逃走開始と仕事開始。
「よくもまぁ、ここまで逃げてくれましたね。」
前のリーダー?がそう言葉を吐く。
「まぁ、このあほらしい逃走劇も終わりです。」
へぇ。あほらしい……か。
「天界規定では下界に降りた神に対しての追跡は人間に見つからないようにとされています。見つかりにくいように下界に降りようとしたんでしょう?」
そいつは勝ち誇ったようにそう話す。
「ですが、そんなことを想定していないとでも?詰めが甘いんですよ。」
あぁ。めんどくさいな。
「聞いてますか?あなたはもう負けたんですよ。」
そういわれ、少しカチンときた。
俺は下に向けていた顔をゆっくりと上げた。
「これで、勝ったと思っているお前の方が詰めが甘いな。」
「まだ、この状況で抵抗するつもりか!諦めの悪い奴め!穏便に済ませてやろうと思ったが、もういい。お前ら!こいつを殺せ!」
さっきまでの敬語もどきですら、脱ぎ捨て、そう命令した。
俺の周りにいる神兵は、命令を受け、こちらに銃を構えた。
銃は天界の発明です。人間の発明ではありません。一時期後れを取りましたが、今や巻き返しの時です。
おっと。いけない。ついこのフレーズが。
俺はすぐさま切り替える。
ふぅ。
穏便に済ませたかったが。
そう思い、そいつらが銃を撃つのを待った。
すぐに、あたりを銃声が支配した。
俺は、それをよけることなくすべて捕まえてみせた。
そして、リーダー?の背後に回る。
「いやぁ。詰めが甘いっすよ。」
そう、あざ笑うように言った。
「あと、神兵さん。考えてください。俺がここから逃げようとした。それが周りに流れたらどうなると思う?」
俺はえ?という困惑の顔をした神兵に対してそう語りかけた。
「ここから出たいと思うほどには開発管理部はブラックとかいう噂が出るわけだ。」
実際、天界はすさまじく快適だ。
ほしいものは心で思えば勝手に出てくるし、家だってすさまじい豪邸だ。
開発管理部もそこまでブラックじゃない。仕事だからキツことはあっても、そこまでではない。
ならなんで出ようと思ったかって?………まぁ、いつか話そうか。
「そしたらどうなると思う?開発管理部は予算が減らされるだろうな。そんな怪しい部署、何かしらの罰を与えなければメンツが保てない。それに上のやつらの出世にも関係するだろうな。」
予算とは神として下界に何か変化を起こす際に必要とするポイントみたいなやつだ。
そうポンポン変えてもらっちゃ困るということで下界を参考に作ったらしい。
「断言しよう。俺が出ようとしたということを知ったお前らは口封じに殺される。」
それが現実だ。
俺が言ったことを理解したようだ。
神兵たちは顔を見合わせた。
「やめろ!そいつの虚言に惑わされるな!大丈夫だ!殺しはしない!」
焦った様子でリーダー?が口早に言った。
「殺し”は”?」
俺が指摘すると、そいつはさらに焦った様子になった。
………バカだなぁ。
神兵は俺の言葉と、そいつの顔を見て理解したらしい。
俺に銃口を向けた。
「へぇ。」
俺はにやりと口角をゆがませる。
「は、はは!そいつらはお前の虚言には惑わされないとな!お前ら!いますぐ撃て!」
そいつがそう言い終わった瞬間に銃声があたりを包んだ。
そして。
そのリーダー?が倒れた。
神兵の撃った弾丸を全身に受けて。
「お疲れ様。よく信じてくれたな。」
俺がそうねぎらいの言葉をかけると、そいつらは無言でこちらに敬礼し、どこかへ行った。
「主人を撃った神兵か。」
あいつらは今後、どうやって生きていくつもりかな?
まぁ、どうでもいいだろう。
そう思い、俺はもともとの目的である、下界に向かって飛び降りた。
「今回、呼び出した理由はわかっているな?」
「はい。例の男についてですね。」
俺は今、部長室にいた。
部長室はかなり豪勢だ。
かなり部署がでかいのもあるだろう。下界の社長のような立場がこの部長だ。
「そうだ。そして、単刀直入に言おう。そいつを排除しろ。」
それが仕事らしい。開発管理部警護所の久しぶりの仕事だ。
俺は一言、わかりましたといい、部屋を出た。
俺の予想ではもうすでに例の男は下界に降りている。
よって、汚れた下界に降りることにした。
何が好きで例の男は汚れた世界に墜りようと思ったのか疑問だ。
まぁ、そんな理由なんてどうでもいい。俺が求めているのは仕事の達成だけだ。
そういい、仕事用の脳に切り替えた。
俺は、一丁のライフルを持つ。
警護所に入所したときから使っている愛銃だ。
高精度・高威力が売りのセミオートライフルだ。マークスマンライフルとも下界では言うらしい。
俺は、マガジンを差し込み、薬室に弾を送った。
どこにいるかはわからない。見つかるまで銃のセーフティーをかけておく。
そして俺は、ビルの上を飛びながら神気を探った。
天界から降りてすぐさま遠くへ行こうとは思わないだろう。
まずは天界から降りた場所のすぐ近くを見て回ったりすると俺は予想した。
だから、天界から降りた場所から半径50メートルの範囲を家出した猫を探すかのように入念に神気を探り続ける。
ところどころ、極小の神気を感じることはあるが、それは心が多少きれいな人間のものだ。
神であれば巨大な神気を感じれるはずだ。
そう思い、徹底的に探し続けたが、いなかった。
「予想が外れたか。」
遠くに行っていないというのはおそらく正解だ。
ならば、この都市全体を探すことにしようか。
「まったく。神の贈り物である大地にここまで汚れた生物が蔓延するとは。」
はぁ。と、あきれた溜息をつき、またビル群の上を飛び跳ねた。
「いた。」
探索範囲を広げてから少し。
ようやく見つけた。
「全く。汚れをうけて神気がずいぶんと弱まっている。」
全く。何をしているのだ。
だが、その汚れも関係ない。
殺してしまうのだから。
そいつがいたのは路地裏だった。
何やら女性と話している。
女性と離れた時が狙い目だ。
人間の記憶消去許可証は持っていない。
しょうがないので離れるのを待っていた。
………路地裏で女性と話すなんて。
恋愛小説のようなものじゃないか。
天界ではかなり恋愛小説が流行っている。
それも主人公は人間だ。
汚れた人間でも本の中の人間は汚れていない。
さらに、恋や愛という感情は神たちにはない。
人間特有の感情だ。それが神の目には美しく映ったらしい。
かなりの大ブームだ。
今までは下界の恋愛小説なんかを持ってきていたが、最近では自分たちで書くという神も出てきた。
俺も、読んだことはあるが、その話でこんな感じのがあった気がする。
よくは覚えていないが。
………いけない。仕事中だ。仕事に私情は挟んではいけない。
だが、そんなことを考えているうちに離れた。
俺はライフルを肩につけ、スコープを覗いた。
さすが神の発明品。覗いた瞬間にゼロイン調整だって終わる。
汚れた人間の作る偽物とは違う。これは本物だ。
あとは引き金を引くだけ。
そう思い、引き金を引いた。
銃声がサイレンサーによってかき消され、人間が気づくなんてことはなかった。
だが。
一人の男に気づかれた。
ターゲットに。
「あのねぇ。俺は今、ただ生きているだけだ。邪魔しないでくれ。」
そう、そいつは言った。
作者自身が新しいジャンルとかに挑戦するための話です。いろんなこと展開になるかもしれませんが、できる限り面白くできるように頑張っていきます。評価等お願いします。




