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小鳥たちの小話

駒鳥は寵愛を望まない

作者: 織宮 圭

シリーズ作品ですが特に話はつながっていません。


 とある国の王立学院には、ここ半年あまり注目されている女生徒がいる。男爵家の庶子であり、少し前まで平民として市井に暮らしていたという少女だ。


 淡く赤みを帯びた金髪は貴族としては短く、緩やかにウェーブしていて、ぱっちりとした大きな瞳は夏の空のように青く、どこか勝ち気そうな光を宿していた。


 元平民らしい無邪気さの、可愛らしい少女だったが、彼女が注目されているのはその可愛らしさ故ではなかった。この学院の生徒たちにおける権力の頂点……第二王子に気に入られ、追い回されているのを何人もの生徒が目撃していたからである。


 相手は第二王子であり、王族である。元平民で権力には疎いといっても、当然無碍には扱えない。そもそも平民なんて権力の最下層に当たるわけなので、尚更だ。


 その上、第二王子には幼い頃から決められた婚約者がいた。先王陛下の妹姫が降嫁した、そう高くないとはいえ本人にも王位継承権がある公爵令嬢が。


 第二王子に侍るということは、同時に公爵令嬢の敵となるリスクを負うということでもあった。気に入られ、追い回されているだけであっても。


 ところが、元平民の少女はある日、唐突に行方をくらませた。

 生徒たちは好き放題に噂した。公爵家に消されたとか、男爵が危機感を抱いて呼び戻したとか、王家からの圧力があったとか。


 だいぶ不敬では? という感じの話もあったが、誰も追及されなかったようなので許されたのだろう。


 ところで、彼女が消えたのはもう一月ほど前の話である。本来ならそろそろ噂も落ち着いて、そんな子もいたね、みたいな話になる頃合いだ。


 冴えないモテない地方男爵家の三男である俺が、第二王子殿下にこの件の調査なんて依頼されていなければ。




 ロビン男爵家のココ嬢……件の行方不明の元平民少女のことだが、彼女の調査を俺がする羽目になったのは、ロビン男爵家が実家の隣領だからということがある。


 男爵家の領地なんて大抵は小さめの村を二、三集めた位のものなので、隣といえばまぁまぁ近い。

 しかも領地の中でどの家が領主のお手付きで庶子だとかって話はわりと井戸端会議を聞いていれば出るものなので、実際のところ家を継ぐ見込みのない三男と庶子なら交流もあったりした。


 尤も、王子殿下がその辺りの距離感が分かっていたかどうかというと多分分かってなかっただろうけど。依頼された時に知ってるかと聞かれてすっとぼけたけど何も言われなかったし。


 ……そう、すっとぼけたのだ。幼なじみと言ってもいいくらいの相手のことを、何も知らないわけがないのに。


 王立学院はこの国では唯一と言っていい魔法学校でもある。他国には平民でも通えるくらい開かれた魔法学校もあるらしいが、この国では平民が通えるのは教会が読み書きを教える程度の学校とは呼べないものくらいで、魔法使いはほぼほぼ貴族のみだ。あとはたまに旅の魔法使いに弟子入りする人が僅かにいるくらい。


 跡を継ぐわけでもない俺が、わざわざ王立学院に通っている理由もそこにある。王立学院に通うのなんて、上位貴族か、跡継ぎか、国に仕える騎士を目指すか……魔法使い志望か。それ以外の低位貴族は、学費が国持ちでも跡継ぎ以外は通わない。学院に通うよりも、独り立ちの準備をした方が役に立つから。


 俺は魔法使いになるために通っている。幼なじみと二人で魔法使いになって、冒険者として生計を立てる計画だった。


 魔法使いになるのを諦めた時、彼女は笑っていた。「私に魔法使いは向いてなかったみたい」って。


 魔法使いになるために貴族籍が必要だったから、わざわざ男爵家の人達に頼み込んだのを知っていた。毎日毎日図書館に通い、立派な魔法使いになるために勉強していたのも知っていた。


 第二王子に追い回され、その側近の婚約者に忠告を受けたその日に、彼女は夢をすっぱり諦めた。目標の遠さよりも、その前に消されかねない状況が足を引っ張った。


 実家に事情を説明して、父親からの許可を得た彼女はその日のうちに旅立った。暫くは地元の猟師たちに習い、斥候職の修行をするのだという。


 彼女が帰郷する時、一つ約束を交わした。そのために必要なのは、余計な波風を立てず真面目に勉強して、一人前の魔法使いと認められることだけ。第二王子に気に入られることは必要なことではない。


 どうせ噂話以上の話は出ないのだ。知り合いの何人かに聞いて、あとは実家の方でも分からないみたいです、とでも言っておけばいい。卒業後の冒険者登録は隣国まで抜けてからすることとして、活動もこの国はなるべく避ける方向で。


 駒鳥のような彼女は寵愛も、それに伴う鳥籠のような生活も望まなかった。ただ自由な空を飛ぶ鳥のように、広い世界を望んだのだ。

 そして俺も、いつか――



お読みいただきありがとうございます!

評価などしていただけると非常にありがたいです!


↓世界観のほんのりつながっている過去作↓


金糸雀は恋を歌わない

https://ncode.syosetu.com/n7411jm/

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