魔王戦
魔王の頭上に形成された巨大な赤黒いエネルギー球が禍々しい光を放ちながら膨張していく。
空気が震え、瘴気が渦を巻く。
やばい。あれはやばい。
モッさんと私、あと2Pカラーは自力で何とかなるかもしれないがあれを食らったら確実に後ろにいる4人は確実に消し飛ぶ。
そんな迫力がある。
とりあえずは魔王の意識をそらさなければ。
うーん、とりあえず煽ってみるか。
「モッさん!」
私は急いでモッさんに耳打ちする。
モッさんが凄い顔をする。
(何それ!?言いたくないんだけど!?)
といった顔だ。
だが時間がない。私は首を魔王の方に向け、サッサと言えとモッさんに促す。
「~~―――魔王!!」
モッさんは観念したかのように私の腰を腕で引き寄せ、そして魔王に向けて叫ぶ。
「私の旦那に触――――」
魔王の顔に浮かぶ怒り。
「―――お前の旦那! よかったぜ!」
「――――――あ?」
瞬間、空気が確かに凍った。
ひきつった笑顔なのだろうが、モッさんの顔立ちのせいで煽り満載のうざい笑顔になっている。
裏返った声もキモさを倍増し、相乗効果で煽り倍増だ。
未だに私に執着している様子の妻の状態からして効果は抜群だろう。
ほら、目の前の魔王の顔が憤怒に歪んでいる。
肩がプルプルと震え、口が笑顔のような、への字のような不思議な形に歪む。
ルビー色の瞳が怒りで輝き、エネルギー球がさらに膨張。
「やろぉぉおぶっくらっ@:vczんkぅvhbhjg、j―――――!!!!!」
最初の部分しか聞き取れないくらいに言語を崩壊させ、般若の形相でこちらに突っ込んでくる。
突っ込むのに邪魔になったのであろうエネルギー球は真後ろにぶん投げていた。
ドゴシャアアアアァァアァアアアン!
後方で派手にはじけ飛ぶ魔王城。
般若の形相で翼を広げて突っ込んでくる魔王。
美人の憤怒顔って怖いんだね。
前世の5倍増しくらいの恐ろしさがある。
あーも―無茶苦茶だよ。
目論見通りとはいえ怖い。
ものすっごい怖い。
モッさん早く撃破して?役目でしょ?
魔王の手爪が赤いエネルギーを帯び、刃物のように伸びる。
そしてその爪でモッさんの首筋を狙っているようだ。
しかし接近戦ではこちらも強力なスキルがある。
モッさんの手を私の胸に誘導し、思いっきり鷲掴みにさせる。
これで攻撃力にもオッパブボーナスが付く。
「モッさん!やったれ!」
「うん!種付けプレス100%!!」
私をケイさん達がいる後方に投げ飛ばし、考えうる最高のきもい挙動――服を半脱ぎにし、魔法少女の変身シーンのような動きをしながら魔王に接近するモッさん。
2Pカラーが「さ、さすがにその動きは管理者様の魅力が半減しますわ」とお墨付きのキモイ挙動だ。
鍛え上げられた筋肉質な肉体か力士のようなふわもちの脂肪の中に筋肉を感じる肉体でアレをやればそれなりに様になるのだろうが、モッさんは種付けおじさん。
中はガチガチの肉達磨なのだが表面はぶよぶよで波打つぜい肉が最高にキモさを底上げしている。
脂肪の中に筋肉がミチミチにつまった油達磨なのは力士系の肉体のはずなのに、こう絶妙にだらしない身体なのは本当に何なのだろうか。
というか攻撃が通って魔王のナカにモッさんのアレがぶち込まれた時、私はどういう目線でそれを見ればよいのだろうか。
妻が他の男にヤられたとみるべきか、モッさんの巫女としてモッさんの女?が増えたとみればよいのか。
どちらなんだろう?
……ん?
あれ?別に後者は考える必要ないのでは?
種付けおじさんの経験人数が増えたところで別に私にとってはどうでもよいのでは?……あれ?
なんかイラっとする。
あれか、まだ私の魂に残る男の部分がモッさんだけいい思いをするのにイラついてるのか。今更?
