあこの魔法陣でいいか。

スイッチを入れるのが魔力の流し込みになる予定だから、最初からつきっぱなしでかまわない。


テストに邪魔だから『切り』と意図を向けたら......魔法陣が消えた。

ありゃま。

スイッチを入れるという機能を設定しておかないと、切ると用無しと言うことで魔法陣そのものが消えちゃうの??


ううむ。

しょうがないのでもう一度挑戦。

今度は『一度消灯した後は再び魔力を通したら点灯』と条件を付け加える。

魔法陣を作成、そしてライトを消す。

うっし。

魔法陣はちゃんと残ったね。

というか、他のもこれで作ってもいいのか。

魔力を流せば再起動ってことにすれば魔術のショートカットとしては使えそう。


......でも、平民生産を可能にするためには魔力で作っていない魔法陣が必要だ。

それに、普通に効果を切っているだけの魔法陣だったら魔術師が見たら多分魔力が視えちゃうし。


とりあえず、出来るかどうかだけでも試してみないと。


まず、鉛筆で魔法陣を書きだしてみる。

さっきみたいに魔力をその形に焼きつける様に流し込むのではなく、砂場に掘った溝に水を流すようなイメージで魔力を簡単に流してみた。


......何も起きない。


鉛筆の芯って炭素がメインな成分だろう。炭素って電気を通すイメージがあったから魔力も通すかと思ったんだけど、甘かったらしい。

と言うか、鉛筆の芯ってもしかして炭ではなく、鉛??英語だとシャーペンの芯のことをlead(鉛)って言うとどこかで読んだ気がしないでもない。

鉛って電気を通すんだっけ?

まあ、どちらにせよ今通そうとしているのは電気じゃなくって魔力なのであまり関係ないかもしれない。


物を創る魔術を使って鉛筆で書いた線を銅に変えてみる。

魔力を流すと......ランプが点いた。


うっしゃあ!


普通に術を実行するよりも光が弱いが、点くことは点いた。


普通に実行するよりも光が弱いと言うことは、効率性は下がっていると言うことなのだろう。

だとしたら、何がいいのかな?

銀?

金?

白銀?

鋼?

じゃなきゃ色んな合金とか?レアメタルを含ませると伝導性とかって凄く変わるらしいしなぁ。


まあ、魔力が電気と同じとは限らないし、電気と同じだとしても......化学も物理も高校半ばに袂を分けてから縁が無いんで殆ど何も覚えていない。

電気のケーブルとかは銅がよくつかわれていたみたいだけど、それだって銅が銀とかよりも伝導性が良いから使われていたのか、それとも単に経済的だとか腐食しにくいからだとか言う理由なのかすら知らないし。


ま、手当たり次第に調べるっきゃないね。



◆◆◆



『何をしているの?』


昼寝から目覚めたダールが、伸びをしながら近寄ってきた。


使い魔になったものの愛猫の行動パターンは殆ど以前と変わっていない。

朝早くに起きてちょっとドライフードを齧る。

ベッドに戻って二度寝。

私が起きたらちょっと起きてきて撫でさせに寄ってくるけど、一通り遊んだら満足してまた昼寝。

そして昼寝。

更に昼寝。

夕方にちょっと散歩に出かけたり走り回っていたと思ったら、またソファの上で転寝しながら私の勉強・復習・研究を見物。

私が寝る時には一緒にベッドにもぐって就眠。

夜中に時々出歩いているようだが、基本的に寝ていることが多い。


つくづく、次の人生は飼い猫になりたいと思う。よっぽど恵まれた環境に生まれるんじゃない限り、人間なんぞより絶対に良さそうだ。

まあ、虐待される飼い主に買われたり、捨てられて野良猫になったりしたら悲劇だけど。


ちなみに、ダールは何故か魔力の使い方は私よりうまい気がしないでもない。


私が教えた訳でもないのに、姿を消したり扉を通り抜けたりする術を使っている。

『術』ではなく、使い魔の『能力』らしいが、どう違うのはイマイチ説明が理解できない。

そのうち私の時間が出来たら、ダールの気が向いた時にでも、彼の魔術の能力を確認しないと。

とは言え、まずは自分の能力の把握の方が重要だけどね。


「ちょっと魔具マジックアイテムを作ろうと思ってね。色々実験しているところ」

ちょいちょいっとダールの喉を撫でながら答える。


『何を実験しているの?』


「魔法陣を予め作っておいて、そこに魔力を通すことで魔術を一瞬で実行出来るようにしたいの。で、今はどの物体で作った魔法陣が一番効率的か試しているところ」


『髪の毛が一番じゃない?』

思わず、愛猫の指摘に考えが止まった。


ううむ。

何とはなしに電気をイメージしていたから金属製の物ばかりを試していたのだが......。

髪には魔力が宿るっていう考えもあるよね。

イメージ的には微妙だし、工業ベースで作らせるのに素材が毛髪っていうのは無いけど。

でも、自分のショートカット用部品にだったら使ってもいいのかもしれない。


微妙に嫌な気もしないでもないが、とりあえずブラッシを異次元収納から取り出して抜け出した髪を何本か拾い、魔法陣がコピーしてある紙の上に置く。


『融合』で術を探し、魔法陣の線と髪の毛を融合させて髪の毛で出来た魔法陣を創り出す。


さて。

どうですかね?


魔力を通すと......殆ど普通に術を実行した時と同じぐらいの明るさになった。


「すごいじゃない、ダール。どうして分かったの?」


『そんなの常識~』

いや、そんなこと言われたって......。

何だって元々普通の飼い猫だった君に魔法の知識や常識があるの??


私の知識が検索をしないと出て来ないモノであるのに対し、ダールのは完全に彼の知識の一部になっているっぽい。

貰った情報量の差なのかなぁ?

