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TS転生するときのパートナー選択で種付けおじさんを選んだら割と幸せ  作者: 九束


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亜人側、絶許ってレベルじゃない

―――ルテティア・アーコロジー 都市管理室




ルテティア・アーコロジーは亜人連合旧大陸ガリア地区の中でも最大のアーコロジーだ。

私こと、ヤーラ・レ・ヤクはこの都市の管理総責任者兼旧大陸全体を管理する知事をしている。


人類(鬼畜)どものだまし討ちにより本貫地たるニザヴェッリル・アーコロジーをゾンビバイオテロ攻撃により失って以来、旧大陸に残留していた私たちは人類(鬼畜)どもへの復讐の機会を数百年にわたり伺ってきた。


因果応報の日はいよいよ近づいている。


直近の魔族による人類侵攻により既に人類は虫の息。

次の侵攻があればもはや人類はもたないだろう。


ごく少数派遣している魔族との連絡官によるとその日は近いという情報も得ている。

もし次に魔族が人類領へ侵攻するときになれば、一気呵成に我ら亜人連合も人類に攻め入る。


そのために我々旧大陸残存派は豊かな新大陸ではなく、かすかに残った旧大陸の荒廃した領土に残存しているのだ。

魔族の大侵攻をたびたび退ける勇者という特異点が気がかりではあるものの、もはや人類は風前の灯火。


挟撃の暁には必ずニザヴェッリル・アーコロジー周辺地域を奪還し、娘の遺骸を回収するのだ。


そのためだけに、私は生きている。


娘は責任感の強い子だった。

政治的判断から、ニザヴェッリル・アーコロジーの放棄を決断し見捨てた私と異なり、当時軍に籍を置いていたあの娘は最後までニザヴェッリル・アーコロジーに残り、あのバイオテロに立ち向かった。


あの娘の末路は最終災害回避施設――コールドスリープ区画の前を守り、果てたと人類側から聞いている。

後のアーコロジー記録映像でも、そこだけは事実だった。


魔族進行中にもかかわらず娘の最期の様子を記した書を持参し弔意を示した当時の人類側使節に私は縋りながら大泣きした。

その時の私はまだ人類(鬼畜)どもの思惑も把握しきれず、人類(鬼畜)どもと娘がニザヴェッリル・アーコロジーで発生したバイオハザードを共同で止めたと思い込み、被災周辺地域への派兵を認めてしまった。

それが人類(鬼畜)どもの目的とも知らずに。


人類(鬼畜)どもの嘘が判明したのは魔族による侵攻終了直後、アーコロジーから映像が定期自動通信で送られてきた時。

そこには動く屍と化した同胞、その同胞を操る人類のネクロマンサー。

コールドスリープ区画に続くエレベーターを死守する我ら亜人軍とそれを率いる我が娘。


多勢に無勢でエレベーター前で壊滅する亜人軍。

それでも何とかネクロマンサーを退け、直通エレベーターを封鎖した直後、操作盤にもたれかかりながら娘が動かなくなったところで映像は途切れていた。


奪還しようにも時すでに遅し、魔族に狙われていないことから軍事力に乏しい我々と常に魔族の脅威がある人類(鬼畜)どもでは軍事力に圧倒的な差があった。


我々の戦車は向うの戦士によるバカでかい大剣の一撃を防げず、我々の戦闘機は空飛ぶ魔法使いにより撃ち落されてしまう。

本国の戦力をすべて投入してようやく対等といったところだ。


その結果、数百年前、我々亜人連合はこの旧大陸の大半の領土を失った。


そのパワーバランスは今でも変わっていない。


故に、機会をうかがうことにした。

個人ならば恨みのまま復讐鬼になれたろうが、国家はそうはいかない。


理性を失ったまま動くわけにもいかないが、わずかでもメリットがあるのであれば徹底的に人類(鬼畜)どもの不利になるように動く。

それが旧大陸の私たちの行動理念となっている。


故に、我々ニザヴェッリル・アーコロジーに縁を持つ遺族は待つことにした。

本国が止めるのも無視して。幼いものは新大陸に逃がし、数百年。


じっと、人類(鬼畜)どもが終末を迎えるその日を。


もちろん『次』に人類(鬼畜)どもが私たち亜人連合を無視しないだろうこともわかっている。

もし、人類(鬼畜)どもが先に『弱い』我らを襲う場合の対策もばっちりだ。



雪辱を果たす日はすぐそこだ。



故にここ数日で急に山積し出した異常事態は何としても収束させなければならない。


私ですら照会権限のない不明なアカウントによる急激なアクセスの発生。

不定期にあったニザヴェッリル・アーコロジーからの自動通信の途絶。


本国のアーコロジーからも未使用機能の一部へのアクセスが不能になったという共有が来ている。


技術者の分析によると、人類側によるアクセスの可能性もあるとの報告が上がってきている。

それならばいよいよ追い詰めら人類(鬼畜)どもがこちらへの何らかのアクションを始めたということだろう。


数百年前と同じような手段をとるのだろうか?


であれば先んじて都市を放棄し応報計画―――数百年前のゾンビテロの研究の結果完成した改良型ゾンビテロで人類どもを追い詰めるのも良い。



最悪の場合はその手段も考慮に入れながら、今現在の異常事態を引き越していると思われるアカウントの特定を進めていた。

そしてついさっき、そのアカウントが特定できた。


2Pcolorなど等ふざけた名前のそのアカウントは現在進行形で亜人連合の全アーコロジーデータをどこか不明なデータベースに送信しているようだった。

これを管理者権限を使用して取り除けばひとまずの懸念事項は解決される。


そのあとに人類(鬼畜)どもをどう調理するかを考えよう。


「対象アカウント:2Pcolor 操作:権限の削除・解除」


『対象アカウントは特権管理者です。管理者権限での権限削除はできません』


「……は?」

担当者引継ぎなどで何度も行っていた操作。それで今まで出たことのないシステムメッセージに混乱する。


特権管理者だと?

その権限は私たちがアーコロジーに入力した2000年前の時点で代理アカウント1件を除き存在しないはず。

その1件も娘が引継ぎをできずに亡くなったことで操作可能者がいなくなっているはずだ。


「どういうこと?」


「知事!」

「何? いまシステムの重大な操作をしているのよ!」

知事室に転がり込んでくるように入ってきた軍の連絡官を私は怒鳴りつける。


「空軍からの報告で人類領方面から高速でこちらに変な貨物車両が飛来してきているとのこと!!」

しかし普段であればそれで委縮する連絡官は気にする余裕すらない様子で報告を上げてくる。


「は?変な貨物車両」

「画像がこちらに」

そう言って連絡官が写真を差し出してくる。

そこには荷室がなぜか鏡張りの中型トラックが白い尾を引きながら空を飛んでいる様子。


「ナニコレ?」

「知事!!!!!緊急事態です!!!」

都市防衛部隊の隊長が先ほどの連絡官のように部屋に駆け込んでくる。


「今度は何!?」

「空軍から連絡があった不明飛翔貨物車両ですが軌道を分析したところアーコロジー中枢区画、つまりここに向かっているとのこと!」


「ここは危険です!早く避――――」





ドガァァァアアアアアアアンン!!!!!





部屋の外から轟音。

慌てて窓に駆け寄る。


中庭に、荷室が鏡張りの変な貨物車両が地面にめり込んでいた。

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