11.サティ=エスターク
「うわぁぁぁぁぁ、もう何を聞いてるんですか? あなたは!! 私はちょっと酔いに任せて甘えようとしただけなのに!! 大体パッドとか貧乳とか言いすぎですよ!!」
『うるさいですね……大方グレイに異性の誘惑の仕方でも聞いて参考にしたんでしょうが、稚拙すぎますよ。第一、あなたは状態異常無効があるんだから酔っぱらったりなんかしないでしょうに……」
「うう……だって、甘えたかったんですもん……守ってもらえて嬉しかったんですもん……友達って言ってもらえて嬉しかったんですもん……」
図星をつかれて私は押し黙る。でも仕方ないことではないだろうか。魔王として即位してからというものの魔物を守る事はあっても、守られる事なんてなかった。尊敬の感情を抱かれることはあっても、友愛の感情を抱かれる事は少なかった。
だから、私が魔王だと知っているのに守ってもらえたのが嬉しかったのだ。だから、友達だと言ってもらえて嬉しかったのだ。
『あなたはちょろいですね……』
「うるさいですよ、エルダー!! 大体私がアルトさんを気になっていたのはそれだけじゃないんですからね!! あの人はみんながめんどくさがる仕事だって色々やってくれますし、いつも一生懸命ですし、私の愚痴も結構聞いてくれますし、いい人なんですよ!!」
『うむ、相当お熱なようですね。ならば私のサポートは有効だったと思いますよ。アルトさんはよりあなたを意識したでしょうね』
「え……あ……う……」
私はその一言で寝たふりをしていた時にアルトさんがエルダーに言っていた言葉を思い出す。
『本当のサティさんを知れたという点では良かったなって思ってます。今までは憧れだけで見てましたからね。だけど、俺は鑑定スキルのおかげで魔王としてのサティさんを知る事もできました。そして、俺はこれからもサティさんの事を知って、俺の事も知ってもらって行きたいと思います。そして、覚悟が出来たら、その時は酒の力とかじゃなくて堂々と誘いますよ』
これってつまり、アルトさんも私の事を悪くはなく思ってくれていて……そして、覚悟ができたら誘うって言うのはそう言う事で……
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、エルダーのばかぁぁぁ、明日からどんな顔をしてアルトさんと会えって言うんですかぁぁ!!」
『はっはっは、青春ですね。ちゃんと楽しんでください。それが若者の特権ですよ。特にあなたは色々と重荷を背負わせてしまいましたからね……魔王でもなく、受付嬢でもなく、サティとして彼と』
「何を言っているんですか、魔王になるのは自分で決めた事ですよ……。でも、あれがアルトさんの本音なんですよね。あーもう、どうしましょう」
私はベッドの上の枕に顔をつっこみ足をばたばたさせてしまう。だって、あんな恥ずかしい事言われたらこっちだって絶対意識をしてしまうじゃないですか……
私は忙しい父の代わりに私に色々と教えてくれたエルダーを睨みつける。彼は私にとって家族のようなものだった。性別はないが、私にとっては父よりも親のようなものだった。
そして、彼が私の成長を楽しんでくれているように笑っているのが少し嬉しかったのは内緒だ。
ラブコメみたいな展開でしたがいかがでしたか?
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