31 乱入者と高峰の攻防
「いくら厳しくても、校則はあるべきだ。校則の変更はすべきじゃない!」
そう宣言する彼に高峰は好意的な眼差しを向けていた。
ゆいには、高峰が笑っているようにも見えた。
「なぜ、そのように主張するのですか? あなた自身、いくつかの校則を違反しているように見受けられます。もしもその校則が無くなれば、あるいは変更されれば、あなたは誰に憚ることなく過ごせるのですよ」
高峰は予定を変更して、質疑応答を始めた。
「俺は別に……誰かの目を気にしてはない。自分がしたいようにしてるだけだ。それがたまたま、校則に違反してただけだ」
彼はマイクを下ろして、声を張った。
「ですが、本学の生徒である以上、本学の定める校則には従わなければなりません。それならば、不要な校則は廃して、従うべき範囲において校則を定めるべきではありませんか? 不要な校則とはいえ、校則は校則です。守られない校則が氾濫することは、校則に形骸化をもたらします」
高峰ははっきりと、けれどゆったりとしたトーンで主張した。
「……校則はたしかに大事だ。けど、校則は法律じゃない。絶対に守らないといけないものでもない。だったら、わざわざ校則を変えなくても、個人が自由に判断すればいい」
彼は額に汗をにじませていた。
「ですが、校則に従うかを個人の裁量に委ねてしまうと、真に守られるべき校則が蔑ろにされ、生徒の安全に関わる問題も——」
「——校則が支配的になりすぎるのは、良くないと思います!」
舞台裏から、二階が高峰と彼の間に飛び出した。
二階は金髪の彼を背に、高峰に目を向けている。
高峰は一瞬、口の端を上げた。
「どうしてですか?」
「たしかに、会長の主張はすべて正しい。ですが、従うべき校則のみが存在することは、校則の力を過度に強くしてしまう恐れがあります。それは、校則違反者への弾圧です!」
最後の一言に、二階は語気を強めた。
「弾圧、ですか?」
「従うべき校則のみが存在すると、それを守らない……いや、守れないひとが存在する場合に、そのひとを排除しようとする動きが生じてしまいます。なぜなら、多くの人は他者の個別具体的な事情には無知だからです。ですから、悪戯に校則の力を強めるようなことはせず、校則にはあそびを残すべきです!」
二階は薄く涙を滲ませていた。
ゆいには、二階のいう「守れないひと」がマサキであることに気づき、胸が締め付けられた。二階はマサキが何らかの事情で今日の様子になってしまったと察しているのだ。
「あなたの主張は、不要な校則の廃止と変更が校則の力を強めるとの前提にたっています。しかし、その前提にどれほどの蓋然性があるのでしょうか?」
高峰は二人の主張に一切動じることなく、達観していた。
高峰の優雅な出で立ちが、高峰の主張の正当性をも表しているようだった。
ゆいはどうすることもできず、高峰の隣で三者の討論を見守っていた。




