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アントの進化と見えてきた希望

 ダンジョン製作20日目。


 ワーカーアントたちが掘り出した結晶が貯まり始めている。大部屋の片隅に積み上げられた結晶は、優に100個を超えるだろう。


 ウォーリアーアントに追加で与えようとしたが、もう必要ないのか見向きもしなかった。それなら、とワーカーアントに結晶を砕くように命令してみる。

 ワーカーアントは次々と結晶を砕き、ソルジャーアントの時と同じように動きを止める。

 どうやらワーカーアントも結晶を砕くことで進化が可能なようだ。


 震えが止まり、ワーカーアントは進化してメディックアントに進化した。

 メディックアントはワーカーアントの頃よりも腹部が少し大きいだけで、それ以外はワーカーアントとほとんど変わらない。

 メディックという名前が付いているということは、何らかの回復効果でも持っているのだろうか。回復役の存在は、今後の戦いでも頼りになりそうだ。


 ワーカーアントも進化することがわかったので、さらに4体のワーカーアントを進化させる。

 次々とワーカーが進化していくと、1体だけ他よりも一回りほど大きく、長い触角を持つものに進化した。

 リストを確認すると、名前はテイマーアントとなっている。どうやら進化先は1つだけではないようだ。

 ワーカーアントに二種類以上の進化先があるということは、ソルジャーアントの進化先もウォーリアーアントだけではないかもしれない。

 検証のためにソルジャーアントを召喚しようとメニューを開くと、メディックアントとテイマーアント以外にも3種のモンスターが増えている。

 これは後で確認するとして、ソルジャーアントを追加で3体召喚する。


 ソルジャーアントたちが召喚されたと同時に、ダンジョンコアに新たな機能が追加されたようだ。

 ダンジョンコアから伝えられた情報によると、新しい機能は鑑定機能と言うらしい。文字通り、モンスターやアイテムを鑑定することができるとのことだ。


 試しにワーカーアントを対象に鑑定機能を使ってみる。

 鑑定機能が使用されると同時に、モニターにワーカーアントのステータスが表示された。

 モニターに表示されているのは、モンスターの種族や名前や戦闘力の他に、保有している魔力量や健康状態だった。

 ワーカーアントの戦闘力は10、名前が空欄になっている。保有している魔力量は0だった。


 ふとあることを思いつき、転がっている結晶に鑑定を使ってみる。

 すると、魔石という名前と、保有している魔力量は8であるという情報が表示される。

 どうやら、あの結晶は魔石というらしい。保有する魔力にはばらつきがありおおよそ5から10の間のようだ。


 さらに、魔石を砕いているソルジャーアントにも鑑定を試してみる。ソルジャーアントの戦闘力は20、保有する魔力は172となっている。

 ソルジャーアントが新しい魔石を砕くたび、保有魔力が少しずつ増加していく。そして、保有魔力が200になると、ソルジャーアントが進化を始めた。

 残りのソルジャーアントも、保有魔力が限界になると同時に、進化を始める。保有魔力が上限に達すると進化をするのだろう。


 ソルジャーアントたちは、ウォーリアーアント1体の他に、盾のような大きな頭を持ったアントと、大きく膨れた腹部と他よりも細長い足を持つアントに進化したようだ。


 さっそく、新しく現れたアントたちに鑑定を使う。

 新しいアントはそれぞれ、シールドアント、ガンナーアントである。戦闘力はウォーリアーアントと同じく50だ。

 2体のアントは、新たに増えたウォーリアーアントとともに、巣のパトロールを始めた。

 次は追加されたモンスターを呼び出してみるとしよう。


 残っている350ポイント全てを使い、アントフライを3体、アントワームを1体召喚する。

 アントスパイダーというモンスターも追加されていたが召喚コストが500ポイントだったので、次の機会に回すことにする。

 現れたのは50センチメートルほどの巨大なハエのモンスターと、3メートルほどのミミズのモンスターだ。どうやらこちらはアリ型のモンスターではなかったようだ。

 

