第七章 170 Bar
Bが飛ばした車は車道を走る気配が無い。
「 」
Bは言う。
「君が一度も行ったことの無い世界だ。」
そして、Bはの高度を更に下げる。
「買い物?」
ミューが通常に比べてかなり大きな声で言う。
「今日は違う。情報からだ。」
「えー。つまんない...」
Bに話す時だけ、ミューは素直になる様だ。
そして、ミューは駄々をこね続ける。
「やだ!やだ!やだ!やだ!」
Bは、無視して言う。
「ところで、ルイ君。勇気はあるかね?」
「 」
「なるほど。じゃぁ、人を撃てる勇気は?」
「 」
「分かった。これを渡しておこう。」
Bがルイに手を差し伸べる。そこには円柱状の塊があった。
「それはだな。スプレー缶と言って。簡単に言えばグラフィティをかける。」
「 」
「あぁ、ただ、使い方次第では武器になる。まぁ、習うより慣れだ。これから行く先は治安が悪い。もしかすると、使う事になるだろう。」
「 」
するとミューが、
「ズルい...」
と、僅かにルイを睨む気配を感じる。
「ミュー君。君にはその、文明の箱があるじゃないか?」
「パソコンだし!」
ミューが大きな声を出す。
「パソコンじゃ危ないし!」
「どうせ、私達の後ろに隠れて、表へ出ないのだから要らないだろう?」
「...」
ミューは黙り、ルイを睨む。
少しの沈黙の後、Bが口を開く。
「ルイ君。昨晩私達の目的を話したが、ほとんどと言っていいほど情報が無い。政府の基地も、倉庫も、放送塔すら見当がつかない。しかも、私達四人ではあまりに非力過ぎる。私達の旅は本当に危険で長くなるが。よろしく頼んだぞ。」
「 」
そして、車内にレロトのいびきとミューの愚痴が聞こえてくる。
〜〜〜〜〜数十分後〜〜〜〜〜
「よし、もうそろそろだ。」
Bが皆に言う。そして、"170 Bar"とネオンサインのある店に着く。Bは店の駐車場に車を止めると、言う。
「此処からは、危険だから警戒を怠らないように。いいな。」
「私は行かない...」
「分かった。では、ルイ君、レロト。行くぞ。」
「勿論だ」
「 」
バー、一度も来た事が無い。しかも、D地区のこんな端まで来たことすら無い。此処は端すぎて、ドームの一部が見えるほどだ。
バーの中に入る。柄の悪そうな人々が酒を飲みあっている。怪しく光るネオンライト。ファンに巻き込まれるタバコ煙の筋。一切動かないバーテンダー。まるで、泥だらけの部屋を箒だけで掃除した様な部屋だ。
ルイはスプレー缶をポケットの中で強く握る。
「どうも、Bさんご注文ハ?」
「あぁ、なら地下は?」
「おいB。何故此処に来た?」
ガタイの良い、パンクな格好をした男がBに絡む。
「オメェが来るのは、"禁止"だったよな?」
「無駄口を叩かないで欲しい。此方も穏便に済ませたい。」
「ふん。まぁ、行って殺されても知らねーぜ?」
そう言うと男は、席に戻る。
Bは続ける。
「で?地下は?」
「すみませン、Bさんは地下をご利用になれませン。」
「なら、仕方ない。」
そしてBは、トレンチコートの裏に手を入れる。
「ここで暴れれば、余計、地下から遠のきますヨ?」
Bが腕を伸ばす。
「コレナをコークで。」
と言い、現金を取り出す。
「了解しましタ。」
すると、レロトが
「やるのかと思ったぜ。」
「流石にな。此処でやれば、ルイ君が危ない。」
ルイがBの隣に立つ。
「二人とも何か飲むか?」
「んじゃ、儂はウォッカを。」
「 」
「分かった。追加で...」
すると突然、ミューの声がBのハイドファーから聞こえる。
「早く、戻って。やばい」
すると、遠くから聞き覚えのあるサイレンの音が聞こえた。店内が騒々しくなる。
「構えろ。ショーが始まる。」Bが言う。
:::::ある日の会話:::::
ミュー「このアニメまた再放送だよー。」
B「まぁ、しょうがないだろう。」
ミュー「しょうがなくない。もう3周連続だよ?
製作者は三週間サボってるんだよー?」
B「まぁ、メディアを作る者は、"テスト"が有
るからな。」
ミュー「テスト?なんで?」
B「この社会。政治家にとって不満な放送をさ
れては困るからな。例えば、アニメで
あっても政治批判は、嫌なのだろ
う。だから、政府への誠意を示
すテストが行われている。」
ミュー「へー。じゃあサボってないんだー。」
B「あぁ。製作者はも"定期テスト"があって大
変だ。」