主人公のステータス 番外編、ナンシー視点の話。
30話終了時点のステータス
今回の表記から、装備の効果も反映。
主人公のステータス。
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名前:トオル・トキワ(常盤 透)
剣士 レベル:5 ( 戦士 レベル:4)
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HP:65 / 65 MP:35 / 35 (+10)
筋力:18 (+3) 耐久:14
敏捷:15 (+6) 技量:22 (+7)
魔力:12 (+3) 幸運:10
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固有スキル:
【鑑定】 【アイテムボックス】
【女たらし】 【奴隷使い】
スキル:
【剣術:Lv.6】
称号:
【オルト村の英雄】
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装備:
『疾風の剣』(常時:【斬撃付与】) 装備時:敏捷(+3)
『風のマント』 装備時:敏捷(+3)
『精神の指輪』装備すると魔力(+3)MP(+10)
革の胸当て・ブーツ・兜、木の丸盾
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ボーナスポイント:7
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【アイテムボックス】
傷薬(塗り薬): 1個
下級ヒールポーション: 0個
探索道具一式:(テント、包帯、煙幕弾、ロープなど)
『薄汚れた硬貨の袋』:(財布 / 残金:金貨: 5枚 銀貨: 8枚 銅貨: 50枚)
避妊薬(瓶1個分)
魔導石(アメジストの原石)1個
古代王国の金貨5枚
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第30.5話 赤髪の誓い、将来の夢
私は、太くて暖かい父の腕が大好きだった。
村の戦士たちの先頭に立ち、民兵団のリーダーとして腰に差した鉄の剣を振るう父ガルドの背中は、幼い私にとって世界で一番頼もしく、誇らしいものだった。
鏡を見るたびに映る、私の燃えるような赤髪と丸い琥珀色の瞳。
それは父から譲り受けた大切な宝物であり、私の自慢だった。
「大きくなったら、私もパパみたいに強い戦士になって、この森の魔物をいっぱい倒すんだ」
そう宣言するたびに、父は大きな手で私の小さな頭をくしゃくしゃと撫で、豪快に笑ってくれたものだった。
だが、その平穏で誇らしい毎日は、突如として村を襲った重苦しい暗雲によって打ち砕かれることになった。
村を脅かす12名もの凶悪な盗賊団。
わずかな民兵しかいないこの小さな村にとって、それはあまりにも過酷で、絶望的な数字だった。
* * *
連日、村の集会場では深刻な話し合いが持たれ、父は眉間に深いシワを刻みながら、幾度も頭を悩ませていた。
民兵団のリーダーとして、村人たちの命と生活を守らなければならない責任が、父の肩に重くのしかかっていたのだ。
それでも村を守るため、戦う以外の選択肢はなかった。
決戦の朝、部屋に漂う空気は痛いほどに冷たく、重たかった。
父は革の胸当てを固く締め直し、腰に剣を下げると、私とママの前にひざまずいた。
「マリア、ナンシーを頼むぞ。すぐに戻る」
波打つ亜麻色の髪を後ろで三つ編みに結わいたママ――マリアの肩をぎゅっと抱きしめた後、父は私の頭を力強く、しかし愛おしそうに撫でてくれた。
その力強い微笑みと、掌から伝わる温もりが、私が見た父の最後の姿となった。
盗賊との凄惨な戦い。
そして、村に届いたのは父の訃報だった。
* * *
知らせを聞いた瞬間、私の世界の半分が音を立てて崩れ去ったような気がした。
冷たい床に崩れ落ち、声を押し殺して泣き続けるママの横で、私もまた、幼い胸が押し潰されるような深い絶望と悲しみに包まれていた。
大好きだった父の腕も、温かい掌も、もう二度と私を抱きしめてはくれない。
悲しみは底なしの沼のように、私の幼い心を暗闇へと引きずり込んでいった。
そんな深く暗い悲嘆の底にいた私とママの前に、その人は現れた。
『オルト村の英雄』――
トオルさま。
村を恐怖に陥れていた12名の盗賊団を一人で全滅させ、森の恐ろしい魔物たちをいとも易々と狩り尽くす圧倒的な力を持つお方だ。
父たちが命を懸けても勝てなかった脅威を、たった一人で払い除けたというその圧倒的な存在感に、私の幼い心は激しく揺さぶられた。
初めてトオルさまと視線が交わった瞬間のことを、私は一生忘れないと思う。
冷静で、透き通るような鋭い眼差し。
どこか浮世離れした静謐な空気を纏いながらも、その奥に秘められた圧倒的な強者としての矜持。