 召喚された4体のモンスターに気が付いたテイマーアントが、そこへ近づいていく。

 テイマーアントがその長い触角を鞭のように振ると、4体はテイマーアントの周りに集まりだした。

 そのままテイマーアントの後ろにつき従い、巣の奥へと移動を始める。

 今の様子を見るに、テイマーアントは他のモンスターを使役することができるのだろう。


 進化したアントたちが思い思いに活動する様子を眺めながら、今後の方針を考える。

 魔石によってアントたちを強化できることが分かったので、明日からはワーカーアントを増やして、本格的に魔石の採掘を進めていくとしよう。

 急ぐ必要はないかもしれないが、今後のためにもそれなりの数の魔石を確保しておくべきだ。


 そして、今日追加された鑑定機能は何かと役に立ちそうだ。突然解放されたが、何か条件があったのだろうか?

 

 何はともあれ、これでダンジョンの制作がまた一歩、先に進んだはずだ。



 ダンジョン製作31日目。ついにダンジョン解放までの残り時間も折り返しを迎えた。


 ワーカーアントが増えたおかげでダンジョンの拡張も進み、今では3つ目のキューブに差し掛かった。

 拡張の途中で魔石も順調に採掘され、かなりの量が空いている小部屋にため込まれている。

 メディックアントはワーカーアントと混じって、ダンジョンの拡張を手伝っている。

 テイマーアントに率いられるアントフライはダンジョン内を飛び回ってパトロール、アントワームは地面に潜り、たまに魔石を掘り出している。


 現在、ダンジョンに生息するモンスターの内訳は、

 ワーカーアント20体。ソルジャーアントの進化系4体。ワーカーアントの進化系が5体。

 テイマーアントが使役するアントワームが1体。同じくアントフライが3体。

 そして、アントフライの卵が254個である。


 どうやら、アントフライのうちの1体がメスだったらしく、数日前から、毎日50個ほどの卵を産んでいるのだ。

 今日もアントフライの卵が置かれている小部屋の様子を確認してみるとしよう。

 アントフライの卵は細長い楕円形の卵で、地面に無造作に置かれている。半透明の殻の内側では、幼虫がうごめいているのが確認できる。

 卵の近くでは、アントフライを率いているテイマーアントたちがその様子を見守っていた。


 最初期に生まれたアントフライの卵を鑑定すると、保有魔力が4になっているという結果が表示される。

 アントフライの卵は、だいたい1日に1ずつ保有魔力が増えている。おそらくだが、上限に達することで孵化するのではないだろうか?

