第1話
初めての投稿です。
ふわっと考えて書いています。
よろしくお願いいたします。
ここは、そこそこ資源に恵まれた国、ビスタ。
陸続きで国が連なっていることから、少し前は、武力による戦争があちこちで繰り広げられていた。
ビスタもそこそこの資源があるので、そこそこよく狙われ、戦争を吹っ掛けられていた。
まあ、吹っ掛けられれば、受けて立つのが道理。いや、受けないと国が獲られるという悲劇。
それをさせない為にも、武力行使にでるしかない!と、国王は、国を挙げての戦争に駆り立てられる。
だが、しかし、戦争を繰り返す度に、国の経済は失われるわ、戦地になった場所は地が荒れるわ、人は減少するわで、一つも良い事がないことに、王たちも漸く気づいたようで、ここで色々と話し合いが持たれて、条約を結んだりして、戦争がない平和な世になった。
それは、本当に、大変喜ばしい事である。
そんな平和な国の一つとなったビスタは、王権制度が主軸となり、貴族も階級を持って存在し、その上で、貴族の意見も取り入れる、貴族院たる政治への活躍の場を持つ組織も存在されており、これは、よくある王国の姿でもある。
でも、他と少し違うのが、平民と言われる者達も政治への関与が認められ、平民による政治家たる者が存在する。
これを「平民議員」と人々は呼び、この「平民議員」を、多くの平民は憧れ、敬い、平民の中て英雄的存在として扱っていたのだった。
そんな「平民議員」は、各町から選出され、その選ばれた者が町を代表として、「貴族議員」と呼ばれる方々と同じように王宮へ向かい入れられるのだ。
因みに、「貴族議員」も、貴族たちから選ばれた、爵位や財力など大きな力をもつ強者である。
時は、王国の政治の場へ送り出す新しいスター「平民議員」を選出する頃。
各町では、それぞれのやり方で、今回も我らが「平民議員」を送り出そうと、あちこちで躍起になっていた。
騒がしい町の中を、一人の青年はいつもの帰り道を歩いていた。
外は、少し薄暗くなりつつある。
今日も、良く働いたと、自分を褒めつつ、家族が待つ小さくて古い我が家へ向かう。
青年、アッシュは、今年23歳になる独身の者で、職場は、トウの町にある小さな役場である。
平民にとったら、堅実的な仕事であり、収入も安定しているので、結婚相手としては有力候補だ。
しかし、彼は結婚に夢が持てず、未だに、実家で両親と祖母と慎ましく暮らしている。
その原因たるものは、彼の家庭に潜んでいる。
アッシュは、疲れを体に纏わせながら、ギシっと鳴る古びた我が家の扉を開けて、自宅に入って行った。
「お帰りなさい、兄さん!」
中に入ると、嫁いで行った妹が赤ん坊をあやしながら、出迎えてくれた。
この光景、確か、二日前にも見たような・・と、アッシュは首を掲げながら、「ただいま」と返した。
「父さんたち、また、フェイの顔が見たいかと思ってね」
妹は、アッシュが問う前に言い訳を口にする。
これも、二日前に聞いた言葉だ・・
「メイ、お義母さんがフェイの服を縫ってくれたから見て欲しいって」
妹メイの名を呼びながら、家の奥から顔を出したのは、妹の夫のロビンだ。
「あっ!お義兄さん、お帰りなさい。もうすぐ、夕飯ですよ。お義父さんも帰られてます」
にこやかに話すこの男も二日前に見て、また、同じセリフを聞いた。
ロビンは、息子のフェイをメイから受け取り、「僕、先に行くね」と、素早く、アッシュの前から消える。
そんな姿を見つめながら、メイが小さく呟く。
「ちょっとね、お義兄さんとあってね。どうも、ちょっと仕事でミスしたみたいで。そこに、ちょっとお義姉さんの不機嫌が加わってね。ちょっと出てきたのよ」
メイの言葉は「ちょっと」のオンパレードだが、多分、「ちょっと」でない話が山積みだろう。
アッシュは、只でさえ疲れた体だったところに、頭痛の兆しを感じた。
妹はそんな兄に申し訳なさそうにしながら、「ちょっとお世話になるけど、ごめんね」と告げた。
メイは、2年前に、この辺りでは1.2とされる裕福な商家、ハロルド商会の次男であるロビンと結婚した。
我が家の財政状況からしたら、特大的な玉の輿である。
ロビンとメイは、町にある学校で出会い結婚したのだ。
本来なら、お金のあるロビンの家なら、王宮がある王都の学校に入学も出来たはずだが、何故か、ロビンは近場を選んだ。
彼の兄、エディは王都の学校に入学し、そこで、平民ではあるが両親は貴族だった娘と結婚したとかで、町では大きなニュースになった。
それを思うと、ロビンの学校選択に疑問が残ったのだが、妹と結婚してから、アッシュも、何とはなしにロビンのことを理解した。
思えば、結婚する際に、ロビンの両親が「ロビンを頼むよ」と、メイに何度も告げていた事を思い返す。
そんなロビンとメイは、ロビン家族が住まう大きな屋敷と同じ敷地に小さな家を建てて貰い、半同居状態だ。
普通なら、顔を合わす事は少ない環境のはずだが、そこから出て、嫁の実家に転がり込むということは・・・考えたくないことがあったのだろう。
「とりあえず、夕飯にしようよ」
メイは、アッシュに微笑みながら、自分達の家出の原因を濁して、その場から逃げたのだった。
アッシュはこめかみを手で押さえながら、ため息を吐いた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。