4 選挙運動で公開告白
次の日の朝、朝のホームルームが始まる前に、ゆいは立候補届を吉沢先生に提出した。
そして、朝のホームルーム。
「うちのクラスからは哀川が生徒会に立候補した。来週にはもう選挙があるから、みんな応援しとけー」
吉沢先生がそう言うと、クラスがどっと盛り上がった。
「明日からさっそく選挙運動しないとね!」
「選挙運動?!」
ゆいははっとした。立候補をしたは良いものの、選挙運動をしなければならないことを忘れていた。
「ええと、選挙運動って、登下校の時間に校門に立って『清き一票を!』っていうアレだよね……?」
「それ以外に何があるの!」
サラは私も手伝うから、と肩をぽんと叩いた。
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次の日の登校時間。
まだ生徒の姿があまり見えない時間から、ゆいは校門に立っていた。左右には『哀川ゆい』を書かれた紙を持つサラとクラスメイトの数名が構えていた。
「みんな、来てくれてありがとう……! とってもとっても、心強いよ!」
ゆいは深々と頭を下げた。
「まあ、私はもちろん友達の応援ではあるけど、高峰先輩を見てみたいかな。生徒会長はモテるらしいし」
サラは顎に指をあてて言った。
「あ、そっか……。会長に会えるかもしれないんだ……」
ゆいはいつもより声を張って、声をかけた。
「一年の哀川ゆいですっ! よ、よろしくお願いします!」
次々と校門をくぐる生徒にゆいは声をかけ、ぺこぺことしていた。
「うわあ、一年生だ。朝からご苦労だなあ」
すれ違いざまに発せられるゆいへの感想に、ゆいは鼓動が速くなっているのを感じた。
『う、うわあ。どうしよう、緊張してきちゃった。ただ名前を言っているだけなのに……』
ゆいは両手をすり合わせて気を紛らわせようとした。
「ゆい? 大丈夫?」
「あ、えと、は、ハイ!」
ゆいは完全に平常心を失っていた。
「あ、哀川ゆいですっ! か、会長に憧れて、立候補、ですっ! かっこいい会長と一緒に活動したいです……!」
サラはおでこに手をあてて「あちゃー」と言った。
ゆいは緊張して、思っていることが全て口に出てしまっていた。
「えと、堂々としていてかっこいい会長みたいに、私もなりたくて! ち、近くで会長を見て、できればにおいを嗅ぎたいというか、大好きで、あっ……」
周囲がゆいを見る目は完全に警戒していた。
「あ、その、つまり、私も会長みたいにかっこよく学校を良くしたいというか……」
ゆいは話の落としどころを失って、しどろもどろになり、俯いた。
「おはよう。選挙、頑張ってね」
「え」
ゆいが顔を上げると、そこには生徒会長の姿があった。