 卵の保有魔力の上限は5と表示されているので、予想通りならそろそろ卵が孵化するはずだ。


 誕生の瞬間を見るべく卵の様子を観察していると、卵の保有魔力がついに上限に達した。

 その途端、卵の表面を覆う半透明の膜が破れ、中から10センチメートルほどの小さな幼虫が顔を出す。

 ぶよぶよの体をした白っぽい蛆虫がもぞもぞと動いている。アントたちもそうだが、やはり虫系のモンスターは、少しショッキングな見た目である。


 さっそく鑑定を使い、幼虫のステータスを表示する。

 表示された種族はアントマゴット、戦闘力はおそらく最低であろう1、保有魔力の最大値は10、現在の保有魔力は孵化前に卵が保有していた量と同じ5だった。


 アント『マゴット』――つまり蛆虫である。

 1つの卵からアントマゴットが生まれると、それに連鎖するように周りの卵からも次々と幼虫が生まれ始めた。

 生まれた幼虫たちは卵の殻を食べ終わると、あたりを思い思いに這いずりまわる。50体近い蛆虫がうごめくさまはモニター越しとはいえ少し気持ちが悪い。


 アントマゴットの大軍を引き気味に眺めていると、近くにいたワーカーアントがアントマゴットのもとへと近づいていく。

 触角でアントマゴットの様子を確認していたと思ったら、なんといきなり噛みついてアントマゴットたちを食べ始めてしまった。


 アントマゴットが逃げ出そうともがき、破れた表皮から体液のようなものが飛び散る。モニター越しでもかなりグロテスクで、思わず目を背けてしまいそうになった。

 テイマーアントと、アントマゴットたちの母親であるアントフライはそれを見ているだけで、特に止めようともしないようだ。


 そのうちに、ワーカーアントは食事と思われる行動を終え小部屋を出ていった。

 ダンジョンのモンスターは、食事の必要がないはずであるが、いったいどうしたのだろうか?

 ワーカーアントのステータスを鑑定すると、保有魔力が5増えている。どうやらアントマゴットを食べることで、その保有魔力が増加したようだ。


 もしやと思い、そのまま観察を続けていく。

 アントマゴットたちの部屋には、たびたびワーカーアントやソルジャーアントがやってきて、アントマゴットを捕まえては捕食していく。

 最終的にたくさんいたアントマゴットは、数体だけを残して食べつくされてしまった。

 ちなみに進化済みのアントはアントマゴットを食べないようで、見向きもしなかった。


 これはただの予想に過ぎないが、アントフライはジャイアントアントにとっての家畜のようなものなのだろう。

 アントフライはアントたちに力を貸すことで、巣の中で生活し繁殖することができる。

 ジャイアントアントはアントフライを守る代わりに、余分な幼虫を食料として食べることができるということか。


 アントフライを増やせば、アントマゴットを大量に安定して養殖できるようになるだろう。供給が不安定な魔石に頼らずに進化を行えるようになったのはいいことだ。

 アントマゴットはまだ数体が残っている。彼らが成長して成体になれば、そのうちアントフライが増えるだろう。


 しかし、そうなると大量に集めた魔石はどうしようか?

 ダンジョンの片隅には、集めた魔石の山が築かれている。その数は千個近くになるかもしれない。

 今までと同じように、進化を促すために使うのもいいだろう。だが、それではもったいない気がする。他に利用方法がないだろうか。


 そういえば――ダンジョンのDPを増加させる方法の一つに、魔力を含む物質を吸収させるという方法があったはずだ。

 魔石以外にモンスターを進化させる手段を用意できた今ならば、DPの獲得のために使ってしまうのもいいだろう。


 魔石を吸収させると、魔石が保有していた魔力と同じ分だけDPが増加した。

 さらに、いつの間にか魔石による増加分のほかにもDPを獲得していたようだ。おそらくは、先ほど捕食されたアントマゴットが、ダンジョン内で『死亡』したからだろう。


 予想は当たった。これからは毎日の供給分のほかに、魔石とアントマゴットの養殖でDPを獲得できそうだ。

 いまのところ、1日に見つかる魔石の数はおおよそ100個前後、アントフライが順調に増えれば、1日1,000以上のDPを稼ぐことができるはずだ。


 今までの収入では、十分なダンジョンの強化のためには足りないと不安を感じていたところだった。

 進化のためにも使えるため悩ましいところではあるが、ダンジョンを運営するためのDP確保もまた大事だろう。

 ここは現在所有している魔石を全てDPに変換してしまうことにする。

 余っていた魔石の吸収はすぐに終わった。なんと1万ポイント近くもDPが増えている。

 約10日分の貯金の結果とはいえ、1日の獲得量の100倍ものポイントである。魔石の変換は、ダンジョンが解放されていない現時点では貴重な収入源になりそうだ。

 一気に増えたDPに、思わず笑みが浮かんでしまう。

 今日だけで安定した戦力の強化方法、新しい収入を発見することができた。ダンジョン解放までの期間の折り返しを迎えて、ようやく明るい希望が見えてきた。

 このまま順調にダンジョンの制作が進めばいいのだが――

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