市街地掃討戦
私たち勇者一行は幹線高速道路を利用して猛スピードで市街中心部へと移動中。
すでに市外外縁部は火の海。地響きが断続的になり続き、一部のエリアでは黒い霧が晴れつつも謎の赤い光は炎に代わり、とても終末みの香る風景が展開されている。
まあ、
「ステハゲビーム100%!!!!」
クアッ!!!!
ピッ―――――――
ゴシャァァァァァァァアアアアアン!!!!
終末みをもたらしているのはこちら側な訳だが。
モッさんがスキルを使うたび、視界が真っ白になり光の筋が目の前の光景を横一文字に薙ぎ払い、光が当たった一帯が爆発する。
闇はそれで霧散していくのだが、赤い光は炎に代わるので禍々しさは低減せず、さながら私たちは終末をもたらす破壊の使者みがある。
もちろん敵も無抵抗でいるわけでも無く、道路の前後から時折魔族がPOPしてくる。
それを受けるのは翔太さんとケイさん。
運転はいつの間にかリバさんがやっている。
「へいへい!ざーこ☆ざーこ♪僕はここだよあててごらーん!」
「オスガキィィィィィイイイイイイ!!!!」
翔太さんが腰を振りながら煽ると無秩序な襲撃が一気に翔太さんに集約さる。
「うわこっわ!ケイはやく!!!」
「破魔の剣!薙ぎ払い!!!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
そして敵が密集した段階でケイさんがスキルを使いなんか光るかっこいい剣で敵を薙ぎ払う。
普通に強いなケイさん。
「レベル90代だからね、防衛一択なら魔王の攻撃を何発かは受けれるよ」
青白い光る大剣を肩に担ぎながら得意げに言うケイさん。
そうだよな。
市街地無差別に薙ぎ払って戦略爆撃やってるモッさんが規格外なだけでケイさんや翔太さんも普通に四天王クラスとやりあえる程度には強いんだよな。
まあ規格外な能力の代償としてスキル名がおふざけ100%のクソスキル名だけど。
「ヴィーさん、次はどのあたりに狙いを定める?」
「うーん。2Pカラー。敵が多そうなエリアは?」
そんなことを考えながらモッさんに促されて次の獲物を定める。
といってもここでやることは四方八方にステハゲビームをぶっ放して防がれた建物に突入して最後の四天王をぶちのめして拉致するだけなんだが……。
すでに都市外縁は半分更地半分瓦礫の山。進行方向も次々に爆発炎上中でとりあえず右から順番に爆破かなーとかそんなレベルだ。
「左前方のスタジアムに敵が終結していますわね」
2Pカラーが前方数キロメートル先のスタジアムを指さす。
普段は建物に隠れて見えない位置にあるだろうスタジアムが瓦礫の丘の向こうから顔を出していた。
「じゃあそっちにすっか。モッさんアレ行こう」
「はいよーステハゲビーム100%!!」
クアッ!!!!
ピッ―――――――
ゴシャァァァァァァァアアアアアン!!!!
モッさんがビームを進行方向左1/4くらいの建物が触れた瞬間に爆発炎上する。
「おっ」
「スタジアム、半壊だけど建物残ってるね」
周りの建物が突き飛ばされて爆発炎上しているにもかかわらず半壊で済んでいるスタジアム。
ということは多分あそこに魔王城突入前の最後のターゲット、夢魔族の四天王がいるはずだ。
「リバさん!目標左前方スタジアム!」
「あいよ!突っ込むよみんな!」
運転席につながる窓を開けリバさんに叫ぶと、リバさんはハンドルを大きく切ってガードレールを突破しスタジアムにトラックの進行方向を強引に変更する。
メキメキメキという音と少しの衝撃と共にスタジアム前の広場にトラックで突っ込む私たち一行。
「ん?」
スタジアムを見ると、半壊した観客席の頂上あたりからこちらに飛んでくる人影。
「―――ー!――――――!!!
何やら右手に拡声器、左手には大きな白旗を掲げ、大きな蝙蝠のような羽を広げてまっすぐこっちに向かってくる。
「―――ん!――で――!!」
拡声器で叫んでいるからか、まだそこそこ離れているがギリギリ声が聞こえそうだ。
「なんだ?」
「―――オル義兄さ――――」
そしてそいつはまっすぐにトラックの窓に向かって突入してきて。
「破魔の剣!突!!!!」
「あきゃぺろ!?」
ケイさんになで斬りにされて90度進行方向が変わり斜め後ろに吹っ飛ばされる。
「あ」
「ちょっとモッさんヴィーさん何ボーっとしてるの!?」
こちらに向かって叫ぶケイさん。
「あ、いや。白旗持ってたし何か叫んでたし」
「あいつら魔族は欺瞞のためなら何でもやるって言ったでしょ?ほら正面!」
ケイさんが指さした先にはスタジアムからあふれ出魔族の軍団。
どうやら白旗を振って何かを叫び、こちらを油断した段階でズドンといった計画か。
「モッさん!」
「わかってる!ステハゲビーム100%!!」
モッさんがすぐさま正面の敵をスタジアムごと薙ぎ払う。
危ないうっかり騙されるところだった。
いや、でもあの夢魔族。
妙に気になる言葉を言っていた気がして2Pカラーに確認する。
遠くの人物の口の動きなどで何を言っているのかを確認するならこいつが適任だ。
「2Pカラー。あの夢魔族が何を言ってたか聞き取れた?」
「えーと『かおるにいさんはなしをきいて』と言っていたようですわね」
薫義兄さん。
私をそう呼ぶ人物は一人心当たりがある。
しかしそれは絶対にこの世界に居る人間ではない。
いや、いつから私は勇者と巫女だけがこの世界に転生していると錯覚していた?
なぜ絶対に魔族に転生者はいないと錯覚していた?
一つの可能性。
極度に低いがゆえに頭の中から除外していた可能性に気づいた私は急いでモッさんを止めようと視線をあの夢魔族が吹き飛んでいった場所に移す。
「種付けブレス50%!!!!!」
「あああああああああああああああああああああ!!!!!」
そこには夢魔族の四天王と思われる大きい羽根の白髪の夢魔を自らの巨体で圧し潰すモッさんの姿。
押しつぶされた夢魔は断末魔を上げて白目をむいている。
「ふぎゅぅ………」
「よっしゃ倒れたぞ!」
「しばれしばれ!」
「簀巻きにしろ!」
そして力なく倒れる夢魔とそれを手際よく荒縄でぐるぐる巻きにするモッさんケイさん翔太さん。
モッさんの絵面が強すぎてどう見てもいたいけな美少女を誘拐する強姦魔なんよ。
「あー……」
その夢魔を凝視する。
意識がなく、力なくぐったりしている推定夢魔の四天王。
うーん。見た目だけだと心当たりがない。
当然か。
私だって性別ごと変わってるんだ。
仮に知り合いだとしても気づくことはかなり困難。
何かを伝えようとしていたはず、でもそれを聞く機会は今の時点ではなくなってしまった。
猛烈に嫌な予感が私の背筋を駆ける。
絶対に聞いておかなければまずかったことを聞き逃したような、そんな感覚。
残る無事な建物は目の前の高速道路の先、瓦礫の山の中で唯一無事な構造物である巨大城郭――魔王城。
作戦は最終段階に入ろうとしていた。




