侯爵家、デコレーションケーキに驚愕する
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アデルとユリウスの合同誕生日会。
ディナーが終盤に差し掛かった頃、厨房からレオンが、ルキウス、ルチア、クロノと共に、銀の盆に乗せた「何か」を運んできた。
「アデル兄様、ユリウス兄様!お誕生日、おめでとうございます!」
レオンが布を取ると、そこには、一同が目にしたことのないお菓子が鎮座していた。
フワフワのスポンジ。真っ白なクリーム。輝く真っ赤なベリー。
「レオン…これは?」
ユリウスが、未知の物体に目を見張る。
「『でこれーしょん・けーき』です!僕と、ルキウス様と、ルチアと、クロノさんで作りました!」
レオンが胸を張る。
「僕たちからのお誕生日プレゼントです!」
甘く芳しい香りが広間に漂う中、見たこともない美しいお菓子を、平然と『作った』と言われ、食堂内は騒然となった。
「ま、待て、レオン!」
父マルクが、当主として慌てて声を上げる。
「その白いものは何だ!?毒見は済んでいるのか!?」
「まあ、あなた!」
対照的に、母エレナは目を輝かせている。
「なんて綺麗なお菓子でしょう!まるで宝石が乗っているみたい…!」
「皆様、ご心配なく」
料理人クロノが、誇らしげに報告を始めた。
「このクリームは、『ほいっぷくりーむ』といい、魔牛の乳と砂糖だけでできております。それに、旦那様。驚くのはまだ早うございます…」
「なんだと?」
「レオン様は、このケーキをお作りになる際、見たこともない調理器具まで発明なさいました!」
クロノが、作業中のレオンの動向を、レオンを褒め称えたい一心で、報告(告げ口)し始めた。
「これが、その『あわだてき』と『かなぐち』にございます!」
クロノが、レオンお手製のホイッパーと口金を高々と掲げる。
「なんっっ…」
マルクは、ハリガネと鉄を魔法で変形させた奇妙な道具を見て、目を剥いた。
「こちらの『あわだてき』を使うと、まるで、竜巻のような勢いで、簡単に卵の白身や牛乳が泡立ち、土台のスポンジケーキや『ほいっぷくりーむ』が簡単に出来上がるのですよ!」
(また新しい発明品が…!)
父は、ケーキを食べる前から胃痛に襲われたのだった。
「アデル兄様、ユリ兄様、さ、早く食べてみてください!」
早く、二人の喜ぶ様子がみたくて、父の困惑など見ちゃいないレオンだった。
クロノが、慣れない手つきでケーキを切り分ける。
まず、主役のアデルとユリウスへ、そして、マルクとエレナ、ルキウスにも配られた。
「…どんなもんかな?」
ユリウスが、まず分析するように、冷静にフォークを入れる。
(軽い…?スポンジケーキとかいうのが、空気のようだ…)
アデルも、レオンからの手作りプレゼントに感極まった様子で一口。
「…っ!」
アデルは、言葉を失い、目を見開いた。
「う、美味い…!なんだこれは!?」
「まあ!」
エレナも、目を閉じてその味を堪能する。
「口に入れた瞬間、溶けましたわ…!この『ほいっぷくりーむ』?ミルクの香りが濃厚で、でも軽くて…フワフワの土台部分のケーキと、この滑らかなクリーム、そしてベリーの酸味…」
「うむ…」
一番疑っていたマルクも、フォークを口に運んでいた。
「…なんという食感だ」
マルクは、当主の威厳を忘れ、すぐさま二口目を運んだ。
「全てが完璧に調和している…!クロノ、これは…!」
「はい!全て、レオン様の御発案と御指導の賜物です!」
「レオーン!こんな美味しいもの、生まれて初めてだ!」
アデルが、感涙しながらレオンの手を握った。
「ほんとねー!お茶会で出したら、どうなるかしら!」
「…美味いな…」
エレナもマルクもデコレーション・ケーキに魅せられている。
家族がその味に熱狂する中、ユリウスだけが、別の興奮に目を光らせていた。
彼は、フォークの上でクリームを観察し、スポンジの断面を分析していた。
(この『ほいっぷくりーむ』…バタークリームより遥かに軽く、応用が利く。このスポンジケーキとやらも、いつもの重くてパサついたケーキとは、全く別物だ)
この世界で「ケーキ」といえば、ベーキングパウダーを入れずに焼いたパウンドケーキのようなものなので、重たくてふっくらとはお世辞にも言えない代物だ。
(そして、『あわだてき』と『かなぐち』…)
ユリウスの笑みが、さらに深くなる。
(スポンジケーキ、クリーム、泡立て器、口金…一度に4つも新商品か…)
ユリウスは、弟を見て、笑みを深める…。
(レオン…お前は本当に、金のなる木だな…!素晴らしい弟だ!)
そんな周囲の混乱をよそに、アデルは感涙にむせんでいた。
かわいい弟が、自分のために、一生懸命に作ってくれたプレゼント!
(ルキウスの助けを借りたのは、非常に、とてつもなく癪だがな!)
そんな心とは裏腹に、アデルは、勝ち誇った顔で、ルキウスを振り返る。
「聞いたか、ルキウス君!」
アデルが、ビシッとルキウスを指差した。
「レオンは『私のために』これを作ってくれたのだ!君はただの手伝い!つまり、私の方が(レオンの好感度ランキングは)圧倒的に上だ!」
ブラコンの、謎のマウントである。
だが、ルキウスは鉄面皮を崩さなかった。眼鏡をクイッと押し上げ、冷静に反論する。
「…勘違いをなさらないでいただきたい、アデル殿。レオン様は、『あなたでは解決できない問題』だからこそ、この私を頼ってくださった」
ルキウスは静かに言い放った。
(そうだ…『兄』であるあなたには、家族だからこそ言えない、言わせられない苦悩があるのだ)
ルキウスは心の中で、アデルを断じる。
(『男装』という重荷。その孤独。それに気づきもせず、ただ甘やかしているだけのあなたと、私を一緒にするな!)
「…私の方が、レオン様の『真の理解者』である。それだけのことです」
(彼女が真に頼れるのは、秘密を共有する『騎士』である、私だけだ…!)
ルキウスは、鉄面皮の下で、絶対的な優越感に浸っていた。
「き、貴様ぁー!」
アデルは、ルキウスの(謎の)上から目線に激昂する。
「レオンの理解者だと!?私がレオンを、理解していないとでも言うのか!」
「私と、レオン様は(『でこれーしょん・けーき』を作るという)共同作業をしたもの同士、喜びも苦労も共に分かち合っているのですよ!これは、初めての二人の共同作業!つまり!彼の苦悩も喜びも、私のは理解できても、あなたには理解できないということです!」
一緒にケーキを作っただけなのに、しかも、ルチアとクロノもいたと言うのに、なんだか二人でやった感を出して、ものすごいマウント返しをするルキウス。
「なんだとー!」
(コイツら、アホか…にしても、レオンも罪作りだな…いや、ちょっとは俺のせいか?)
ユリウスは、冷静にケーキの権利関係を計算しながら、笑いを堪えていた。
「あわわ…!あ、アデル兄様も、ルキウス様も!」
何も知らない天使様は、二人の間に流れる火花に、ただオロオロするばかり。
「け、喧嘩しないで、仲良くケーキを食べてくださいー!」
――グレイスフィールド家のカオスなお誕生日会は、こうして更けていくのだった。
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