大陸間弾道マジックミラー付きトラック
荷台の小窓から見えるトラックのフロントガラスが摩擦で赤く光っている。
「このトラック、耐久度どうなってんだ……?」
「見た目が似ているだけでイメージ元のアレとは別物の何かだと思ったほうがいいと思うなぁ自分は」
そんな感想を漏らすケイさん。
マジックミラー型トラックは現在高度1万メートル、大侵攻前の旧人類領辺境部(前世ポーランドのワルシャワあたり)を弾道飛行中。
2Pカラーによると現在の速度はマッハ5とのこと。
当然そんな速度で移動すればただの貨物トラックならすぐにバラバラになるところだが、さすがモッさんのスキルで権現してるトラック、全然揺れもしない。
なお、モッさんは前回同様トラックの外に括り付けられている。
朝に使っていたダクトテープを流用してガチガチだ。
ただ、それだとトラックの中から声を掛けられないため、耳元にホースを括り付け、口元にもホースを張り付けて意思疎通ができるようにしている。
そして魔王領の地図なのだが……原作作った奴らが飽きたのか、西部の亜人領や人類領は地図は前世の欧州そのまんま流用とはいえオリジナルの名前がついていたのに、東部の魔王領については前世現実の都市名がそのまんまついている。
ちなみに魔王城がある都市はモスクワだし、魔王城があるのはクレムリンあたりだ。
おかげで地図を読むときに分かりやすくはあるんだが、なんだかモヤモヤするのはなぜだろうか。
「そろそろワルシャワ上空を通過致しますわ~~~」
高精度GPSこと2Pカラーが受信した電波により第一目標到達が判明する。
マジックミラー越しに地上を見ると、進行方向の先には昼間にもかかわらず黒い霧に覆われ禍々しく赤く光るエリア。
魔族が完全に掌握した都市はあのような色になるらしい。
私はモヤモヤを振りほどき、ホースでモッさん連絡する。
「モッさーん、目の前の都市がワルシャワ!」
「了解!ステハゲビーム100%!!!!」
私の言葉に即反応し、即スキルを宣言するモッさん。
ピッという光で一瞬マジックミラーが真っ白になり、一瞬後には眼下のワルシャワ全域から煙が上がる。
「うおっ!?自分の頭の中で連続でレベルアップ音が!?」
「うへぇ……なにこれぇ……」
「あ、頭が割れそうよ。大丈夫?ウチの頭無事?」
「ア、アタシ気持ち悪くなってきた」
そしてその煙が上がるのとほぼ同時にケイさん、翔太さん、サフィさん、リバさんがそれぞれいろんな方向を向きながら悶絶している。
私の時同様ピロンピロンというレベルアップ音がDDos攻撃みたいに無限に頭の中で連続で響いでいるのだろう。
まぁレベルアップ音が連続で上がるだけでも相当うっとうしいけど、それに加えてパーティー組んでるだけで平等に経験値入ってくるのって、現実だとすごい違和感だよね。
「レベルどれくらい上がりました?」
「えっと……うわ43から70まで上がってる……確実にワルシャワにいた四天王倒してるよこれ……」
私の質問にケイさんがドン引きしながら返答する。
訳もわからぬうちに生滅することになった四天王の一人に若干同情心が湧く。
ちなみに前線指揮官の四天王はヴァンパイア族、人類の血液が主食の種族なようだ。
「そいつだったら共存できるのでは……?」
「喜怒哀楽で味が変わるみたいでそれ専用の人類牧場作ってるような種族だよ?ちなみに一番人気は新生児の血液」
邪悪だったわ。
これは戦争だからね、仕方ないね。滅ぼそう。
今モッさんが爆撃したワルシャワは直近の人類侵攻で失陥した都市の中でも最大規模の都市だ。
それをノールック戦略爆撃は良いのかと思ったが、魔族が完全に掌握した都市は瘴気が充満し、その瘴気により正気の人間は住めない状態になり、中に残存している人々も血液や恐怖やその他体液供給用に生かされているだけのもう救えない状態になるので諸共消し飛ばす方がむしろ慈悲ということで、そのまま薙ぎ払うことにした。
そういう都市は大体旧人類の大都市のうちの半分くらいがこうなるそう。
