第四十九章 新たな旅
二人は窓から広い世界を見渡す。蓮は限りなく続く砂漠に圧倒されていた。その姿を、Θ(サラ)は優しそうに見守る。しばらく、蓮の感嘆が車内に響いた。
「ところで、何故、A地区の人間と一緒にアンドロイドがいる?アンドロイドは違法の筈だが?」
蓮の声に飽きたのか、Bが少々不機嫌そうに聞く。
すると、蓮が声明るく答えた。
「Θ(サラ)はね。僕のひいひいお爺ちゃんの頃から一家を守ってくれてるの。だから政府も特別に許可を出してくれたの!」
「そうか…。なら爆ぜずに済むな。」
Bはそう言って町の前で車を止めた。
「蓮君。これを着たまえ。」
Bが蓮に砂漠用のマントを渡す。
「私の動力源は旧式なので大丈夫です。」
Θ(サラ)はマントを着けず、蓮のために先に外に出て、ドアを開けた。
「では、三人とも、行くぞ。」
四人と一体はダムダムの家を目指した。
結月とダムダムの家の前に立つ。
ノックしても返事が無い。
「お邪魔する。」
Bは勝手にドアを開けて、入って行った。
しーんとした部屋。電気はついていなかった。
「誰か?いないか?」
Bが呼びかけながら、部屋を回る。
すると、ミューが机の上にメモを見つける。そこにはこうあった。
“親愛なるミューへ
貴方が近々、此処によった時の為に、これを残します。私は遠くまで出かけています。こんな身体でも、誰を愛せると信じて。なので、当分帰って来ないです。もし、此処に寄ったなら家を使ってもいいです。
追伸:貴方以外私の部屋に入れないで。 ”
ミューが拾い上げ、Bに部屋を使って良いと伝える。
「結月には感謝だな。では、蓮とΘ(サラ)。君達はリビングで寝てくれ。ルイ君。君は倉庫でもいいかい?」
「 」
その言葉を割り込む様に、ミューが喋りだす。
「私は、結月の部屋で寝る…。」
そう言って、結月の部屋に上がった。
「分かった。ルイ君。頼んだよ。」
そう言って。Bはダムダムの修理場に入って行った。
〜〜〜〜〜結月の部屋〜〜〜〜〜
ミューは結月の部屋に入る。部屋には綺麗なガラクタが棚に並べられていて、壊れかけの電飾で飾られていた。棚に並ぶ綺麗なガラス瓶や半導体と共に、砕けたクローバーの髪飾りがあった。ミューはそれを手に取る。髪飾りには大きな鉄片が刺さったままになっていた。ミューはこれがダムダムの物だと一瞬で理解した。なんだって、ミューはダムダムが死んだ瞬間をパソコンを通して見守っていたからだ。
「はぁ。結月はしっかり生きてますよ。」
ミューは呟いた。
今度は、机に目をやる。日記帳には、ダムダムがいなくなった事への苦難が綴ってあった。ミューは日記帳を遡る。ある日を境にダムダムへの嘆きでなく、自分についての記述になっている。多分、この日が…
〜〜〜〜〜ダムダムの修理場〜〜〜〜〜
此処に来たのは他でも無い。蓮とΘ(サラ)の情報を見直す為。屋敷に侵入した時、ルイが持って帰った資料。
『極秘14年前のA地区屋敷爆破事件に関して』
「これだ!」
Bは資料を読む。その中には、‘蓮’と文字があった。
〜〜〜〜〜リビング〜〜〜〜〜
蓮は地べたに横たわる。その上から、Θ(サラ)が布団をかけた。
「僕達、大丈夫かな?」
蓮が不安の声を漏らす。
「蓮様。心配はいりません。貴方様に何があろうとも、私がお守りします。」
「ありがとう。やっぱ…Θ(サラ)は…」
そう言い終わるや否や蓮は寝てしまった。
Θ(サラ)はふと頭を撫でる。私は他のアンドロイドと違い、感情が芽生えなかった。今私がするこの動作もプログラムに過ぎなかった。頭を撫でおえると、シャットダウンモードに入る。Θ(サラ)は最後に、蓮の顔を見た。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
〜〜〜〜〜倉庫〜〜〜〜〜
結月がいた頃、三人で過ごした空間。つい最近の事だが、遠い昔の匂いがする。
「 」
ルイはシーツに横たわる。砂漠の夜は寒かった。
キューブ。これは意思。これは記憶。コレは源。
これは…歯車。
りんごが落ちた。