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生徒会長がモテる理由  作者: プリン
生徒会の秘密
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6 選挙結果は……

 翌日、ゆいは開門と同時に昇降口へとかけた。

 ゆいが駆け寄ると、昇降口にはまだ選挙結果は張り出されていなかった。

「まあ、そうだよね……。いくらなんでも早く来すぎちゃったな」

 ゆいは誰もいない早朝の昇降口に座り込んだ。まだ肌寒い四月の風が、ゆいの身体に吹き付けた。



 かさかさと紙がこすれるような音がして、ゆいは自分が寝てしまっていたことに気づいた。ふと顔を上げると、生徒会長が選挙結果の紙を貼っている姿が見えた。

「あ」

 ゆいの声に気づいた生徒会長は振り返って「あ、起きちゃった?」と笑った。

「は、早く来すぎてしまって」

 

 生徒会長は、選挙結果の書いてある大きな模造紙を張るのにてこずっているようで、ゆいはとっさに紙を抑えて手伝った。

「ああ、ありがとう」

「いえ」

 丸まった模造紙の端をすっと伸ばすと、そこにはゆいの名前が書いてあった。

「あ」

「哀川さん、当選おめでとう」

 生徒会書記と書かれた欄には、ゆいの名前がはっきりと載っている。


「わ、私、あんな下手っぴな演説だったのに……」

「下手だなんてことはないよ。とっても印象的で面白かったよ」

 生徒会長は思い出したように笑い、目を細めた。

 そして、ゆいのほうを向いて「よろしくね」と手をだした。

「こ、これは、握手の御手でしょうか……?」

「はは、やっぱり面白いね、君。握手以外に何があるっていうの?」

「では、失礼します……」

 ゆいは両手を差し出し、そっと握った。


 ぐっと生徒会長が手を握り返すと「そうだ」と、ポケットからぐしゃぐしゃの紙を取り出した。

「これ、昨日の演説中に落としたメモ書き。片づけをしているときに見つけたんだ」

「あ、ありがとうございます」

 生徒会長は紙を伸ばして、ゆいに渡した。

「何回も書き直した跡がある。一生懸命、考えたんだね」

「私は、会長さんみたいにぱっと話すことを思いつけないので……。本当は紙とか見ないで言えたほうがかっこいいんですけどね、あはは」

 ゆいは照れ隠しにぎこちなく笑った。


「推敲された言葉に敵うものはないよ。お疲れ様」

「どうも……」

 ゆいは生徒会長との距離の近さに気づいて、どきどきとした。

「それから、さっそくだけど、今日の放課後、生徒会室に来てくれるかな」

「今日から活動開始ですか! よ、よろしくお願いします!」

「うん、色々と、たくさん、説明することがあるから、忘れずにね」

 生徒会長は「じゃあ」と手を振ると、去っていった。


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