第2章 もうひとつの皮膚
どれくらい経っただろうか。青年は走り疲れたのか、道端で倒れ込み寝てしまった。
雨水の溶けた服の寒さで目覚める。どうやら人通りの少ない路地裏で倒れてしまったようだ。しかも、ハイドファーは、壊れて作動しない。
「 」
青年は、制服の上着を脱ぎ捨てシャツだけになる。そして近くの雑貨屋へ、駆け込む。
「いらっしゃい」
古いハイドファーをつけた定員が吐き捨てる様に言った。青年は急いで服を探す。店内のテレビが物静かに語る。
「昨晩、住宅地B-12のマンションで爆発事故が起きました。政府は、去年の事件と同じ犯人の犯行と見て調査しています。」
「 」
青年そうボソッと呟く。
「次のニュースです。また政府公認考古学研究所の職員がトラックに轢かれ死亡し....」
テレビの音声は、店内の張り裂けそうな空気を和らげる。
青年はtシャツを見つけたが、サイズが大きいようだ。しかも、ハイドファーも壊れていて雨も避けられない。
「 」
そう思い、真っ白なtシャツと大きめなネイビーブルーのジョガーパンツを買った。有り金をほとんど全て使い果たしてしまったが、服を変える方が優先的だったらしい。そして青年は、また雨が空間を切り裂く世界へと戻った。路地裏で着替え、制服は近くのゴミ箱へ、放り込んだ。
アテはあるようだ。青年は、新しい衣と共に祖母の住むD地区へ出発することに決めた。そして警察の目を少し気にしながら、近くの駅へ歩み始めた。ついさっきまで雑貨屋の室温で、温められていたシャツが次第に重く、冷たくなってゆく。
「 」
幸先が不安なのか何か心ざわりがあるのか青年の歩みは、昨晩よりだいぶおぼついていた。周りの人々は、壊れ、液晶のライトもつかないハイドファーを被るずぶ濡れの青年を、見ても見ぬ振りをし、横を通り過ぎてゆく。青年は、周りからのあってないような目線を気にしていた。相手のハイドファー越しに感じる目線、通り過ぎるたび人々はハイドファーをこちらに傾かせる。
「 」
そう思い、その感情を押し殺した。
駅につき、わずかに余った金で祖母の家に出来る限り近い駅の切符を買った。そして青年は、宙に浮く電車で、祖母の家を目指す。車内は人は、少ないが駅までの道のりですれ違った人々のように、冷たい目で青年を見る。
「 」
そう思いながら車内を過ごした。祖母の最寄り駅に着き、家に向かって歩く。日はもうとっくに傾き人工太陽が、車内で過ごした時間の長さを物語った。雲がかかり薄暗く赤い夕焼け。
「 」
と呟き、青年は足を動かす。
もう夜になった。祖母の家は近い。そこからまた幾らか歩いた時、異変に気づく。祖母の家辺りから火が上がっている。
「 」
青年は残りの体力を振り絞り走った。
祖母の家は高く火柱を上げ、家は半壊している。
「 」
火を上げる瓦礫を避けながら家の中へと向かう。その時。廊下の壁が弾け飛ぶ。
「此方に来てはならない!」
壁から出てきた男が青年に言う。
「此方は危険だ!下がってなさい」
炎上する逆光ではっきりと姿は見えないが、背の高いシルエットが見えた。
「もういい、私の後ろに下がってなさい!」
青年は従い後ろに隠れると、周りに無数のロボットのサイレンの光が見えた。
「 」
「私が援護するから、玄関先の車に乗り込みなさい」
「 」
青年は玄関先の車に向かって走った。
すると後ろから小さな爆発音が連続して聞こえる。
青年は車に向かう、背後では爆発音と共に一瞬光っているのを感じる。そして、青年は車に乗り込んだ。