そんなことを考えながら魔王とモッさんの激突を見守る。
モッさんがイチモツをいきり立たせながら魔王と激突する。
「ぬんっ!!」
「この身は!旦那のだつってんだろうが!オラァアアアア!!!!」
二人が激突した途端、衝撃波が発生しあたり一帯のすべてを吹き飛ばす。
「絶対防御!絶!!!」
ケイさんのスキルにより私たちは何とかしのぐもののケイさんのステータスを見るとMPがごっそりと持ってかれていた。
「やったかな!?」
翔太さんがフラグのような言葉を放つ。
「私が旦那以外を受け入れるわけないでしょ!!!」
叫ぶ魔王。
ダメージは受けているようだが服は乱れておらず、モッさんのスキルが貫通していないようだった。
ちょっとやばいなこれ。
遠距離攻撃用のステハゲビームが躱されるのは予想していたとはいえ、種付けプレスの方はカンストしていることもあって大ダメージくらいは通ると思っていた。
見た感じ小ダメージってところだ。
表示されている敵HPも大して減っていない。
それに対してモッさんの方はそこそこHPを持っていかれているようだ。
いや、まだあきらめるには早い。
こっちは3人いるんだ。
とりあえずもう一回隙を作らないと……。
「サフィさん翔太さん一瞬貸して」
「あとでヴィーさん付きで返してよ?」
OK!
サフィさんの許可が取れたので翔太さんを引き寄せモッさんの時の様に手をつかみ私の胸と下腹部に手を寄せる。
「翔太さん煽って!!」
「えーと―――やーい魔王!お前の旦那肉便器―!!!!」
「浮気は許さないって言ってんでしょパパ!!!!!!!!!!!!!」
あれ?何故かモッさんの時と違って私にヘイト向いてない?
モッさんの方に向いていたはずの首が180度グルンとこちらを向き、そのままこちらに慣性の法則を無視して突っ込んてくる魔王。
怖い。
「破魔の剣!薙ぎ払い!!!!」
ケイさんが剣を振るい、魔王の軌道を阻む斬撃を放つ。
翔太さんも魔法で火球を連射。
「邪魔!!!!!」
それを魔王はまるで子供のおもちゃをはねのけるかのように爪の一撃でケイさんの剣が弾かれ、翔太さんの火球は羽で弾かれて明後日の方向に飛んでいき爆発する。
「くそっ、歯が立たねえ!」
「退避!!!」
翔太さんが歯噛みする。ケイさんも息を荒げて後退。
しかし私たちの攻撃メインはあくまでモッさん。
「スペルマロケットォォォォオオ!!!」
背中ががら空きになった魔王にスペルマロケットで一気に接近する。
「―――からの種付けプレス!!!!」
モッさんの巨体が魔王を押し潰す。
ドスン、という重い音。
魔王の体が地面に沈み、ダメージを与えたはず――。
「ぐっ……!」
魔王が呻く。
しかしHPの割合は少ししか減っていない。
防がれている。いや、そもそもHP数値が高いのか?