一目見たその瞬間に、私の胸の奥が熱く高鳴り、全身の血が跳ね踊るような強いときめきを覚えた。
それは、父への憧れとはまた違う、幼いながらも鮮烈で、甘やかな衝撃だった。
* * *
やがて、トオルさまは私たちと同じ家で一緒に暮らすことになった。
朝、目を覚ますと、同じ屋根の下にトオルさまがいる。
食卓を囲み、トオルさまが静かにスープを口に運ぶ姿を眺めるだけで、胸の奥がじんわりと温かくなっていった。
父を失ったことでぽっかりと開いてしまった心の大きな穴が、トオルさまという存在によって、一つ一つ丁寧に埋められていくのが分かった。
トオルさまの側にいられる時間が増えるにつれ、私の恋心はすくすくと育っていった。
ある日の午後、日差しの差し込む部屋で、私はトオルさまに抱っこされながら、文字の読み書きを教えてもらっていた。
木彫りの板に羊皮紙を重ね、インクの匂いが漂う中で、トオルさまが私の小さな手の上からごつごつとした大きな手を重ねてくれる。
「ナンシー、ここはこう書くんだ」
耳元で響く低く落ち着いた声。
トオルさまの体温と、かすかに漂う森と鉄の匂い。
それだけで胸がキュッと締め付けられ、私は文字どころではなくなってしまう。
トオルさまの隣にいられるこの時間が、私にとって何よりも愛おしく、幸せなひとときだった。
だが――
そんな甘やかな時間に、私はある重大な異変に気づいてしまったのだ。
ふと視線を上げると、少し離れた台所で夕食の仕込みをしているママの姿が目に入った。
ママは野菜を刻む手を止め、チラチラとトオルさまの方へと熱っぽい視線を送っているのだ。
トオルさまがお茶を一口飲むたびに、ママの頬はほのかに朱を帯び、お給仕をする手元がかすかに震えている。
その瞳に宿っているのは、保護者や居候に対するそれではなく、あきらかに一人の男の人へ向ける甘い眼差しだった。
* * *
(……あっ! ママもトオルさまのことが好きなんだわ)
稲妻が落ちたような衝撃が、私の幼い頭を駆け抜けた。
衝撃と同時に、猛烈な危機感が胸の底から湧き上がってくる。
ママは24歳。
村でも評判の美人だ。
大人の色気があり、料理も上手で、細やかな気遣いもできる。
5歳の私にとって、ママはあまりにも巨大で、あまりにも魅力的な「強力なライバル(強敵)」だったのだ。
膝の上で小さな拳をぎゅっと握りしめながら、私はトオルさまに悟られないよう、静かに思考を巡らせた。
(どうしよう……今のままじゃ、ママに勝てない……)
だが、私はただ泣きわめいて焦るだけの、幼い子供ではない。
父譲りの戦士の血と、冷静に状況を分析する思考力が、私の中に確かに息づいていた。
私はトオルさまの膝の上で小さく息を吸い込み、客観的に現状の戦力差と将来の展望を比較・整理し始めた。
確かに、今のママは大人で綺麗だし、女としての魅力では私など到底敵わない。
だが、焦る必要はどこにもないのだ。
なぜなら、決定的な違いが一つだけ存在するからだ。
ママは町や村で暮らす普通の女の人だ。
剣を振るうこともできなければ、魔物と戦う術も持っていない。
つまり、ママはトオルさまと一緒に暮らせてはいても、トオルさまの「戦い」や「冒険」の場には絶対について行くことができないのだ。
対する私はどうだろう。
私には、父ガルドから受け継いだ燃えるような赤髪と、戦士としての素質がある。
今はまだ5歳のちっぽけな子供だが、これから毎日体を鍛え、剣の扱いを学び、強くなっていけばいい。
そして数年後、私が成長した時――
私は「村の戦士」ではなく、「冒険者」になるのだ。
冒険者になれば、トオルさまの隣に立ち、背中を預け合いながら、二人で一緒に世界中を旅することができる。
過酷なダンジョンでも、見たこともない遠い異国の街でも、トオルさまの側に居続けられるのは、戦う力を持った私だけなのだ。
(そうよ……! ママにはこの村を守ってもらって、私がトオルさまと一緒に外の世界へ旅に出ればいいんだわ!)
頭の中で弾き出された「未来の勝利の方程式」に、私の心はスッと落ち着きを取り戻した。
短期的な勝負ではママに分があるかもしれないが、長期的な戦略で見れば、冒険者になる予定の私に圧倒的な勝算がある。
私は未来を見据え、自分の中で新たな決意を固めた。
私の将来の夢は、村を守る戦士になることではなくなった。
立派な冒険者になって、トオルさまの隣に立ち、一緒に世界を旅するパートナーになることだ。
* * *
「……ナンシー? どうした、急に固まって」
考え込んでいた私を不思議に思ったのか、トオルさまが覗き込むようにして私の顔を見つめてきた。
「なんでもないよ、トオルさま!」
私は最高の笑顔を浮かべると、木彫りの板を握るトオルさまの大きな手を、自分の小さな両手で力強く握り返した。
ライバルであるママには申し訳ないけれど、トオルさまの隣という一番特別な場所は、絶対に私がもらい受けるのだから。




