ダンジョンボス戦ないなった
「空間ファックバリア!!!!」
メキメキメキメキ!!!!
テルマエの前に鎮座するゲートをモッさんが無理やり空間を屈服させてごり開ける。
いつもはスキルの使用とほぼ同時に聞こえていた若い女性――いや少女の声は今回は聞こえない。
「巫女様、今回は声は?」
「聞こえない。この階層由来のなにかだったのかな?」
騎士の確認に答えながら前を見る。
ゲートの奥は箱状の空間だった。第二階層の洞窟に比べれば小さいが、それでもゲートと同じ大きさ、高さ数十メートル、横幅は百メートルはありそうな空間。
モッさんはその空間の端入り口にポツンとある操作盤のようなものをちょうど触ろうとしていた。
そしてモッさんが操作盤を開け、ボタンを押す。
『sytem deployment――自立稼働を開始いたしますわ』
「――――――!?」
私の中で『私の声』が聞こえ、それと同時に私の身体全体が一瞬何かに触れられたような感覚。
「巫女様……?」
「気のせいじゃない」
一瞬だけど、わからないけど何かが分かった感覚があった。
この声の主は、この先の階層にいる。
もしかしてこれは……
マジックミラーのトラックに乗ってエレベーター内に侵入し窓を開けてモッさんに問いかける。
「なあモッさん。ここのボス敵、女性じゃない?」
「え、なんで知ってるのヴィーさん」
「多分私が昨日聞こえていた悲鳴、そいつだと思う」
だとすると第二階層の時点で、何か私に干渉していたと考えるのが自然だ。
スキルを使うたびに悲鳴というか嬌声を上げていたのは、その干渉中にモッさんの防御スキルで何かが妨害された?
「昨日の時点で多分私にそのボス敵が干渉してると思う。感覚でしかわからないけど、一瞬この先の階層にいるそいつと私の精神が一瞬つながった、と思う」
「だとしたらまずいかも……確かあのボスは催眠魔法とかも使っていたと思う」
「ボス戦の時に私が乗っ取られる可能性考慮した方がいいな」
ただ、その場合は今の時点で私に対してさっきの触れる程度の干渉しかしてこない理屈が分からない。
もしかして干渉範囲に何らかの制限があるのか?
「私を拘束した方がいいか?私を操って後ろから何かをする可能性もあるんじゃないか?」
「そっちが狙いかもしれないよ?俺にバフを掛けるのを遅らせるためにヴィーさんの行動力を下げておくとかの可能性もあるかも」
うーーん……たしかに。
「じゃあ、一旦騎士さんの内、一人は私の両手を後ろ手に拘束してもらって、も一人に私が不審な動きをしたら峰撃ちをしてもらうようにしよう。それなら万一戦闘長引いてオッパブ追加掛けすることになっても大丈夫でしょ?」
「……一旦はそれしか手段ないか」
「じゃあ、話もまとまったし行こうか。このエレベーターで第三階層に移動するのにはどれくらい時間がかかる?」
「確か1分もかからなかったと思う」
「じゃあ、エレベーターを作動させる前にオッパブやっといた方がいいな」
「わぁい!」
シリアスな会話の直後なのに気の抜けた声でオッパブを喜ぶモッさん。
「この状況で喜べるモッさんはすげえよ」
「それはそれ、これはこれの精神だよヴィーさん」
「さよけ。じゃあ、はよ」
「では、いただきます」
手をパチンと叩く動作のあとモッさんが私の後ろに回り、胸をむんずと鷲掴みにする。
「……?」
なぜかいつもある不快感が今回はあまりなかった。
◇
エレベーターがものすごい速度で地下へと潜っていく。
何故わかるのかというとゲート側の扉を壊してしまったせいで四方の内の1面がものすごい速度で移動しているのが分かるからだ。
多分あの壁に触れると一瞬で紅葉下ろしになってしまうだろう。怖いわー。
操作画面ではあと何秒で到着するかが示されており、残り時間は30秒を切っている。
「じゃあ、最下層に到着したらヴィーさんと騎士のみんなはマジックミラーのトラックでコールドスリープ機器に隠れるようにして後ろに待機、ボスが不審な動きをしたらA114514って書いてある機械以外は壊しちゃっていいからそれで気を引いて」
15,14秒――
「承知しました勇者様」
12秒、11秒――
「ヴィーさんは何か異変に気づいたら叫んで」
「了解」
5秒、4秒――
『最終避難エリアに到着しました』
エレベーターのシステム音らしき男性風のシステム音声が流れ、来た時とは反対側にある扉がゆっくりと開く。
扉の前にはコンクリート壁で構成された広大な空間。
無数のコールドスリープ装置のようなものが空間一杯に等間隔に敷き詰められ、管理用と思われる平坦なコンクリート通路がまっすぐ中心へ伸びている。
その先にある管理エリアと思われる施設は明るく光っており施設が稼働していることを物語っている。
その先には人影がふたつ。
「え……?二体!?」
モッさんが素っ頓狂な声を上げる。
「なあモッさん、あれって…ボスだよな?2体いるのか?」
「いや……ボスは強力なのが一体だけだと思うんだけど」
とすると原作との差異か。
「やばいのでは?」
「倒すだけなら全然大丈夫」
流石カンストステータス。頼もしいな。
「原作と同じステならステハゲビームで倒せるはず……ちょっと都市管理者のコールドスリープ装置避けるの難しいけど調整してやって―――」
モッさんが初動をどうするかをぶつぶつと呟いていると相手に動きがあった。
ドガシャアァアァァァアアン!!!!