「ケツ出せ魔王!!!!」
「ああああまああああおおおおおとおおおこおおおごがぁぁぁぁぁあ!!!」
モッさん言葉に魔王が反応。
魔王の翼がモッさんを弾き飛ばし、立ち上がる。
ドレスが少し破れているが、致命傷じゃない。
「このデブ……よくも!」
魔王の反撃。
赤いエネルギーの鞭がモッさんを叩く。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
モッさんのHPが一気に半減しこちらに吹っ飛ばされる。
ヤバい。
まだ使いどころじゃないと思っていたがアイテムを使うところだな。
そう判断した私はモッさんの元に駆け寄り2つあるアイテムの一つ『アクメスイッチ』を渡す。
受け取ったモッさんは迷わずスイッチをグーで圧した。
「アクメスイッチ!!!対象:魔王!!!」
スイッチを押すと、魔王の体が一瞬震える。
「セクハラぁああああ!!!!!!」
そしてスイッチを壊そうと小ぶりなエネルギー球を投げつけてきた。
「うおっ!?」
ギリギリのところでそれを避けるモッさん。
多少効いてはいそうだが想定の効果では全然ない。
アイテム名からして相当なリアクションがあってしかるべきだ。
と、いうことはそれが示すやばい事実に私は気づく。
このアクメスイッチは使用者のHPの1.5倍までならば『問答無用で』アクメさせれるスイッチ。
それが多少しか聞いてないということは、魔王のHPはモッさんの1.5倍以上あるということだ。
私はモッさんに聞こえないようにケイさんに話しかける。
「……元々の魔王のHP想定は?」
「―――モッさんの8割」
うん、想定を大幅に超えている。
「正直、攻撃アイテムがない状態でHPが上の相手を倒すのは厳しいと自分は思う……」
私も同意見だ。
「撤退しましょう」
「できる……?」
「何とかするしかないでしょう」
撤退するためにはもう一度魔王の理性を飛ばして意識をこちらに向ける必要がある。
しかし魔王もバカではない。
同じ手に二度引っかかることはないだろう。
さっきの衝撃以上の衝撃を与える方法……。
一つあるか。
「モッさん」
「何?何かいいアイデア浮かんだ?」
「……撤退だ」
「何を言ってるの!?ここで撤退したら何もかもが――――うむっ!?」
異を唱えるモッさんを無視し、私はモッさんに飛びつき唇を奪う。
魔王の方を見る。驚きに目を見開いている。
よし、ちゃんと見てるな。
私はそのまま魔王に見えるようにモッさんの口に舌を入れる。
「!?」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
驚くモッさん。大声を上げる魔王。
「っ!?」
そして何故か舌を入れた瞬間に私の意識も一瞬遠くなる。
(なんだこれ!?)
何かが持ってかれたようなそんな感覚。
しかしここで意識を手放すわけにはいかないので気合を入れて意識を保つ。
「gんすえrghんzbきうyhcvべすいlhgw!?!?!?!?!?!!!!!!!」
一方の魔王。
目論見通り半狂乱状態の魔王がこちらに突っ込んでくる。
攻撃をしようとかいうのではなく、これは私とモッさんを引きはがそうとしてるやつだ。
私にはわかる。
故に隙だらけ。私のスキルを使う隙ができる。
――傾国の美女Lv3使用――
「もっさん!アイテム使用:アクメスイッチ、痴漢専用車両(特別快速)」
「アクメスイッチ!!!痴漢専用車両(特別快速)!!!!」
私の言葉をなぞるようにモッさんがアイテム使用を宣言する。
アクメスイッチの効果で一瞬魔王の動きが鈍くなる。
そして次の瞬間私たちと魔王の間にどこからともなく現れる15両編成の特別快速電車。
私たちの地面はなぜかプラットフォームに代わっている。
電車は急停止するものの先頭車両が魔王と跳ね飛ばす。
そして停車した電車は私たちの方向のドアを開ける。
「皆乗って!!!!四天王忘れないでね!!!」
全ての車両のドアが開き発車ベルがプルルルルルルルルルとどこからか鳴り響く。
私の頭の中でも高い金切り音がなり、正直今にも倒れそうだ。
「でもモッさん!ここで退いたら―――!!!」
「いいから乗れやオラl!!!!!」
「こ゜!?」
うだうだ抵抗するモッさんを電車に蹴り入れ、そのまま私も倒れるように電車に乗り込む。
隣のドアを見るとケイさん翔太さんリバさんサフィさんが素巻にした四天王を放り込んで私たちと同時に乗り込んだ様子。
私たちが何をしようとしているのか気付いた様子の魔王も乗り込もうとする。
乗り込めたら中で無効化できるしそれでよし、乗り込めなかったらレベル差が分かるのでそれでも良し。
「まあああああてええええいれろおおおお!!!!」
どうやら魔王は乗り込めない様子。つまりモッさんと同レベルのカンストってことだ。
発車ベルが鳴り終わり電車が高速で発車する。
魔王が追って来ようとするが、移動速度はそれほどでもないようですぐに電車に引き離される。
離脱が成功したことを確認し、限界になっていた私は意識を手放した。
原因は間違いなくモッさんとのキス、だとおもう。
……なんなんだこれ。




