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ガラスのフェニックス  作者: たつだるま
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第6話

 そして朝になって、ガラス職人が家に帰ると不死鳥がいつも寝ている台から落ちていました。

 あわてて抱き上げると不死鳥は荒い息で言いました。


「そんな顔をしないでください。わたくしはすぐに蘇るのですから。」


 彼が昨日まで元気だったのでガラス職人は忘れていました。

 彼とはじめて会った日、彼は自分が七日のうちに死ぬと言ったのです。


「しかし、今日はまだ五日目だよ。まだ、まだ二日残っているじゃあないか。」


「ええ、わたくしの思ったよりも少し早いようです。水を少しいただけませんか。体温を下げればだいぶ楽になるのです。」


「ああ、水くらいならいくらでも用意しよう。」


 ガラス職人は不死鳥をベッドに乗せると、桶いっぱいの水を()んで来ました。

 不死鳥は水にくちばしをつけて少しだけ飲み、苦笑しながら言いました。


「こんなにたくさんありがとうございます。かなり楽になりました。しかし、わたくしは鳥ですから、コップに一杯もあれば一日過ごせるのですよ。」


 不死鳥は本当に楽になったようで、昨日までと同じ調子で話しています。

 彼は言葉を続けました。


「ただ、もう飛ぶのは無理かもしれません。わたくしの命も明日の朝までが限界でしょう。わたくしが死にましたら、太陽の当たるところに置いてくださいまし。わたくしはすぐに炎と共に蘇ります。これでやっとわたくしが不死鳥だと証明できる。」


 ガラス職人は立ち上がって言いました。


「そんな姿は見たくない。証明なんていらない。ほかの職人たちも同じ気持ちに違いないよ。しばらくの間ここで待っていてほしい。彼らを呼んでくるから。三人は本当の腕ききなんだ。今度こそ、君の魂の器を完成させる。」


「しかし今からでは間に合わないでしょう。」


 不死鳥は部屋を出ていくガラス職人の背中に向かって言葉を放ちましたが、返事は返ってきませんでした。



 ガラス職人は走りながら考えました。

 昨日の夜、工房には四人とも揃っていた。

 お互いあいさつもしなかったが、道具を使う音が会話するように響いていた。

 きっと彼らは最高の作品を作っている。

 きっと間に合うはずだ。


 ガラス職人が工房に着くと、共用台には3羽の不死鳥がいました。

 銀の不死鳥も、木の不死鳥も、青磁の不死鳥も、どれも先日のものを遥かに上回る美しさでした。


 それを見てガラス職人は息も絶えだえに言いました。


「この作品たちに称賛の言葉を浴びせたいが、それよりも先にみんなに聞いてほしいことがある。」



 

今夜は最終話と同時更新です。

 

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