女神との会話
……あれ?
視界が白い。
まばゆい光が辺り一帯に広がり、音もない。
何もないのに真っ白であることはわかる不思議な空間。
確か私は……モッさんを痴漢電車に叩き込んだあたりで意識がなくなって……。
そうだ。
魔王戦に見切りをつけて痴漢専用車両に撤退することにし、逃げ込んだはず。
あの後はどうなった?
ここは――ここは見覚えがある。
前世が終わった直後に私はここに来たことがある。
転生空間だ。
とすると可能性はふたつだ。
1.まだ私は生きており、何らかの用があって女神がここに呼び出した。
2.私はあの時に死に、転生するためにここに戻ってきた。
まあ、どちらの場合でも私がやること、というかやれることはひとつしかない。
「クソゲー。再走は無し。どうしても人生をドブに捨てたいのなら実際に転生直後に命をドブに捨てた方が時間の浪費がないだけそっちのほうが建設的。☆1」
なんかレビューできそうな気がしたのでやってみたらできたので、この世界をレビューして送信ボタンを押そうとする。
「ちょっとまって!?終わってないから!?まだ君詰んでないから!!だからクソゲーオブザイヤーへのレビューみたいな内容は送信しないで!?」
その様子をどこかで見ていたのか、転生したときにいた女神が急に目の前に現れて私を制止する。
「えー?」
「えーじゃなくて!というかレビュー機能なんてどこで起動したのよ!?人生再送完了しないと送信できないはずなのに!それ私の所にやってくる転生者全員に見れちゃうようになるんだからうかつに書き込まないで!!」
焦ってるのはそれか。私の時にはレビューなんて見れなかったのでこの女神、もしかしてレビュー書かれるのが初めてレベルでまだ転生者の処理をこなしていないのかもしれない。
たしかECやってる知り合いが言ってたけど、こういうレビューって大体購入者の1~5%くらいって聞いた気がする。
もしかしてこの女神、転生処理人数数十人以下なんじゃ……。
そんなことを考えながらといりあえず女神に口答えしてみる。
「ゆーて今世完了しても私☆1レビューすると思いますよ」
むしろ熟考した結果、クソゲーオブザイヤーに残るレベルの強火レビューをできる自信があるぞ。
「これからアゲアゲだから!えーと、ほらチュートリアル!チュートリアル後の説明だからこれ」
絶対今思いついたであろう言い訳をのたまう女神。
「えー?ほんとぅ??」
この状態がチュートリアルぅ?
絶対嘘だ。
「貴女のメス堕ち進行度が種付けおじさんとのキスで進行したから説明しに来たのよ」
「☆1」
「ちゃんと説明するから低評価レビューしないで!?」
いや私メス堕ちとかしてないし。
必要だからモッさんとセックスしてるだけだし、必要だからキスしただけなんだが????
「ほら、貴方の前世の奥さんと義妹がなんでこの世界に居るのとか、攻略情報とか、そういうの聞きたいでしょ?ね?それを教えに来たの」
「あぁそうなんですか?じゃあ早よ」
私は評価送信ボタンに手をかけたまま続きを促す。
「じゃあまず前世の奥さんなんだけど、これ私にとってもイレギュラー案件」
「続けて?」
「あの二人、どうやったのかわからないけど人の身で転生システムにアクセスして無理やりこっちの世界の魔王と四天王に憑依してったのよ。あなたの世界、初期宇宙時代の地球世界なのに魔法あるでしょう?あの二人、その中でもトップクラスの魔法使いだったのよ」
「☆―――」
「本当だから!女神嘘つかない!」
問答無用でTS転生させた時点でこの女神の信用はない。
ただ、嘘を言っているわけでもなさそうだ。
「本当にどこにセキュリティホールがあるのかの特定で神界が上も下もてんてこまいなのよ……」
うんざりとして表情からそれなりにデスマな雰囲気を感じる。
「そもそも私の前世世界に魔法があるってのそのものが初耳なんですけど?」
「そうなの?転生空間で初手取り乱ししなかったからそういうの知ってる魂かとおもってたけど」
「単純にどうにもならないことに抵抗しないだけっすね」
「TS転生伝えた時全力で泣き叫んでたじゃない」
「だって泣き叫ぶのはダタだし……」
ワンチャンごねたら何とかならないかなの精神なだけで出身の現代地球がファンタジー世界だったとか初耳。
というか魔王と四天王が私の近親者なのは女神も想定外、というかむしろ巻き込まれた側なのか。
「というわけで原因の一因であるあなたも少しは責任感とかそういうのを感じて欲しいんだけど?」
「そんなことできる人外の関係者を安易にディストピアに放り込む管理体制が悪いのでは?」
「ぐっ」
痛いところを突かれたという顔をする女神。
妻がどの程度の苦労をしてこの世界に転生してきたのかは知らないけど、少なくとも神サイドレベルで脅威になるレベルなら私含めて手を出しちゃいけない人リスト的なものに入れておくべきだったのでは?
