表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/56

天使様、チート能力を疑われる

読んでいただきありがとうございます!更新日は火・金・日予定になります。よろしく♩

 誕生日から数日後の、よく晴れた日。

 グレイスフィールド家の馬車は、領内にある最も大きな教会へと向かっていた。

 レオンが、正式な魔法適性検査を受けるためである。


「レオン、緊張しているか?」

 向かいの席に座るアデルが、心配そうに声をかける。

「いいえ、アデル兄様。どちらかと言えば、武者震いがします!」

 レオンは、小さな拳を握りしめ、目を輝かせた。

(ついに、この時が来た…!僕の属性が分かれば、『組紐屋のリョウ』への道が、はっきりと見えるはずだ!)


 馬車の中は、家族それぞれの思惑が渦巻いていた。

 父マルクは、「(また何か、規格外な結果が出なければいいのだが…)」と、早くも胃のあたりをさすっている。

 母エレナは、「(あの子は、一体どんな輝きを見せるのかしら。興味深いわ)」と、研究者の目で息子の検査を楽しみにしていた。

 ユリウスは、「(まあ、面白そうだから見に行ってやるか)」と、窓の外を眺めながら退屈を紛らわしている。

 そして、レオンの足元では、使い魔のモリィが『お出かけ!お出かけ!』と、幸せそうに尻尾を振っていた。


 やがて、一行は、精霊たちを祀る、荘厳な石造りの教会に到着した。

 白髪の温和な神官長に迎えられ、一行は教会の最も奥にある『洗礼の間』へと通される。部屋の中央には、祭壇が置かれ、その上に、赤子ほどの大きさの、完璧な球体の水晶玉が鎮座していた。あれが、魔力に反応して、持ち主の属性を色で示すという『鑑定の水晶』だ。


「さあ、レオン様。恐れることはありません。水晶に、そっと両手を触れてごらんなさい」

 神官長に促され、レオンはこくりと頷いた。

 彼は、家族が見守る中、一歩、また一歩と祭壇へ進む。そして、深呼吸を一つすると、その小さな両手を、ひんやりとした水晶玉の表面に、そっと置いた。

 その、瞬間だった。

 水晶玉が、カッ、と目も眩むほどの光を放った。

 赤、青、緑、茶、金、紫―――火、水、風、土、光、闇。

 六つの属性全ての色が、凄まじい勢いで水晶玉の中を渦巻き、混ざり合い、まばゆいばかりの虹色の光となって、洗礼の間全体を照らし出したのだ!

「こ、これは…!なんと…!」


 神官長は、あまりの光景に、持っていた聖書を取り落とした。

「ぜ、全属性だと!?そんな馬鹿な!伝説の中にしか存在しないはずの、『万物の愛し子』が、今ここに…!おお、精霊よ!」


 その場は、大騒ぎになった。

「ぜ、全属性…?また、面倒なことに…」

 マルクが、頭を抱えて崩れ落ちそうになる。

「まあ、素晴らしいわ!あの子の魔核の構造は、一体どうなっているのかしら!ぜひ研究してみたいわ!」

 エレナが、目を爛々と輝かせている。

「やはりだ!我が弟レオンこそ、この時代を導く光!全属性に愛されるとは、なんと完璧な存在なのだ!ああ、レオン!」

 アデルが、その場でひざまずき、感動の涙にむせび泣いている。


 ユリウスだけが、その熱狂の輪から一歩引いて、冷静に状況を観察していた。

 ユリウスは、すっと立ち上がると、祭壇へと近づき、騒いでいる神官長の足元を指さした。

「ねえ、あれ」

 全員の視線が、その指の先へと集まる。

 祭壇の、水晶玉が置かれた台座の影。そこに、白いモフモフの塊…モリィがいた。

 彼は、祭壇に置かれたきらきら光る大きな玉を、最高の遊び道具だと思ったらしい。その湿った黒い鼻先を、水晶玉の表面に、ぐりぐりと、それはもう楽しそうに押し付けていたのだ。尻尾は、喜びのあまり、ちぎれんばかりに振られている。

「「「…………」」」

 熱狂に包まれていた洗礼の間に、気まずい沈黙…

 神官長が、瞬きを繰り返す。マルクは、安堵なのか絶望なのか分からない、深いため息をついた。

「…あー、神官長殿。申し訳ないが、一度、あの…犬を、水晶から引き離してから、再度、確認いただけるかな」


『えー、この玉、遊べないのー?つまんないのー』

 レオンが「モリィ、後でアメちゃんあげるから」と説得し、不満げな使い魔をなんとか水晶玉から引き離す。


「…で、では、レオン様。もう一度、お願いいたします」

 気を取り直した神官長に促され、レオンは再び、水晶玉に手を置いた。

 今度こそ、水晶玉は静かだった。

 レオンの手が触れた場所から、二つの、しかし強く、鮮やかな光が、ゆっくりと水晶玉の内部に満ちていく。

 一つは、太陽の光のように、温かく、清らかな黄金の光。

 もう一つは、晴れ渡る空のように、どこまでも澄み切った翠の光。


 そして、その二色の光の縁に、他の属性の色が、ほんのりと、おぼろげに揺らめいていた。

「(あ、普通…)よかったですな!光と風!二つの属性に、非常に高い適性をお持ちです!そして、他の属性にも、微弱ながら反応がある。これは、初級魔法であれば、修練次第で全ての属性を扱えるようになる可能性をも秘めた、大変に恵まれた才能ですぞ、レオン様!」


 その結果に、マルクは「(全属性でなくて、本当に良かった…)」と、心底安堵の息を漏らした。

 アデルも、「光と風…!なんと、我が弟に相応しい、高貴な属性なのだ!」と、すぐに立ち直って再び感動している。


 レオン自身も、その結果に大満足だった。

(光は、癒やしの力!風は、素早さ!これなら、『組紐屋のリョウ』みたいに、人知れず素早く悪の元へ駆けつけて、傷ついた人を癒やすことができるかもしれない!完璧だ!)


 こうして、レオンの魔法適性検査は、一時の大混乱を経て、無事に幕を閉じた。

 帰り際、神官長が、畏敬の念のこもった眼差しで、レオンの足元で欠伸をするモリィを見つめ、マルクにそっと囁いた。

「侯爵様…あちらの神獣殿こそが、『万物の愛し子』だったようですな…」

 マルクは、何も答えず、ただ、また痛み出した胃をさするしかなかった。

 グレイスフィールド家の真のチート能力保持者が、お菓子をねだって尻尾を振っている…


 レオンの『カッコいい男』への道は、ついに、魔法という新たな、そして広大な扉を開いたのであった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます♩

もし少しでも『面白いかも』『続きが気になる』と思っていただけたら、↓にあるブックマークや評価(☆☆☆☆☆)をポチッとしてもらえると、とってもうれしいです!あなたのポチを栄養にして生きてます… よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