7 荒廃した生徒会室に現れたのは
放課後、ゆいは生徒会室に来た。
軽く三回ノックし、「どうぞ」という声でドアを開いた。
「ああ、いらっしゃい。ゆいちゃん、だよね! ささ、適当に座って」
生徒会室の中央に、無造作に並べられた椅子を指さして、金髪の男子学生はゆいを手招きした。男子生徒の制服は学ランだが、彼のそれは改造されており、丈のごく短いものになっていた。両耳にはピアスの穴が複数開いており、手首にはぎらぎらと光沢のあるブレスレットがはめられていた。
「どうも……」
ゆいは彼の姿に委縮してしまった。
ゆいは椅子に浅く腰を掛け、生徒会室を見渡した。
通常の教室の半分の広さもないほどの空間で、壁には無数の傷と落書きがあった。窓にはひびが入っており、ステンレス製の書類棚は隅がいびつに歪んでいた。また、床にはペンキをこぼした跡のようなものがあり、首のない木彫りの熊の置物が転がっていた。
ゆいは想像と大きく異なる生徒会室の様子に不安になった。とても生徒会長が活動しているような雰囲気ではなかったからだ。
「ごめんね。こんな汚いところで。ああ、僕は衛藤マサキ。副会長をやってる。よろしくね!」
マサキという金髪の男子学生は親しみやすい笑顔でそう言った。
「あ、副会長さんでいらっしゃいましたか……!」
「——また! こんなものが!! ううぉおおおおおおおおおおお!!」
マサキははっとして左腕のブレスレットを荒い手つきで取り、そのままそれを床に投げつけた。
ゆいは絶句した。
「あの、大丈夫ですか……?」
はあはあと息を荒げているマサキに、何とか声をかけた。
マサキは肩を上下に震わせていた。
「ああ、ごめんね。こんな姿を見せてしまって……」
「は、はい……」
ゆいはマサキの狂い気に圧倒されながらも、生徒会室が荒れ果てている理由がわかったような気がして腑に落ちていた。そして、早く誰か来ないかと切に願った。
ゆいがそう思ったのもつかの間。生徒会室のドアが開いて生徒会長が入ってきた。
「か、会長……!」
ゆいは思わず、すがるように生徒会長を呼んだ。
「あぁ? 誰だよ、お前」
底冷えするような低い声と鋭い眼光がゆいの身体に刺さった。
紛れもない生徒会長の姿で、けれど普段とは全く雰囲気の違う人物がゆいを睨みつけていた。
「え、えええ」
生徒会長はじっとゆいを見ると「哀川か」とこぼして、一番奥にある椅子に深く座った。
ゆいは生徒会長の変わりように唖然としていた。
「あ、あの、高峰先輩……?」
ゆいは確かめるように訊ねた。
「だったらなんだよ」
「いえ、何も……」
ゆいは卒倒しそうだった。優しくて凛とした生徒会長を追いかけて生徒会に入ったにもかかわらず、生徒会室にいた生徒会長、高峰エイジは極悪人のような人物だった。
呆然としているゆいに、高峰は静かに低い声で言った。
「呪われてるんだよ、この学校の生徒会は——」