右側にいた人影が何かをしたかと思うと左半分のコールドスリープ装置が派手に爆発。
ピッ―――――――
ゴドオオオオオオオン!
そしてそのあとすぐにコンクリート壁の隙間から四方八方から左側の人影にビームが飛び、一瞬前に左の人影があった場所が爆発炎上する。
「は?」「え?」
予想外な事態に変な声がハモる私とモッさん。
そんな私たちを無視して右側の人影が壁伝いに移動しながら次々にコールドスリープ装置を破壊する。
それを追いかけるもう一つの人影。
少しこちらへの距離が近くなり、人影の容姿が少し見える。
右にいた人影は長い金髪をはためかせており、左にいた人影は黒髪褐色絵半透明。
「不法移民は排除ですわーーーーーー!!!!」
「ヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテヤメテ!!!!ミンナガ!!!ミンナガシンジャウ!!!!」
「1919年間不正アクセスされ続けたトウトシの恨み!思い知りなさい!!!!!!」
「アアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
褐色の半透明の人物の声は第二階層の敵のように直接頭に響いてきて、ひたすらコールドスリープ装置を壊している人物の声は、なぜか近くから聞こえた。
何だと思ってあたりを見回してみると、すぐそこにある壁に設置されているスピーカーから声が聞こえている。
ザラザラとした音質の悪い大人なのに、透き通るような気品を感じる声。
嬌声じゃないから雰囲気は全然違うが間違いない、スピーカーからの声は、昨日私が散々聞いたあの声だ。
何が何だかわからない。
「仲間割れ……?」
「なんでヴィーさんの声がスピーカーから」
…………ん?
「私の声?」
「この声、ヴィーさんの声だよ。分からない?」
「そうなの?」
騎士さんの方を見て騎士さんにも聞いてみる。
「はい、これは間違いなく巫女様の声と同じです……なぜでしょう?」
良く自分が話すときに聞こえる声と録音などで聞く声で本人からしたら違和感があるというあれか。
しかしなんで仲間割れ中の敵の片方が私の声に?
そんなことを考えていると、金髪の方が褐色肌の方の髪の毛をつかみ、思いっきり褐色肌の方をぶん投げる。
褐色肌の方はそのまま吹っ飛んで、こちらの50メートルほど先にあるコールドスリープ装置に突っ込んでコールドスリープ装置の中の水が地面にぶちまけられた。
侵入者である私たちをガン無視して仲間割れ?をしている2体にどうしたものか判断がつかない私たちを無視するようにもう一人の金髪もこちらに――――。
「え??ヴィーさん?」
「私!?」
50メートル先で容姿がはっきりと見えるようになると私そっくりの姿が露になる。
違うところと言えば髪の色が金髪なところと、肩が大きく開いたディープブルーのドレスを着ているところ。
それ以外は私に瓜二つの姿だ。
壊れたコールドスリープ装置からのっそりと褐色肌の人物――第二階層でも早退したゴーストのエルフと思われれる人物――がはい出てくる。
「タスケテ……タスケテ……」
「辞世の句を聞かせてくださる?」
「ミンナヲコロサナイデ……オネガ――――――――」
「『ミンナヲコロサナイデ』を辞世の句として受理しましたわ。では、ごきげんよう」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
その声と共にゴーストの方に最初の時と同じレーザーのような光が四方八方から集中し、ゴーストが蒸発して消えた。
「さて……」
残った推定敵の2Pカラー私が佇まいを整え、こちらに向かい合う。
「っ!―――ステは――――」
「お待ち申し上げておりましたわ管理者さまーーーーーーーーー!!!!!!」
「ファッ!?」
モッさんがスキルを叫ぶのよりも早くそいつはモッさんの前に距離を詰めたかと思うと、まるで恋人に抱き着くかのような熱烈さでモッさんに抱き着いてきた。
そしてスリスリと愛おしそうに自らの頬をおっさんの胸板に擦り付け始める2Pカラー私。
「おいコラ何やってんだお前!」
私の姿でキモイことをするんじゃない!!!!!