虎の尾を踏んだ結果この状態な訳じゃん?
「……あなたの言う通り、不手際は不手際。現状だと魔王側のパワーバランスが大きすぎて世界の均衡が乱れちゃうから通常はしないテコ入れ措置、貴方に攻略情報を教えに来たのよ」
「あなたがた神サイドで何とかしてくれればよいのでは?」
「それができないから世界の均衡を保つのには転生者を使ってるのよ。神が直接世界に干渉しちゃうと細かい調整が出来ないのよ。料理に例えると、転生者は家庭用コンロみたいな存在で神は溶鉱炉みたいな感じ。溶鉱炉で料理、できる?」
「無理っすね」
鍋ごと溶けるわ。
だから非常事態でもあくまで転生者に動いてもらわないといけないと。
「チート追加とかそういうのはないんすか?」
「貴女の奥さんの介入でシステムがスバゲッティ状態になってるから、追加チート上げたら何が起こる分からないからちょっと無理」
うーん……妻由来の理由だと強く言えない。
「あ!ヤバイそろそろ時間切れになる」
ちょっと????
まだ攻略情報全然聞けてないんですが?
雑談だけしてさよならは勘弁してくれない?????
「手短に言うから良く聞いて!大丈夫!簡単なことだから!!」
女神の焦り様から延長は不可らしい。
急に真面目な顔になった女神に合わせて聞き逃さないように気を引き締める。
「貴女はTS美少女な訳。で、種付けおじさんはこの世界の法則的に役割をきちんと果たせると強くなるわけ」
「うん」
「つまりあなたがメス堕ちすればするほど、種付けおじさんの格が上がってスキルは高まる!」
「……は?」
真面目に聞いてるのに何言ってんだこいつ?
「貴女にとっては残念だけどこれはこの世界の法則なの!だから頑張ってメス堕ちして!完堕ちしたら計算上は魔王も楽勝で撃破できるから!!!」
「メス堕ちの定義ちゃんと教えてくれ!快楽レベルじゃないのか!?」
「女になれ!」
すでに私の身体は女だろうが!!!
「情報が雑過ぎだこら!!!これ以上どうすりゃいいんだよ!!具体的に――」
女神の姿が薄くなる。
空間が揺らぐ。
「世界の命運は貴女のメス堕ち進行度にかかってるわ!大丈夫!想いに素直になればできるから!何とかステータス改修も間に合わせたから!」
なんかキラキラしながら要領を得ないクソ情報のみを垂れ流し続ける女神。
「なんっじゃそりゃあ!!答えになってねぇ!!」
「時間切れね。がんばって」
待てこらぁ!!!!
なんかいい雰囲気でフェードアウトをするんじゃない!
女神の神々しさごり押しでごまかそうとしてるだけじゃねえか!
白い光が強くなり、視界がホワイトアウトする。
どうすんだよメス堕ちって!!!おい!!!




