暗殺側視点 生き残りの青年。
「ストーカーじゃないか。仕事か。じゃぁ、俺からも仕事の依頼を出させてくれ。もう俺を追うのをやめろ。」
そいつはそういった。
「すまないな。その依頼は受けられない。今受けている依頼を裏切ることになる。」
「なんで裏切っちゃダメなんだ?」
………俺はその問いにすぐに答えられなかった。
「なぁ。こっちにつけよ。裏切ったって大丈夫だ。どうせ来る奴は少数だ。」
なぜ答えられなかったのか。
あいつがビルから飛び降りたときに一瞬だけ見えた紋章。
それをまた見た。そして、思い出した。
「なぁ。知ってるか?」
そう切り出した。
「天界にはこういう言葉がある。丸を銃で突き通した紋章をつけた青年を見たら、そいつは生き残りだ。ってな。」
俺がそう言い終わると、そいつはへぇといった。
「下界で聞いたようなセリフだよな。ちなみに、その紋章をつけた青年は前の内乱の兵士だったとよ。」
そういうと、一拍置き。
「なぁ。その青年は今どこにいるんだろうなぁ。」
そう、問いかけるようにそいつを見ながら言った。
いや、問いかけるじゃないか。俺は確信を持っている。
こいつだ。こいつがその青年だ。
間違いない。丸を銃で突き通した紋章。青年。すべてが一致している。
まず天界には少年と少女、50代ほどの男女の見た目をしたやつが多い。青年なんてほぼほぼいない。
「さぁな。わかんねぇ。ところで、俺がさっき言ったことに対する返事は?」
「まぁそう急ぐな。時間ならいくらでもあるだろう。青年。」
しらを切らせはしない。
「青年?お前はそんな呼び方はしなかったはずだろう?返事がまだならもう俺は帰るぞ。」
逃がしはしない。
「なぁ。待てよ。見えてるぞ。その紋章。」
俺がそう指摘すると、そいつは紋章のある首の横の付け根を抑えた。
「ははっ。見えちまってたか。」
そいつは、また笑った。
そして、まだまだ笑った。
………なんなんだこいつ。
っ!!!
そいつは確実にさっきまで目の前で笑っていた。
だが、今は俺の後ろにいる。
「いやぁ。久しぶりだよ、バレたのはな。俺はな、神殺しの趣味はねぇんだ。今後俺にかかわらないなら今は見逃してやるよ。」
そいつは、余裕そうにからかうように言った。
「ははっ。そりゃいい提案だ。」
俺はそういい、後ろを向いた。
握りしめたナイフと一緒に。
そいつの顔に向かって、研がれたナイフが向かう。
だが、そいつは軽々とバックステップでよけた。
「いいセンスだ。」
俺はすぐさま次の行動に移り、拳銃を握った。
照準を合わせ、引き金を引く。
人間にバレないようにサイレンサーをつけ、銃声はほとんど聞こえない。
だが、あいつには当たらない。
「いいねぇ。いい射撃だ。」
そういうと、一気に地面を蹴り、こっちに向かってきた。
速ぇ!
俺は必死に後ろに飛びのけた。
飛びのける瞬間に爆薬を置いてきたが、そいつは目にもとまらぬ速度でこちらへ投げてきた。
静かな路地裏で爆発音が響く。
小さめの爆薬なので、きっと人間にはきこえてないはずだ。………きっと。
俺は思いきり爆発を受けたが、何とか無事だ。
「いいアイディアだな。捕食者は獲物をしとめる瞬間が一番隙ができる。」
クソが!なんでこいつはこんなに動けるんだ。
「クソ!クソ!クソ!」
俺は手に拳銃握りしめ、必死に引き金を引いた。
だがそいつはよけることもせずに全弾取って見せた。
ろくに動かない足を無理やり動かし、立ち上がる。
手にナイフを持ち、今のすべての力を使い地面を蹴る。
ドンッ!という音が聞こえ、一気にそいつの目の前へと詰める。
そして力任せにナイフを振った。
だが、触るだけで切れてしまうのではと思う鋭いナイフは真価を発揮せず、空気だけを切った。
「いやぁ。そんな近づかないでよ。ソーシャルディスタンスだよ。大事だぞ。」
一気に詰めたときのスピードのまま、俺は地面へ突っ込んだ。
だが、前回りの容量で立ち上がる。
なぜだろう。体はもう限界なはずなのにここまで動く。
限界に追い詰められているのに、さっきよりも足が動く。
なんでだろうな!
「人間ができるなら……神ができる!」
俺はそういい、人間がやって見せたことを俺がやって見せる。
両手に機関砲を大型ライフルにした物を持つ。
一丁46㎏。二丁で92㎏。弾薬を合わせればもう2㎏追加だ。
そいつへ体を向け、乱射する。
全身に反動が伝わり、一発撃つたびに腕と足が悲鳴を上げ、胴体と腕と足がそれぞれ引きちぎれそうだ。
それでも俺は必死に立つ。
「すごいじゃないか。俺は君をそこまで突き動かすものの正体を知りたいよ。」
俺がここまできつい状態だが、そいつは余裕そうだ。
畜生!
「あたれぇぇぇぇ!!!!!」
俺は気づけば叫んでいた。
そしてその思いは願った。
一発、壁に当たる音じゃない音が聞こえた。
肉をえぐる音だ。
さっきまでずっと動いていたそいつが急にどさっと動きを止めた。
そいつは膝から下を吹き飛ばしていた。
俺は手に持っていた銃を落とした。
「ははは。すごいじゃないか。これが火事場のバカ力ってやつか。」
勝っ………たのか?
「まぁ。俺の勝ちだけどな。」
そいつはそういい、吹き飛ばしたはずの足を再生し、こちらへ向かってきた。
俺はというと、足が動かなかった。
俺は目をつぶった。
嗚呼。負けか。
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