情報処理能力の違いではないと思いたい。幾ら溺愛しているとはいえ、愛猫に情報処理能力が劣ると考えるのは哀しいぞ。



ま、それはともかく。

この魔法陣をブレスレットにしないとね。

石だとゴロゴロして邪魔かもしれないから、コイン8つ繋いだような形でいいかな?

丸にするかそれとも六角形か八角形かそれとも12角形ぐらい?

う~ん。

面倒だ、六角形でいいや。


『変質』の魔術を検索。

詳細条件は『100円サイズへ縮小、六角形、紙の裏はちょっとデコボコ、素材金』

おっと。ついでに『裏の表面に『光』の文字』。

どうせこの世界に漢字を読める人は私しかいないんだ。どのコインがどの術なのか分かりやすく表示しておいていいだろう。


実行。


一瞬紙がぶれたと思ったら、次の瞬間にはブレスレットの一部にしてもおかしくないような六角形のコインになっていた。


......魔術って無敵だよなぁ。

まあ、何千年かの研究の成果が神様(守護霊?)の手助けでチート仕様にアクセス出来るようになっただけで、普通はここまで便利じゃあ無いんだろうけどさ。


いつの日かは、これを研究して他の人にももっと手軽に使える物にしたいものだ。


さて。

次は飲み物の保温だね。

温度を保つ術でいいかな?

対象物は魔法陣の起動時に触っている容器の中と言うことにしようか。


まずは普通の魔法陣を魔術で作った。

......作ったはいいが、考えてみたらどうやって機能しているのかを確認するかな。

温度計でも作って温度を測る方がいいかも?

お湯が冷めるまで待っているんじゃあ、時間がかかり過ぎてやっていられない。


ちょっと大きめな小石を手に取り、それを元に物の創作魔術を実行。

対象物は温度計。

小学校の実験で使ったような、無粋な大きめな奴で、下に小さなボールがあってそこに赤く色をつけた(んだよね、多分?)水銀が入っていて、それが目盛をつけたガラスのチューブの中を温度変化とともに膨張して伸びていく道具。


日本の店で売っていたような正確さ無くてもいいから、とりあえずある程度内容が同じであれば温度変化を測れるはず......と思いつつ実行したら、一瞬後には手に温度計があった。


微妙に目盛がいい加減な気もしないでもないが、とりあえず温度変化は測れそうだ。


先日買った冷水の水入れに水を注ぎ、温度計を突っ込む。

暫く待っていたら、ちゃんと水銀の柱が下がって行った。

うっし。


別の浅い目の容器を創り出しそこに水を入れ、火の魔術で熱湯に変える。

冷水の水入れからグラスに水を移し、それを手に持ちながら保温の魔法陣を起動させた。

さて。これが熱湯の中に入れられても温度が変わらなきゃ成功なんだけど。


ゆっくりと冷水と温度計を突っ込んだグラスを熱湯の中へ降ろす。


じっと温度計を睨むが変化はないようだった。

......しまった、比較対象に術を掛けていない冷水入りのグラスも用意しておくべきだった。

とりあえず、3分待って全く水銀の場所が変わっていないのを確認した後魔法陣の術を切る。


さ~て、温度が上がるか?


あっという間に水銀の柱が上がり、温度計のてっぺんまで行った。


うっしゃ~!

保温機能の魔法陣はこれでOKだね。

流石脳内チート魔術。

全く失敗なしとは恐れ入る。



魔法陣を紙に書き写してから、しばし考え込む羽目になった。

以前はかなりの長髪だったので髪の毛を切ったら魔法陣を8つ作る分ぐらいは余裕にあった。

だが最近ちょっと肩下ギリギリ位にしていたから、あまり髪の毛の総量が多くないんだよなぁ。


この際、他の物体を髪の毛に変質させられないかな?

直ぐそばにサンプルがあるんだし。


薪を元に、一部を髪の毛のサンプルと同じものへと変質させる術を実行してみる。


どさどさ!

床が髪の毛だらけになった。


うえぇぇ。

量が多すぎて、まるでお岩さんか何かがこの髪の下から顔を覗かせそうな雰囲気だぞ。

薪のほんの一部だけを変えたつもりだったのだが、どうやら髪の毛って同じ質量でもかなり嵩張るらしい。


まあいいや。

今日作る予定の魔法陣を創り終わってもあまっていたら異次元収納に入れておこう。

どうせこれからも魔法陣を創るんだろうし。


ふむ。

本物の髪の毛とこのコピーもどきとの機能の違いが分からないな。

しょうがないから、照明の魔法陣をもう一つつくるか。まあ、照明なら予備として持っていていたらいつの日か何かの役に立つかもしれないし。


先ほど放り出した照明の魔法陣の書いてある紙を取り出し、コピーした後にその紙上の線とフェイク髪の毛を融合させる。


さて。

さっき作ったブレスレットの一部の魔法陣と比べてみますか。

......考えてみたら、ブレスレットの機能を確認していないけど、縮小させてもその機能が損なわれていないと期待しよう。


ブレスレットを手に持ち、魔力を流す。

すいっと右上50センチぐらいのところに光の塊が発現した。


もう一つのフェイク髪の毛で出来た魔法陣も手に取り、魔力を通す。


ふわっ。

光が浮かび上がった。

さっきのと同じ発現して重なり合ってしまうので、注意深く一つを手で左へ押しのける。


うん。

効果はフェイクの髪の毛でもほぼ同じようだ。


良かった。

これから魔術陣を作る度に髪の毛を数本抜く羽目になるかと心配しちゃったよ。

後は飲み物保温のをコインにして、他のも同じような感じで行けばOKだ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