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完璧王子、堅物ナイトに嫉妬する

あけましておめでとうございます!本年も、読んでいただきありがとうございます!更新日は火・金・日予定です♩

 あの一件以来、レオンとルキウスはすっかり打ち解け、共に行動することが、多くなった。

「ルキウス様、相談があって…」

「ふむ。機密事項か?」

 今日も今日とて、二人は何やらヒソヒソと話し込んでいる。

 その様子が、邸内で頻繁に目撃されていた。


 一一一その状況が、面白くない男が一人。

「…………」

 長兄アデル・フォン・グレイスフィールドである。

 弟が、自分以外の男と親しくしている……夏季休暇は、一緒に森へいったり鍛錬したりと、いつもくっついて歩いていた、あの可愛い弟が!

 アデルにとって、それは世界の終わりにも等しい一大事だった。


「レオーン!」

 アデルは、中庭でルキウスと話し込むレオンを見つけ、割り込んだ。

「そんな堅物ルキウスなど放っておいて!兄と剣の鍛錬をしないか!?」

 アデルが完璧な笑顔でレオンの手を取ろうとする。

「ごめんなさい、アデル兄様!」

 レオンは、その手をやんわり離すと、

「今、ルキウス様にとっても大事な相談をしてるんです!じゃあ、また後で!」

 レオンは、ルキウスを連れて、タタタッと書庫の方へ駆け去ってしまった。


 一人、中庭に取り残されるアデル…

 その背中は、世界を失ったかのように丸まっていた。

「…失礼」

 すると、アデルの背後から、冷たい声…いつの間にか、ルキウスが戻ってきていた。

「今、レオン『様』は、私と『重要機密』について協議中だ」

 ルキウスは、銀縁眼鏡をクイッと押し上げる。

「グレイスフィールド家長男殿とはいえ、邪魔をしないでいただきたい」

「……は?」


 アデルの眉がピクリと動いた。

(今、コイツ…レオン『様』と言ったか…?)

「貴様…」

 アデルが、地を這うような声で振り返る。

「私の可愛いレオンに、いったい何を吹き込んでいる!」

 アデルのブラコン・オーラが、ルキウスに突き刺さるが、ルキウスは表情一つ変えない。

「それは機密だ!」

 ルキウスは冷静に返す。

「あなたに話す義務も、理由もない」

「なっ…!」

(お、始まったな?)


 物陰から、そのカオスな光景を眺めている者がいた。

 次兄、ユリウスである。

(ルキウスのやつ、完璧にレオンに引きづりこまれたなー……『レオン様』だって!あいつ、意外と単純だよなー。純粋と言うか……悲劇の令嬢のナイト気分なんだろうなぁ……)

 ユリウスは、自分の撒いた種が、予想以上に面白い化学反応(大事故)を引き起こしていることに、腹を抱えて笑うのを必死に堪えているのだった。


 ◇


 グレイスフィールド家の書庫。

 アデル(ブラコン)という名の脅威を排除し、二人は再び「重要機密」の協議に戻っていた。


「あの、ルキウス様…」

 レオンは、周囲をキョロキョロと確認してから、声を潜めた。

「実は…もうすぐ、アデル兄様とユリウス兄様のお誕生日会なんです」

「…それが、重要機密か」

 ルキウスは眉一つ動かさない。

「は、はい!それで、ルキウス様は王都にお住まいですよね?」

 レオンは身を乗り出す。

「王都で今、何か流行りの贈り物とか、ご存知ないですか?兄様たちが、あっと驚くようなものをプレゼントしたくて…」


 ルキウスは、銀縁眼鏡の奥で、そうは見えないけれど、非常に困惑していた。

(誕生日…プレゼント…?)

 彼にとって、それは最も理解し難い概念。オーレリアン家において、誕生日は『己の責務を再確認する日』で、プレゼントはおろか、祝いの言葉すらない。

 唯一の例外が、13歳のお披露目の誕生パーティーだけだが、まだ11歳のルキウスは、そのお披露目パーティーの経験すらないのだ。

(祝うどころか、父上から一年間の失態をデータで突き付けられる、最も憂鬱な日だ……)


「…理解できない」

 ルキウスは、冷ややかに答えた。

「なぜ、祝う必要が?個人の誕生など、国家の運営において何の意味も持たないだろう。時間の無駄ではないか?」

「ええっ!?」

 レオンは、心の底からショックを受け、そのあまりに冷たい言葉に、胸がギュッとなる。

「な、なんで…そんなこと言うんですか…」

 レオンの瞳が、悲しそうに潤み始める。

「だ、だって…!大好きな家族が、生まれてきてくれた、最高の日ですよ!?」

「…っ」


 ルキウスは、レオンのその表情に、たじろいだ…なんだか、かわいい…

「『おめでとう』と『ありがとう』を伝える、一番大事な日です!」

 レオンは、机をバンッ!と叩くと、

「家族がいてくれるから、僕は毎日幸せなんです!その感謝を伝えて、何が『時間の無駄』なんですか!」

 と、家族の素晴らしさ、祝うことの尊さを、無意識の「おばあちゃんムーブ」で熱く、熱く説きはじめた。


 その必死で、健気な言葉に、ルキウスの胸は、またしても撃ち抜かれてしまう。

(そうだ…彼女は…レオン様は…私が軟弱だと切り捨てた、その『家族の温もり』を守るために!女であることを捨て、男として生きている…!)

 ルキウスの頭の中で、ユリウスの嘘が、レオンの言葉によって完璧な「真実」へと補完されてしまう。妄想とも言う……

(その彼女が、私に助けを求めている!兄たちには言えない、秘密の相談を!)


 ルキウスは、静かに立ち上がり、レオンの小さな肩に、そっと手を置いた。

「…すまなかった」

「え?」

「君の言う通りだ。私が、間違っていた」

 ルキウスは、宰相子息の鉄面皮をかなぐり捨て、真摯な瞳でレオンを見つめた。

(私が守ると誓った『彼女』の、この純粋な願いを、私が叶えなくてどうする!)

「…承知した」

 ルキウスは、騎士が忠誠を誓うように、厳かに頷いた。

「私が、全力で君の願いを叶えよう……私の知識の全てを、君の誕生日祝いのために捧げる」

「え、あ、ありがとうございます!」

(???なんだかよくわかんないけど…わかってもらえた?のか…?)


 レオンは、ルキウスの突然の熱血ぶりに戸惑いつつも、協力してくれることに、満面の笑みを浮かべたのだった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます♩

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