第三十一章 部族のサラダ
走って、村の入り口まで来る。
「あれだ!」
商人が指差す。そこには、肉眼で確認できるほど人影が群がっていた。
「ありがとう、カシ。」
カシと呼ばれた商人は頷く。人影は此方に急速に迫っていた。
ドガーーン
此方も、幾らかの大人が応戦している。
「いくぞ!」
Bは爆発音を聴くと、走り出した。ダムダムも後をつける。大人達は、前線に飛び込んで行った。
「どうする?」
ミューがルイに話しかける。
「 」
ミューは頷くと、入り口の柱の影に隠れてパソコンを構えた。それを見たカシは、マントからバレルが異常に長い、リボルバーを取り出し、ミューと反対側の柱についた。ルイも銃を受け取り、防衛を開始した。
前線で、Bは沢山の部族に弾丸を喰い込ませる。貫通した弾は後ろに続く部族を引き裂き、二、三人がバタバタと倒れて行った。
「かなり多いな。」
Bが言う。ダムダムは沢山の銃を斉射し、弾が部族の身体に穴を開ける。その屍を超えた部族もまた同じ様に倒れる。
「この村は資源が豊かだからでしょうか。」
Bは肉に穴を開けられ、倒れて逝く部族に一瞬目をやる。
人間の顔。布で大部分は覆っているものの、ほぼ人間の顔をしていた。その事実は、ミューもルイも気付いていた。
Bとダムダムは前線で応戦しているが、数と疲労で少しずつ前線が下がって行った。
「 」
ルイは現状に焦り、さほど離れていないミューの方を一瞬みる。ダムダムの方はカシのリボルバーに助けられて、命拾いしたと言うのに、ミューは相変わらず、パソコンを打っている様に見える。
( )
ルイは思った瞬間、ルイねハイドファーから聴き慣れた声が聞こえる。
「西北西に向かって!」
ミューの声だ。
「早く!」
ミューが急かす。ルイは走って、指示に従った。いつものミューとは思ない程、ハッキリと喋っている。
「このさきに、敵の爆弾の信号をとらえたの。」
ルイはあちこちで立つ砂埃に注意を払いながらミューの話に耳を傾ける。
「ルイはそれを起爆してきて。あとは現地で!」
すると、ミューの声は聞こえなくなった。
ルイは背後に注意を払いながら走った。
ミューが言って様な、駐屯地に着く。そこは、壊れ、廃れたビルを改装した、簡素なベースだった。
「着い…」
ミューが絶句する。そこには、ルイ一人では太刀打ち出来ない程の部族がいた。
「そこに衝撃式の爆弾があるから…じゃあね。」
プツン
通話が切れる。
「 」
ルイは呟くと、右手を構えた。
右手に無雑作にくっ付けられた機械をいじる。レロトがこれをくれた当時は、革のバンドで固定していた筈だが、今はいつの間にか手にしっかりとボルトで固定されていた。
反重力装置を構え、照準を合わせる。
「 」
あっと言う間に、砂埃が駐屯地を覆う。
その隙を見計らい、ルイは駐屯地に乗り込んだ。
物陰に隠れながら、爆弾のスイッチを押す。爆弾が小さく起動音を鳴らした。ルイは、走って引き返した。
走って逃げている最中、ミューから連絡が入る。
「大丈夫だった?」
「 」
ルイは答える。
「そぅ。お疲れ。」
プツン
ミューからの通信が切れた。
B達はまだ前線で戦っていた。
「何だ?」
部族が急に攻撃をやめ、退却して行った。
「何か来るかも知れないです。」
ダムダムは構える。
部族が逃げた先には、投石機の様な物が有った。
「爆弾だ!」
ダムダムは後方の味方に知らせる。Bもそれに続く。
「バリアを張れ!」
村の方が騒がしくなる。
「#/&?+々^〆=」
後方から大きな声が聞こえる。
ドガーーーーーン
大きな爆発音が聞こえる。
振り返ると、部族が自爆していた。部族の死体が幾つか宙を舞う。
Bとダムダムは首を傾げながらも喜んだ。
二人が戻って来ると、ミューが事情を説明する。
「なるほど。本当に有難う。」
ダムダムがお辞儀の代わりか、銃を傾ける。
「では、お望み通り。報酬金を見に行きますか。」
☆☆☆ドーム内人間にとってのお宝☆☆☆
地下世界のナウくて、エモい諸君にとって、写真を撮ってチャットにあげるのはもはや日常だろう。そんなクリエイティブな諸君に朗報だ!ドーム外には素晴らしい景色が存在するらしい。目を見張る程の絶景だとか。そんな写真をアップすれば、バズること間違いなし。しかし、ドーム外には危険が伴う。まず、通常の服装で行ったら、一瞬でノックアウトされてしまうということ。だから、特殊なポンチョが必要らしい。大変レアなので見かけたら是非買っておこう。次に、ドーム外には戦闘狂が多いらしい。既に有名な、冒険家がドーム外で命を落としている。しかし、ドーム外ではエネルギーの問題で銃が使えなくなるらしい。ようは、これも特殊な銃が必要と言う事。そこまでして、ようやく辿り着ける綺麗な世界がある。是非、ドーム外へ行ってみてはどうだろうか。行けば君も、バズり人気者だ。
地底世界、某ポップ誌