義妹を尋問
「さて、七海。話してもらおうか」
私はグリーン車のシートで作られた尋問席に座らされた素巻の四天王兼推定妻の妹――七海の前に立つ。
メス堕ちセックスバフで限界突破ができると判明して希望が見えてきた私たちは士気を取り戻し、次のステップを話し合った結果、もう一つの懸念材料である四天王捕虜であり推定前世妻の妹である妹を尋問するという流れになったわけだ。
「あの」
「あん?」
おずおずと手の代わりに羽を上げてくる推定七海。
「このキモイおっさんを私の視界から顔面から離してくれると嬉しいなーって」
七海の目の前数センチにはモッさんが顔を突き合わせて七海にいい笑顔を向けている。
電車に放り込まれた時に素巻になっている七海は抵抗もできずに嫌そうな顔しかできないでいる。
「私の勇者に何か文句があるのかい七海?」
私はいい笑顔で七海に問いかける。
「すんごいはなしづらい」
「まあお前が嘘いってそうだったら速攻でマジチン100%の種付けプレスで滅殺するために圧かけてるからあきらめて。どうぞ」
「ひっ……!は話すから!元々話を聞いてって私言ったじゃん!?」
「それと嘘つくかどうかは話が別だろう?お前の性格前世基準なら余裕がある時のお前の言動を『俺』は信用してないからな?」
あえて前世で私的な間柄の人と話すときの一人称を使い威圧する。
こいつは姉には頭が上がらない子だったが、それはそれとして『いい性格』はしていた。
良い性格ではなくいい性格。
簡単に言うとドブカスな性格。
こいつ由来で色々被害に遭ったことは割とある。
というわけでモッさんに圧をかけ続けて貞操に危機感を持ってもらいつつ尋問するのが最適解というわけだ。
私の考えを理解したのか推定七海はガクっと肩を落とし「わかりましたぁ」と力なく返事をする。
「じゃあ一つ目。お前、本当に七海か?」
「そうよ薫義兄さん。今はヴィーさんって呼んだほうがいいの?姉さんの誕生日プレゼントを買いに私と一日デートしたら式神つけられてたのに気づかずに一緒に折檻されかけた七海ちゃんですよー」
うん。エピソードの詳細的にこいつは七海っぽい。
後あれ気づかれたのは魔法由来かい。
「じゃあもう一つ。なんでここにいるんだ?」
「姉さんに引き摺られてきた以外にある?」
「質問を変えようか。目的は?」
「そうそれ。それから説明したかったのよ私は!」
ようやく聞いてほしかった質問が来たとばかりに七海は話し出す。
「ところで私たちが向こうで魔法使いだったってことは義兄さん知ってる?」
「ここに来てからその情報知った」
「まあここはファンタジー世界だし。そう言うこともあるか……じゃあそれを踏まえて手短に話すね」
「薫義兄さんが終末期に入ってから、姉さんは義兄さんの魂を移す器の開発に取り掛かったの。姉さんは向こうでは世界の五指には入る魔法使いでね、兄さんの病気が分かってからでも十分間に合う予定だったし、事実器は間に合った。私も手伝ったのよ?デスマだったわ」
「つづけて?」
褒めてといった視線を感じたが、別にその器とやらは結果的に使われなかったわけなので無視して続きを促す。
「で、姉さんが作ったホムンクルスの身体に薫義兄さんの魂を移して、そこで魔法の存在を明かして、家族みんなでハッピーエンド。報酬として私もおこぼれ貰う手はずだった……なのに」
「実際は『俺』は死後は転生してこの世界へ」
「そう。地球の魔法法則ならあの器に入るはずだった。だけど薫義兄さんの魂は世界の外に消えていった。死後すぐに魂が連れ去られたの。他の世界の神の仕業だって姉さんはすぐに気づいて……怒り狂ったわ」
七海の声に少し震えが混じる。
まあ妻がマジで怒り狂ってる姿は怖いからなぁ。
なぜか今は少し耐性ついているけど。
「んで、姉さんは速攻で監督不行き届きで地球の神様ブチ転がして撲殺。次に天使たちを拷……おはなしして拉致先を特定。この世界のシステムに侵入して、女神が世界に干渉するシステムの脆弱性を利用して、強引に魔王と四天王に転生したの」
