人類軍との合流
「ブーデスの旦那、ここですよ。ここを抜ければブタペストの東門です。東門は残飯(廃棄された人間牧場の人間)置き場なんで一般兵も汚くて近寄りたがらないんで警備が甘いんですよ。へへ」
リリムが羽をぴくぴくさせながら、手を揉んでモッさんに侵入経路を説明する。
痴漢専用車両(特別快速)はいつものように郊外の森に隠して、すでに私たちはマジックミラー付きトラックに乗り換え済。
次の目標はブタペストを拠点にしているヴァンパイア族。
特に処女の失血死後の血液を好みにする奴だ。ブチ犯壊す。
こいつをブチ犯壊せば幹部級の中でも師団を率いることのできるクラスの魔族を一通りぶち壊したことになる。
その対価として手元には大量のアイテム。
役に立ちそうなもので服が解けるスライム(レベル無視で発動)、役に立たなそうなもので妊娠検査薬(ピンク色)など、性関連という共通点はあるが玉石混合、当たりはずれが激しい。
全体的に人類デコイで作ったものに比べて、最終戦に使うものとしては玉で少しくらいは役に立つか?というレベルだ。
最後の幹部級は役に立つアイテムを落としてくれないかなーと思いながら、私たちはマジックミラー付きトラックでいつものように都市の外壁に近づいた。
「ん? なんか……様子がおかしいな」
モッさんが呟く。
私も気づいていた。
異変は壁の上に立つ兵士たちの姿。
いつもの角や羽が生えていたり、肌の色が緑だったりしている兵士がいない。
また、魔族に占領されている町特有の黒い霧と赤い光もない。
よく見ると制服も人類統一軍の制服だ。
しかも壁の外側に張り出した簡易陣地がいくつもあって、魔族領側に向かって砲台らしきものが並んでいる。
「人類軍じゃありませんこと?」
我々の中で一番視力の良い2Pカラーがつぶやく。
「調べられるか?」
「もちろんですわお姉さま!ちょっとGPSを参照して、と……ん-と。あ、1週間前に市中心部で人類軍と魔族の激しい戦闘記録が残っていますわね。そして3日前に、人類軍の司令官級の入城も確認。データベースを照合しますわ――ヨージェフ大将。ということはあれは人類軍第三軍のようですわね」
衛星アクセス権があるゆえにこういう時に一瞬で所属レベルで特定する2Pカラー。
マジ有能。
あとで一緒にモッさんとファックされてやろう。
「ケイさん!ブタペストは人類軍が奪還していた!早く合流しよう!」
味方であることを確認した私は運転しているケイさんに叫ぶ。
「それは良いニュースだね!じゃあアクセルを踏むよ!」
そう言うとケイさんはアクセルを最大にふかした。
「誰だ!」
人類統一軍の兵士たちの銃口が一斉にこちらを向く。
その様子に怯むこともなくトラックからケイさんが降り、兵士たちの前に立つ。
モッさんではないのは対軍に対しては元帥であるケイさんが一番知名度が高いためだ。
「勇者並びに人類統一軍元帥ケイ・コクガンだ!直ちに本市を占領している軍司令官にとりつげ!」
一瞬、静寂が落ちた。
次の瞬間、兵士たちの顔が一気に明るくなる。
「閣下!?コクガン閣下!!!!おいすぐに銃口をさげろ!命令だ!!」
私たちに最初に声を投げかけてきた部隊隊長と思われる軍人さんが後ろに控えている兵に即座に命令し、最敬礼を行う。
「伝令兵!ヨージェフ大将に至急連絡!勇者様が合流したと伝えろ」
「は、はい!!」
隊長に命令された伝令兵がバイクに乗って市内に飛ぶような速度で走り去っていく。
「コクガン閣下……?勇者様!?本当に!?」
「生きておられたのか!」
「ほかの部隊にも報告だ!勇者様ご一行が東門に!」
門の周りは既に大混乱。
門が急に開き、兵士たちが駆け寄ってくる。
数分後には私たちは歓迎の渦に飲み込まれた。
市街線で激しく損傷した市中心部ではなく、被害が少なかった市南部のホテルに置かれた司令部に通され、将軍の出迎えを受ける。
「コクガン元帥!」
「ヨージェフ大将も壮健の様だな」
どうやら司令官はケイさんの顔見知りの様だ。
まあケイさんは元帥。
大将クラスと顔見知りなのは当然か。
ケイさんからヨージェフ大将と呼ばれた男性、年齢は60歳前後だろうか、後退した白髪が多く混じる頭髪はその苦労を物語っている。
「よくぞ、よくぞここまでたどり着かれました閣下。貴殿の生存は人類最大の希望です。作戦開始から今まで、音信不通の間は人類にとって暗闇をあるいているようでしたぞ」
「あぁ、秘密行動を強いられていた関係で連絡ができなくなってしまいすまなかった。我々はこの数週間、魔族領内で幹部級を狩り続けてきた」
ケイさんの言葉に、ヨージェフ大将の目が輝く。
「やはり……作戦開始後の魔族軍の混乱は皆さまの作戦行動によるところだったのですね」
「人類軍の作戦進行状況はどうなっている?」
「はっ!改めて報告いたしますと――――」
ヨージェフ大将の説明によると、この3週間で人類統一軍は魔族の補給線を寸断し、領土を一気に取り戻していた。
その後はケイさんがこちらの状況をヨージェフ大将に報告をする。
魔王に敗退したことを告げた時はヨージェフ大将の顔がこわばったが、その後再起を図る方法を敗走中に見つけたとモッさんが補足すると胸をなでおろし、何かを思い出したかのように伝令に声をかけ、ケイさんに耳打ち。
ケイさんは目を見開いたかと思うと、苦悶の表情を浮かべ、その後に「とりあえず今は一晩休みたい」と大将に申し出、大将も「それが良いかと思います」と快諾し、会談は終了した。
その後、私たちは司令部になっているホテルの最上級室を与えられることになり、そこで一度一休みとセックスバフのかけなおしを行った。
その後、一旦ケイさんの部屋に集合し、今後の作戦の練り直しを行おうとしたところでケイさんに再びヨージェフ大将からの使者。
ケイさんは部屋の入口で使者に何かを伝えたかと思うと使者は無言で部屋を出ていく。
『?』
ケイさんの苦しそうな表情を疑問に思う私たち6人。
「ヴィーさん、ちょっと相談が」
そして意を決したような顔のあと、私を入り口に手招きしてきた。
不審に思いつつもモッさんの膝から降りてケイさんの元に向かう。
「なに?モッさんに伝えづらい事?」
全員に伝えづらい事ならばまずパートナーであるリバさんを呼ぶだろう。
私を呼ぶということは、モッさんに伝えづらい事なのだろうとあたりをつけて、私はケイさんに聞く。
「あぁ……これはヴィーさんに判断してもらった方がいいことだともう」
そう言ってケイさんは大将から連絡された内容を私に共有してくる。
「作戦前にデコイの件があったじゃん?」
「あぁ、あの胸糞か……でも今思えば全員やっておけば……まさか」
「作戦開始の1週間後、俺たち勇者一行が音信不通になった事で敗走の可能性を考慮した元老院がデコイにしなかった未亡人を拘束して一旦第3軍に送り付けてきたらしい。もし合流出来て敗走していた場合のために、と。そして、大将から処遇について聞かれている」
確かに、それは決断してからじゃないとモッさんには伝えられないわ。




