第5話
ある夜。
銀の不死鳥を見た日の夜。
陶器焼き職人は考えました。
不死鳥は火の中で復活する。
ゆえに、火の中で完成する陶磁器こそが、もっとも不死鳥の魂に馴染むのではないか。
ならば自らの持てるすべてをかけて土をこねよう。
自分の人生のすべてを注いで作った不死鳥の生素地を炉に入れる。
これは自らの人生そのものの火葬のようでもある。
一度葬ったようにも思える自分の人生が火の中で復活するのだ。
これはまさに不死鳥のようではないか。
制作が始まって四目目、三体目の不死鳥が焼きあがりました。
艶やかな青い肌に白い羽の、磁器の鳥でした。
今まさに死より蘇ったと思わせるような躍動感のある肉体に、孔雀の尾のような青い尾が燃え上がる不死鳥でした。
これを見て、不死鳥も、ガラス職人も、木彫り師も銀職人も、絶句しました。
しばらく誰も声を上げませんでしたが、陶器焼き職人が「試してみろ」と言うと、不死鳥が思い出したように言いました。
「ああ、これは見事でございます。なんと…なんと…言葉で言い表すことができぬ素晴らしさです。ありがとうございます。わたくしはこれで…」
すべて言い終わらぬうちに不死鳥が倒れました。
彼の魂が磁器の不死鳥に吸い寄せられたのでしょうか。
「かなわぬ、かなわぬ。陶器焼き職人の作るものには魂が宿ると思っていたが、言葉どおりではないか。」
銀職人が言いました。
続けて木彫り師も言います。
「次はおれが勝つぞ、陶器焼き職人。みて…」
むくり、と、不死鳥が起き上がりました。
不死鳥は震えた声で言いました。
「わたくしの魂はどうやってもこれに入ることができません。」
銀職人が言います。
「天上のものとは、人に作れるものではないのだろうか。」
工房にはしばらくの間沈黙が流れました。
ガラス職人はなんと言ったらいいかわからず、小さく震える不死鳥の肩に手を置きました。
不死鳥は短く「ああ」と言いました。
次いで木彫り師も「ああ」と言いました。
銀職人も、陶器焼き職人も「ああ」と言いました。
そして、三人と一羽が同時に言いました。
『なぜだめなのだ!』
するとどこからともなく、太く優しい声が聞こえてきました。
「不死鳥よ、ただ姿を模しただけの美しいものではお前の魂を入れることはできない。お前の魂が入ることができるのは、お前そのものを模したものでなければならないのだ。」
ガラス職人は、きっとこれが神様の声なのだろうと思いました。
不死鳥が小さく、
「わたくしそのもの…」と言うと同時に、
ガラス職人以外の三人が『わかった!』と言いました。
そして三人はそれぞれ工房を出て行きました。
そうかみんな何かをつかんだのか。
ならば安心だ。
彼がもう一度死の苦痛を味わうことはない。
ガラス職人はそう思いました。
しかし、せっかく彼と仲良くなったのだ、友として何かを贈ろうではないか。
その夜、ガラス職人は不死鳥が眠ったあとこっそり工房に向かいました。