なんか地球の神様が巻き添え死してる。
可哀そ……いや、管理責任あるし残当か。
「最初は薫義兄さんを保護して単純にこの世界でのんびり生きてく予定だったんだけどね……でも……薫義兄さんがTS転生させられて、目の前のこいつとセックス三昧と知った瞬間闇落ち。とりあえず世界ごと滅ぼして1から作り直してから考えよう!って聞かなくて」
悲報。元妻、現地魔王よりも魔王ぽいことをしようとしてる件。
「そもそもTS転生してることは把握してなかったのか?」
「いや、転生って普通TSしないから。魂が変質するからよほど悪意があるか人間に無頓着な存在じゃないとやらないから。自然に来世で性別変わることなんてないから」
そうなんか。
「続き」
「……さすがに世界滅ぼすのは目覚めが悪いじゃない?」
「目覚めが悪いですむのが十分あいつ側の人間だぞお前」
「で、『俺』にそれを伝えてどうしようとしてたの?」
「姉さんからバックレて二人だけで世界を放浪しようかなって。薫義兄さん見つけないまま世界滅ぼすと薫義兄さん見つからなくなるから薫義兄さん見つけるまでは世界は安全だし」
「なんでお前は『俺』と駆け落ちじみた事しようとしてるわけ?」
なに?私のこと好きなの?
「だって姉さんが薫義兄さんの事を見つけてなかったら確実に薫義兄さん私の旦那だったし」
確定の未来として断言する七海。
好きだったんか。マジか。
「これが私が知ってる情報すべてよ。ほら全部しゃべったし開放して!一緒に逃げよう薫義兄さん」
ん-……。
「後ろの仲間も一緒じゃなきゃ嫌」
「うっ……背に腹は代えられないわ。とりあえずグルジアのあたりが私の支配領域だからそこで一旦落ち着こう?姉さんもあのエリアにあたりをつけてるだろうけど1~2か月なら王侯貴族レベルの生活水準維持しながら逃避できるわ」
「ん-……」
それはだいぶ魅力的。
メス堕ちバフの検証に1か月も掛けるつもりはないが、落ち着いた場所で検証できるのは魅力だ。
多分人類領に戻った場合は魔王に即察知されて検証どころじゃなくなるだろうし。
だが、七海に主導権を握られるのはまずい。
何故ならこいつはよく二重三重に裏切るから。
目が本気だし、前世のあれこれを鑑みると前世妻を出し抜こうとしている現状は真実っぽいが、それは妻に再度寝返らないとはイコールではない。
なんとか屈服させる必要がある。
あぁ、そうだ。ちょうどいい手札があるじゃん。
一度モッさんを七海からはがしモッさんに耳打ちをする。
モッさんは心底嫌そうな顔をしていたが押し通す形で納得させた。
「どう?」
「うん。基本それでいいよ」
「やったぁ」
俺の返答にぱっと明るくなる七海。
「ただし」
「?」
「俺に仲間を捨てさせる前提の作戦を立てていた罰として一度モッさんに抱かれて来い」
「え゛」
「とっとと済ませよう?ね?」
ぴしっと固まる七海。
デコイを作る時とは別のベクトルの心底嫌そうな顔と声で迫るモッさん。
何が不満なんだよ。
さっき説明した通り性格はドブカスだけど見た目は前世も今も美女だろコイツ?
種付けおじさんなんだから女抱くときは嬉しそうにしろ。
役目だろ。
「あ、モッさん、種付けプレスはいらんけどマジチンは100%でな」
「りょ」
「ちょっと薫義兄さん!?」
何だよわからせなんだから当たり前だろうが。
「あんたもなに嫌そうな顔してるのよ!勃起してるくせに!勃起してるくせに!!嫌なのはこっちよ!?ちょっと何か言いなさいよ!?」
モッさんが嫌そうな顔をしながら迫ってくるのをいろいろな感情がごちゃ混ぜになった台詞で拒否の姿勢を見せる七海。
しかし素巻の状態の彼女は逃げることもできずにもごもごするだけ。
「やだ! やめて! 薫義兄さん助けて!!きゃああああああああああああああ!!!!」
車両の中に七海の悲鳴が響き渡った。




