13.ジャンヌの悩み
「うう……少し憂鬱ですね……」
翌日ジャンヌはアルトに呼び出されていた。そのままごまかすことも考えていたのだが、今回は自分がアルトたちを巻き込んだ上にデスリッチにも絶対に行くようにと言われていることもあり完全に逃げ道はふさがれているのだ。
「それにしても、アルトさんとお話ですか……絶対モナのことですよね……」
勇者パーティーの一員だったときは多少自由だったとはいえ、教会の聖女として参加していたのだ。あの頃のジャンヌはちゃんと猫をかぶっていたのである。しかも、とっても分厚い猫を……
冒険中だってちゃんと大人しくしていたこともあり、そんな勇者パーティーの一員に自分の本性を晒すのにはだいぶ抵抗がある。
まあ、親戚であるホーリークロスにはばれていたようですけどね……
気分が重いまま手紙に書いてあった部屋へと入ると違和感を感じる。
これは何らかの魔力の流れでしょうか?
絶対領域の精度を高めて、何が起きてもよいように気合を入れると、そこはテーブルと椅子にベッドのあるごく普通の宿の一室である。
ジャンヌが違和感を感じながらも、席に座ると同時に一人の人影が部屋に入って来る。
「アルトさん、一体どんなお話を……」
「ようやく捕まえたわよ、ジャンヌ。いろいろと聞きたいことがあるんだからね」
「なんであなたが……」
ジャンヌの声にこたえたのはアルトではなかった。魔法使いが身に着けるローブにぷにぷにほっぺの可愛らしい少女……そう、モナである。
てっきりアルトから説得されている思っていたジャンヌはいきなりの奇襲に焦って、奇行に走る。窓から飛び降りようとしたのである。だが、不可視の結界のようなものにはじかれて窓を開けることができない。
「これは……まさか……!!」
「ええ、そうよ。デスリッチと私で即席の魔法を作ってみたの。四天王選別試験で作られていた『せ〇〇〇しないと出られない部屋』を再現してみたの。すごいでしょう」
「く、あの人もですがモナも魔法に関しては本当に優秀ですね!!」
元四天王のリリスの高レベルな魔法を模倣した二人の才能に思わずジャンヌは叫び声をあげる。試しに魔法解除を試みてみるがはじかれてしまう。
「無駄よ、この結界のすごさはあなたも聞いているでしょう? だって、魔王すらも力づくでは逃げることができなかったんだから……ねえ、ジャンヌ……いえ、愛どれ……愛奴隷ジャンヌ? ねえ、この名前自分で名乗っていてはずかしくなかったの!?」
「冷静に突っ込むのはやめてください!! しかもあざけりならばともかく憐みの表情はちょっと傷つきます!!」
途中で言いよどむモナに、ジャンヌも冷静になったのか顔を真っ赤にしてつっこみをいれる。そして、二人の会話がはじまった。
本当に魔法に関しては天才なんだよなぁ