天使様、デコレーションケーキを生み出す
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無事に、ミルクを確保し、厨房に戻ると、本当の戦いが始まった。
「まず、卵を黄身と白身に分けます!」
「レオン様、膜が破れて混ざってしまいます!」
ルチアが苦戦する。
「あーー!殻がー!」
「チッ…『ウォーター・スフィア』で黄身だけを包み込めばいい」
ルキウスが、まさかの魔法で解決。
「次は、白身を泡立てます!」
「レオン様!どこまでまぜれば!」
「白くて、フワフワで、持ち上げられる感じになるまで!」
菜箸で、まぜるクロノだが、泡立つ気配もない……
「う、腕が…ルチア!代われ!」
「はいっ!…もう、だめです…」
「ルキウス様!」
「む…非合理的だが、やるしかない!」
クロノ、ルチア、ルキウスが、代わる代わる、汗だくでかき混ぜるが、一向に白くなる気配がない…
「そうだ!泡立て器…!」
まさかの、泡立て器がなくて、おばあちゃんの知恵袋スポンジのピンチだ。
レオンは、おばあちゃんが、使っていた泡立て器を思い浮かべると、意外と簡単な構造のようだ。
「クロノさん!針金ってありますか?」
「肉を縛るのに、使ってるのがあるぞ!」
レオンは『リペア』の応用で、何本かのハリガネをクルンと曲げて、木の棒に溶接・変形させ、簡易泡立て器を作り出した。
「クロノさん!これでかき混ぜてみて!」
「わかった!まかせろ!」
「『氷よ集え(アイス・タッチ)』!」
レオンはボウルの底を氷魔法で冷やし続ける。
「お!?おー、なんか白くなってきたぞ!さっきまでの苦労はいったい…」
「砂糖を入れます!」
レオンが砂糖を入れると、白い泡が段々固くなり、ツノがたつまでに固まってくる。弾力があり、ふわふわの、メレンゲができあがった。
「できました!」
レオンがメレンゲの完成を告げると、
「うわー、フワフワですー!」
「これだけでもう、美味そうだな……」
「あの、卵の透明の液体が……なんという事だ!魔法のようだ……」
ルチア、クロノ、ルキウスは、三者三様の感想をもらした。
しかし、菜箸での泡立ての苦労を乗り切った三人は、やりきった感満載である。
「みなさん!これからですよ!ここに、黄身を入れて。さっくりとまぜて……クロノさん!小麦粉を入れてください!」
「あー!!せっかくのフワフワが!」
「レオン様、これでは、我々の努力が水の泡ではないですか!」
ルチアとルキウスが、せっかく汗ダクになって作った、真っ白なフワフワに黄身や小麦粉をいれて、また、液状のようになってしまったケーキのタネをみて、抗議の声をあげる。
「大丈夫!みなさんのおかげで、フワフワケーキになりますよ! 」
レオンは、鉄で出来た四角い型に、タネを流し込み、クロノに託した。
「それじゃあ、ホイップクリームを作りましょう!」
レオンは、魔牛のミルクを前に、おばあちゃんの記憶を呼び起こす。
(確か…乳脂肪の濃いミルクになったのがホイップクリームの元になるんだったよね…濃度の問題なら、水魔法で、水分を飛ばせばいいのかも!)
「アクア・ヴェイパー!」
レオンが魔牛のミルクに魔法をかけると少しずつカサが減っていき、ミルクよりモッタリとした感じに変化した!
「できました!さあ、これをまた、ツノが立つまで泡立てましょう!」
「まかせろ!」
クロノが泡立て器を片手に名乗りをあげた。
クロノが混ぜている生クリームにそっと砂糖を入れながら、氷魔法で冷やすレオン。
「おーなんか、硬くなってきたぜ!菜箸でやるより、断然早いな!」
「レオン様、これが『ほいっぷくりーむ』ですか?」
「そうだよ、ルチア!甘くてフワフワで美味しいんだよ!」
(((…ごくっ)))
クロノもルチアもルキウスもホイップクリームに釘付けである。
「もういいですよ、クロノさん。スポンジケーキをお願いします!」
レオンは、冷ましておいたスポンジケーキの端を切り、整えて上下で二つに分けて、ホイップクリームを塗っていき、そこにベリーを敷き詰め、上のスポンジを被せて、器用に全面をクリームで覆っていく。
「「「おー!!」」」
3人の歓声が沸いた。
「なんか、これだけでもう、美味しそうです!」
「切れ端にホイップクリームをつけて味見してみる?」
「はい!!」
レオンがルチアにスポンジケーキの切れ端にクリームとベリーを載せたものを渡した。
恐る恐る、口をつけるルチアと、見守るクロノとルキウス。
「…ふもっ!!」
「どうだ!どうなんだ!」
「…すごいです!ケーキはフワフワで今まで食べたことないくらい柔らかで、つけた『ほいっぷくりーむ』は甘いミルクみたいでホワホワで、ベリーの酸味と重なるともっと甘味が増してきて!すごい美味しい!」
ルチアの食レポにゴクリと唾を飲み込む、クロノとルキウス。
物欲しそうに、レオンを見ると、
「お二人もどうぞ!」
と、すでに作ってあった、二人の味見用をニコニコしながら渡してくれた。
「…っっつ!これはすごい!柔らかくて軽い食感に、甘過ぎない甘味にベリーの酸味がよく馴染んで、口の中で合わさると、溶けていくようだ!」
「美味いな!何だこれ!こんなに軽くて柔らかくて美味いケーキは初めて食ったぜ!」
味見をしている3人が大絶賛の中、レオンはデコレーションに取り掛かろうとして、気づいてしまった。
「金具がないと、綺麗にデコレーションができない…」
レオンは悩んだ末、鉄板を手に取り、
「『ヒート・カッター』!『シェイプ』!」
魔法を駆使し、デコレーション用の口金(しぼりだし金具)まで自作し、ホイップクリームを、口金をつけた綺麗に洗った魔羊の腸に詰めていく。
「今度は何をするんですかい?」
「デコレーションするんです!」
クロノの質問に、端的に答えるレオン。
「なるほど、だから『でこれーしょん・けーき』なのだな。しかし、『でこれーしょん』とは何なのだ?」
「飾るってことですよ!見栄えも綺麗な方が美味しそうじゃないですか?」
レオンは、ルキウスに答えると、器用にホイップクリームで波のような装飾と、真ん中に立体的なバラのような花を作り出す。クリームの間に敷き詰めたベリーに、砂糖を煮詰めた液を塗るとキラキラと宝石のように輝いた。
「「「おーーー!!!」」」
試行錯誤と、4人の努力の結晶。
未知の『デコレーションケーキ』が、ついに完成したのだった。
「やりましたね、皆さん!」
レオンは、顔中クリームだらけで笑った。
(((天使だ…)))
クロノ、ルチア、そしてルキウスは、その笑顔に完全にやられてしまう。
ルキウスに至っては、
(レオン様の笑顔のために、私はこの技術をマスターせねば…)
と、鉄面皮の下で、ひどく無駄な努力の決意をしていた。
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