残り半分は持ちこたえているのかというとそんなことはなく、ただ人間牧場として間接支配されている状態とのこと。
今回、我々勇者と巫女は魔王城に凸するわけだが、それと同時に人類統一軍も全反攻作戦を実施する手はずになっている。
その負担を少しでも減らすため前線にいる四天王と占領地総司令官にあたる四天王を行きがけの駄賃で凹しておこう、というのが今の攻撃だ。
そして計画通りにワルシャワにいた前線指揮四天王はモッさんのステハゲビーム一撃により消滅。
なんかRPGじゃなくてストラテジーゲームをプレイしている気分になる。
「ケイ、次はミンスクだっけ?」
レベルアップ音が終わったのか回復してきた翔太さんがケイさんに確認する。
ミンスクにいるのは、占領地総司令官のオーガ族らしい。
人類の感情を食らう系の魔族で、特に恐怖がお好み。
都市内がどうなっているかはもう想像に難くない。
今潰した前線指揮官とミンスクの総司令官が実質的な前回の侵攻主力であり、こいつらをつぶすことで魔王を倒す前でも人類統一軍による犯行難易度はぐんと下がるとのこと。
「あぁ、今ワルシャワってことは……次迄5分、ミンスク爆撃後7分弱で魔王城に到着だね」
「じゃあ、その間に魔王城凸の最終確認だけしない?」
「OK。ヴィーさんもそれでいいかい?」
「わかった」
特に異論もないのでケイさんの提案に同意する。
「じゃあ説明を開始するよ」
魔王城決戦の概要はこうだ。
まずはモスクワ郊外にある前世だとシェレメーチエヴォ国際空港があるエリア――――この世界ではドラゴン族の居住エリアになっているエリアに着弾し、その勢いのままにドラゴン族の空軍部隊と四天王のエンシェントドラゴンを薙ぎ払う。
侵攻前はほとんどのドラゴン族が人型形態でこのエリアにとどめ置かれているそうで、ここをまず先に潰すことによって人類による制空権確保が確定する。
人類の魔法使いでも1日に飛び続けられる距離は50キロが限界な中、ドラゴン族は1日に数百キロを飛行できるので、こいつらを一通りここで無効化することで魔王領内の情報寸断にもなるという寸法だ。
そしてドラゴン族居住エリアから直通になっている高速道路にそって南下し、都市を継続的に爆撃しながらモスクワ中心部まで向かう。
ここでは爆撃はモッさん、向かってくる敵の対処はケイさんと翔太さんが担当する。
モッさんのステハゲビームで市街地部分の大半は崩壊するだろうけど、四天王がいるであろう施設と魔王城があるクレムリン近辺は防御魔法で防がれるだろうから魔王城以外で崩壊しない施設に凸。
そこで夢魔族の四天王を半殺しにしたらマジックミラー号に放り込み魔王城に凸。
魔王の前では出し惜しみせずに会敵し次第スキルの限り全ぶっぱ脳筋戦。
後は流れ。
要は空軍→都市戦略爆撃→四天王斬首→魔王斬首の順番に相手が対応できる前に勇者の能力ごり押しで押し切る電撃作戦。
キ=タナイダンジョンの時の例を考えるに不測の事態が起きたとしても最悪魔王城とモスクワ都市圏は壊滅まではもっていけるだろう。
魔王領の行政がどうなっているかはよくわからないが、少なくとも国家のような形で統率が効く状態でまとまっているのだ、そんな巨大組織の中枢を丸ごとぶち壊せば魔王亡き後の魔王軍が維持できる公算は薄い。
そんな内容の説明をされて実際には頭だけではなく心臓もついでにぶち壊す作戦と理解する。
説明は、途中ミンスク爆撃による四天王その2撃破を含む2度目のレベルアップ音DDos攻撃で4人が悶絶しながらも一通り終わり、その数分後に2Pカラーが「あと1分で魔王城郊外北部のドラゴン龍舎地区に着弾予定ですわ~~」と見込みを宣言する。
マジックミラーから見える地上はワルシャワの比ではない黒い霧と禍々しい赤いオーラが都市全体に広がっている。
反対側のミラーには青い空が広がっている。
時刻は正午に差し掛かろうとしていた。
四天王の内2人、ナレ死。
エロゲの敵だしエロい恰好してたんだろうなぁ。




